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tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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田中利典師の『霊山へ行こう』(7)仏の物差し、凡夫の物差し

2023年02月26日 | 田中利典師曰く
金峯山寺長臈(ちょうろう)田中利典師は20年近く前、『霊山へ行こう』という対談本を準備されながら、上梓されなかった。利典師はその原稿(自らの発言)に大幅に加筆され、Facebookに17回にわたり連載された(2023.1.21~2.10)。心に響く良いお話ばかりなので、当ブログでも紹介させていただくことにした。
※トップ写真は大和郡山市・椿寿庵のツバキ(2010.2.6 撮影)

第7回のタイトルは「途方にくれない御利益」。東京から初めて大峯奥駈の山修行に来られたサラリーマンがいて、行の途中で足の裏の皮がぺろりと剥がれた。その苦痛に耐えながらも、満行(達成)することができた。しかし東京に戻ると、会社が倒産していた…。この人は、その冷厳な現実をどうとらえたか。ぜひ全文(1/28付)をお読みください。

シリーズ「山人vs楽女/途方にくれない御利益」⑦
著作振り返りシリーズの第6弾は、実は校了まで行きながら、諸般の事情で上梓されなかった対談書籍の下書きの、私の発言部分を大幅に加筆してみました。もう20年近く前のことですけど、内容はなかなか面白い。みなさまのご感想をお待ちしております。

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「途方にくれない御利益」
東京から来た行者さんで、新客(初めて修行に来た人のこと)の時かな。奥駈行っていうのはものすごくハードなんです。一日に多い時二十四キロ、だいたい十三時間ぐらいで歩きます。その彼ですが、なれない山修行ということもあって、行の途中でべろりと足の裏をはがしてしまったんです。それでも泣きながら痛さに耐えて歩いてました。

で、どうにか10日間、歩き通して、終着地の熊野本宮大社で満行して、ものすごくうれしい気持ちを持ったまま、家に帰ったら、なんと勤めていた会社が倒産していたんです。

それでもね、満行できたことの方がうれしくて、無職になったことなどなんでもなかったそうです。ご利益ってそういうもので、修行してて会社が潰れてたら、普通の理屈で言うと、なんのご利益もなかったじゃないかということになる。

ところが行をして、ご利益をいただいたから会社が潰れても、なんにも途方に暮れなかったと彼は語るのですね。彼はサラリーマンで雇われの身だったのですが、途方にくれないというのはこれはもうご利益ですよね。

どうしても私たちは自分の物差し、いわゆる凡夫の物差しでものをみるのですけれど、ご利益というのは仏の物差しでみないと実のところはほんとうのことが見えないんです。自分の都合勝手で思っていたのでは何も見えてこない。

でも、仏様神様の思し召しと思えば、すべてのことがご利益になりますわね。大難を小難にって思うのも、なにか悪いことがあっても仏様がそうなさったと思うと、これぐらいですんだという話になります。

常に私たちというのは自分の都合、自分たちの理屈でものを考えている。いわゆる西洋的な近代合理主義ででものを考えている。これを取りのぞかない限り、何も見えてこない。途方にくれない御利益とはそういうものだと思います。

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山の修行ではいろんなことを教えて貰います。もう昔のように山を駆けたりできませんが、若い時に行っておいてよかったと思います。山で行じ、山に学ぶのが修験の醍醐味です。そして、誰でも、それなりになにかを体と心で学べます。
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