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Topic 口蹄疫原因に「中国産稲ワラ」説

2010年05月29日 | お知らせ
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環境学者の石弘之氏が、「口蹄疫の流行と循環型稲ワラ文化の崩壊」という興味深い記事を書いていると、同僚のNくんから教えてもらった。日経BP社の「ECO JAPAN」(「日経エコロジー」のサイト)で読める。概略を抜粋する。
※口蹄疫の流行と循環型稲ワラ文化の崩壊(「地球危機」発 人類の未来)
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20100525/103897/

《宮崎県の口蹄疫の流行は最悪の事態になり、最終的に処分されるウシやブタは20万頭を超え、補償額は1000億円に達するともみられる。病気を起こしたウイルスのDNA分析から、大陸から侵入してきたことは確かなようだ。日本に飛び火した原因は、さまざまな説が飛び交っている。そのなかで、状況証拠から、中国から輸入した稲ワラが口蹄疫ウイルスで汚染されていた可能性が指摘されている。この背景には、稲ワラまでも輸入に頼るようになった農業の構造にある》。

《かつて農家の軒に積んであった稲ワラに代わって、いまは農業機械が幅をきかせている。機械化、省力化のためにコンバインで刈り取られた稲は、脱穀と同時に細かく切り刻んでそのまま土に鋤き込まれたり、焼却されたりしてきた。農水省によると、国内で生産される稲ワラは約870万tあるが、このうち「飼料用」として利用されているのは3.9%にすぎない》。

《稲ワラはウシやブタの飼育には欠かせない。畜舎を清潔に維持するためには、敷きワラが必要だ。ウシでは飼料にする。ブランド肉は、肉の赤身と脂肪が分離して細かい脂肪が赤身に入り込んだ「霜降り肉」が定番だ。しかし、穀物が原料の配合飼料や青草だけだと、ビタミンA(βカロチン)が多く、それが肉質に影響を与えて「サシ」が入りにくい。稻ワラは、刈り取られ風雨にさらされて栄養分が抜けているので、サシが入りやすいことになる》。

《動物衛生研究所(旧農水省家畜衛生試験場)などによるDNAの分析結果では、宮崎の口蹄疫ウイルスと中国のウイルスは99.22%、韓国とは 98.59%の遺伝子が一致した。時期的にみて宮崎県の口蹄疫はこのどちらかの国から侵入した可能性が高い。有力視される感染ルートとしては、家畜や人の移動、畜産物や飼料の輸入、黄砂などだが、もっとも疑われているものの1つに、中国や韓国から輸入した稲ワラがある》。

《宮崎県の調査によると、今回最初に口蹄疫が発生した3例目までの農家は、いずれも中国産稲ワラを使っていた。ただ、流通経路は複数に分かれているという。中国産稲ワラの輸入条件には、ウイルスを死滅させる加熱処理が義務づけられているが、それが不十分だったことも考えられる。近年の中国から輸入した一連の食品汚染をみると、そのような疑問もぬぐえない。畜産が盛んな九州では稲作農家が少なく、もともと稲ワラをほかから買っていた。国産が手に入らなくなって外国産のワラを使うようになった》。

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《ただ、現段階では稲ワラが原因と決めつけるだけのデータはない。農水省の疫学調査チームは、最初の発生例とされた都農(つの)町の農家で飼育状況や敷きワラ、飼料などについて調査したが、その後は感染拡大防止の作業に農家が追われているために、十分に調査ができてない》。

《どこか日本がおかしくなっている、という思いに駆られる人も少なくないだろう。「瑞穂の国」とは、みずみずしい稲穂が実る国という意味である。その国が、長年にわたって生活資材として利用してきた副産物の稲ワラを、回収コストが引き合わないとして処分していまい、一方で身近に入手できなくなったといって輸入に頼っているのである》。

《「白砂青松」もかつては日本の海岸美の形容詞だった。だが、海面の埋め立てや道路や空港の敷設、いたるところにつくられたダムのために、土砂の流入が止まって白砂の砂浜が消えてしまった。いまや、青松に代わって醜悪な消波ブロックや防潮堤がのさばっている。そして、建設用の砂や砂利の多くは調達が容易な中国、台湾、ベトナム、カンボジアなどから輸入してきたものだ》。

《東京の新お台場公園の砂浜の白砂も輸入品である。予算が足りず、白砂を半分しか撒けなかったので白と黒の二色浜になった。この海洋国で砂まで輸入してきたバカバカしさを笑い話ですませてしまってよいのか。口蹄疫は目先の過度な効率優先への警鐘ではないのか》。

何とも空恐ろしい話である。「木の国」といわれるわが国で、国内の森林ではどんどん木が茂っているのに、切り出しコストが高いからといって海外から木を輸入し、「森林破壊だ」「地球温暖化を促進している」と諸外国から非難されているのと、同じ構図が透けて見える。

一方、一連の「中国産稲ワラ」報道には、中国ネットユーザーが反発している。「サーチナ」(旧「中国情報局」)というニュースサイトが紹介している。《感染拡大が続く宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題で、一部の日本メディアが『口蹄疫ウイルスは中国もしくは韓国が感染経路だった可能性がある』と報じたことに対し、中国ネットユーザーが激しく反論している》。
※口蹄疫は中国が感染経路だ!日本メディア報道に中国が猛反発!(5/27)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0527&f=national_0527_016.shtml

《一部日本メディアは25日、宮崎県で確認された口蹄疫ウイルスは、中国および韓国で発見されたO型タイプの口蹄疫ウイルスとほぼ一致すると報道したほか、3月に中国を旅行した宮崎県の農場オーナーが中国からウイルスを持ち帰り、消毒せずに農場に入ったことで日本での感染源となった可能性があると報じた》。

《日本で「感染源・経路は中国、韓国の可能性」と報じられると、日本の一部ネット上では中国に対するバッシングが始まった。感染源・経路が断定されていないにもかかわらず、中国が感染源と断定するような悪意のある書き込みが多く寄せられた。日本人ネットユーザーの書き込みが中国メディアによって報じられると、中国ネットユーザーは激しく反論、環球網の関連記事には500を超える反論のコメントが寄せられた》。

感染源・感染経路の特定は急いでいただきたいと思うが、稲ワラまで輸入に頼るという「豊葦原瑞穂(とよあしはらみずほ)の国」の構造は、やはり変だ。この国のあり方を、きちんと問い直すべき時ではないか。

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10 コメント

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わが国の畜産のありかた (松永洋介)
2010-05-29 08:25:53
恥ずかしながら、今回の騒動まで、わが国の畜産に関して、ほとんど知識がありませんでした(屠場のルポを読んだぐらい)。報道でいろいろ見聞きするにつけ、その構造じたいが先鋭化しており、不安定要素を抱えているのではないかという印象を持ちました。

先日、ツイッターにこう書きました。
5月25日、NHK視点・論点「口てい疫と近代畜産 中村靖彦」(公式サイト未アップ)を見てショックを受けた。特にこの表「1戸当たりの飼育数の変化」。
http://art.way-nifty.com/photos/uncategorized/2010/05/28/20100525_siten.jpg
しかも、遺伝的多様性に乏しいクローン同様の動物を集中飼育。感染が広がりやすいのも当然か。

さらに、稲わらだけでなく、飼料も輸入していますよね。
どうしたらいいのかなあ。
返信する
「安心・安全」のコスト負担 (tetsuda)
2010-05-30 06:23:02
松永さん、コメント有り難うございました。

> 「口てい疫と近代畜産 中村靖彦」(公式サイト未アップ)を見て
> ショックを受けた。特にこの表「1戸当たりの飼育数の変化」。

これは驚きです。こんな環境では、一網打尽のリスクが大きいです。

> 稲わらだけでなく、飼料も輸入していますよね。どうしたらいいのかなあ。

稲ワラや飼料も含めた「地産地消」が必要ということになりますが、そのコストを価格に反映できるか(「安心・安全」のためのコストとして消費者が受け入れるか)、という問題にぶつかります。うーん、これは難しい。
返信する
Unknown (畜産関係者)
2010-06-05 14:52:08
口蹄疫汚染国の中国からの飼料等は2000年を境に禁止されています。
また、稲ワラの生産は900万トンであり、赤肉肥育用の粗飼料としての需要は120万トンです。
時給率は90%になり、足りない部分は輸入ではなく代替物のグラスストローを使います。
講談社、畜産ハンドブック第4章、149項参照

養豚では稲ワラは使いません。現在の養豚では床は大半がコンクリートか、すのこです。
返信する
静観します (tetsuda)
2010-06-07 04:48:06
畜産関係者さん、コメント有り難うございました。

「ECO JAPAN」で報じられた内容と食い違うようですが、この辺りは今後解明されていくと思いますので、静観したいと思います。
返信する
日本が危ない (臼井芳雄)
2010-06-30 19:57:09
私は東京の町工場を経営しています。
町工場と言っても零細の中の零細です。
不運にも犯罪にあいました、その犯罪の犯人がとてつもなく大きく、犯罪のないようが小さいということです。ただこの犯罪が隠ぺいされると日本は本当に大丈夫だろうかと心配になります。その一部でも公開したいのでお願いいたします。
Googleで不況脱出中国で検索してください。1,540,000件で11番目に実名でホームページが見れます。犯人たちは事実上自供しています。http://www.google.co.jp/search?hl=ja&source=hp&q=%E4%B8%8D%E6%B3%81%E8%84%B1%E5%87%BA%E3%80%80%E4%B8%AD%E5%9B%BD&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&rlz=1W1SUNA_ja&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=
4年くらい前から実名で公開しています。何も言ってきません。事実だからです。
私は自動霧捕集装置(雲を成分が変わらないように採取し保存する装置)を開発し国連のWMOによばれ、1991年5月にジュネーブで展示したことから、事件にまきこまれました。
1991年の日本の展示者は横河さん、英弘精機さん、それと株式会社臼井工業研究所でした。中国から出展していた気象兵器も扱うState Meteorological Adoministratio
の幹部と名刺交換しました。これは大気汚染を観測できる。雲を採集して分析する。
中国は世界一の大気汚染国、international problemがある・・・・・・・、まるで喧嘩みたいになってしまった。   帰国して4カ月目に私に異変が起きたのです。
それからずっとおかしなことが起きました。
そして、犯罪証拠を押えました。かれらは私を調べました。なんだこのぼろ家、ぼろ企業、こんなやつにえらそうに言われる筋合いはない、そう考え私をばかにし、脇の甘いことをしたのです。日本の特許事務所協和特許事務所に犯罪を持ちかけたのです。
協和特許はあまりにもえらい中国要人の申し出にまいあがり、うごきはじめました。
ただ、日本の政治家、官僚はこの犯罪に特許庁のミス(なれ合いによる違法手続)があったので、隠ぺいすることにしてたのです。
政治家もマスコミも無視しています。
橋下徹弁護士にたのみました、すぐれた弁護士とおもいますが、誠意を持って取り組んでもらえませんでした。ただ、ほぼ内容を把握した準備書面をつくりました。
中国政府に魂をうった、政治家、官僚は危険です。明らかにしたいのです、日本人として。お力をおかしください。取材をおねがいします。きっと圧力がかかります。
だから公開しなければなりません。  証拠があるので中国国家の犯罪を証明できます。 

     臼井芳雄20106月30日
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静観します (tetsuda)
2010-07-02 06:08:46
臼井さん、コメント有り難うございました。貴HPも拝見しました。
http://antina2010.com/

> お力をおかしください。取材をおねがいします。きっと圧力がかかります。

私はこの分野には素人ですし、何しろ現役サラリーマンの身で、取材に動くことはできません。

当ブログは毎日約1300人の方が閲覧しておられるので、読者のなかに興味を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。私としては、静観したいと思います。
返信する
転載させて下さい。 (ikiru。)
2010-07-05 16:06:24
宮崎県民のikiruです。
自分なりに口蹄疫を勉強しています。
当ブログへの転載をお許し下さい。
返信する
よろしければ… (tetsuda)
2010-07-06 05:35:44
ikiru。さん、コメント有り難うございました。

> 当ブログへの転載をお許し下さい。

引用ばかりのブログ記事ですが、よろしければお使い下さい。
返信する
Unknown (畜産関係者)
2010-08-26 00:44:17
http://www.maff.go.jp/j/chikusan/souti/lin/l_siryo/koudo/h200901/pdf/data04.pdf

農水省の資料です。確かに稲ワラ国内生産量のうち飼料に用いる割合は全体の1割程度です。
しかし飼料用稲ワラの自給率は97%あり、輸入には頼っておりません。

汚染国からの輸入にしても、加熱処理を行い、安全性が認められたもののみ輸入しております。
返信する
新聞によりますと… (tetsuda)
2010-08-26 20:03:52
> 飼料用稲ワラの自給率は97%あり、輸入には頼っておりません。汚染国からの
> 輸入にしても、加熱処理を行い、安全性が認められたもののみ輸入しております。

専門家ではありませんので、この問題に深入りする能力はないのですが、知人が有料記事検索をかけて、こんな記事を紹介してくれました。

1つめは4/29付の日本経済新聞(西部朝刊・社会面)。《口蹄疫対策、宮崎県、33億円緊急予算、家畜処分や消毒など》の見出しで、《感染源と疑われる輸入稲ワラの使用をやめて1000トンの国産稲ワラを確保する事業に8400万円を充てる》とあります。

やはり輸入稲ワラは、感染源であると疑われているのです。畜産関係者さんがお書きのように「加熱処理を行い、安全性が認められたもののみ輸入しております」という情報が正しければ、8400万円もかけて国産稲ワラを確保する必要はないはずです。

同日の宮崎県の対策を報じた毎日新聞宮崎版の記事(4/29付)には、《口蹄疫:えびので疑い「まさか」 県内畜産業者に衝撃》という見出しで、《稲ワラ確保(8400万円)では、中国や韓国で口蹄疫が多発している現状を踏まえ、輸入から国産飼料用稲ワラへの転換を図り、県産稲ワラ約2500トンを増産する》とあります。

2500トンもの稲ワラを、これから増産するというのです。畜産関係者さんの「輸入には頼っておりません」というコメントとは矛盾します。
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