先月(2023.1.28)、「ガストロノミーツーリズム&食文化を語るシンポジウム」に、パネリストとして参加させていただいた。これはとてもスリリングな体験だった。長年「奈良の食」と関わってきたので、シンポジウムで言いたいことはたくさんある。しかし言葉だけでは伝わらないと思ったので、事務局に料理などの写真を送り、PowerPointに仕立ててもらった(信貴山玉蔵院の精進料理は、こちら)。
※トップ写真はシンポジウムの様子、毎日新聞奈良版(1/29付)から拝借
このイベントについては当ブログ(1/29付)でも簡単に紹介したが、もう少し詳しく奈良新聞「明風清音」欄(2/16付)に書いた。いわば「奈良流ガストロノミーツーリズムへの提言」である。では以下に全文を抜粋する。
「食」を求めて旅をする
1月28日(土)、県コンベンションセンター2階天平ホールで開催された「ガストロノミーツーリズム&食文化を語るシンポジウム」に、パネリストとして参加した。 これは「大立山まつり2023 奈良ちとせ祝(ほ)ぐ寿(ほ)ぐまつり」に関連した食イベントである。
他のパネリストは門上武司さん(フードコラムニスト、『あまから手帖』編集顧問)と青江覚峰さん(浅草・緑泉寺住職、料理僧)、MCは南かおりさんで、門上さんは基調講演の講師もお務めになった。以下、門上さんのお話に私見を交えて紹介することにしたい。
▼ガストロノミーツーリズム
門上さんによると「その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」で、いわば「食を求めて旅をすること」。主な内容は「食材、食習慣、調理、郷土料理、歴史など、さまざまな観点から食を楽しむこと」。私は「その土地の風土を表現したフード(FOOD)を味わうことですね」とまぜっかえした。
南さんからは、昨年12月に奈良県で開催された「第7回UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラム」の内容が紹介された。同フォーラムが日本で開催されるのは、これが初めてだったそうだ。
▼服と違って試着できない
1967年の『東京いい店うまい店』(文藝春秋刊)以来、レストランガイドが大はやりで、最近は紙媒体だけでなく、インターネット分野にも広がっている。門上さんは「服は試着できるが、デパ地下を除けば料理は試食できない。失敗するのが嫌だから、レストランガイドに人気が集まる」と言う、なるほど。
▼鉄田流、奈良食を楽しむ旅
ここで私の体験談。昨年11月27日(日)、静岡県浜松市とその周辺から来られた3人の女性をガイドした。当初11月前半にお越しになる予定を「奈良の紅葉ピークは11月末頃ですよ」と、日を変えていただいた。紅葉真っ盛りの奈良公園とならまちをすべて徒歩で案内した。
昼食は春日荷(にない)茶屋で「きのこ粥」(月替わりの「万葉粥」)、夜は旬彩ひよりで「奈良町なべ」(自家農園で収穫した野菜の蒸し物)や「自家製わらび餅」のついた大和の野菜会席。海のない奈良の素朴な「うまいもの」に、感激していただいた。なおわらび餅は、奈良が発祥地という説がある。
私は以前に何度か関東方面からお越しになったお客さまに、奈良市内のお店で「茶粥」を食べていただいたことがある。皆さん「おいしい!」を連発されていた。そもそも関東ではあまりほうじ茶を飲む習慣がないので、「新鮮です」とも言われた。
▼精進料理が1つのヒントに
ここで私から料理様式の変遷を解説。神さまに供える神饌(しんせん)料理から、平安貴族の大饗料理へと展開する。画期的だったのが、平安末期以降の精進料理の登場だ。中国(宋)の禅寺で考案された料理で、格段に高い調理技術を要し、それが留学僧により日本にもたらされた。この技術がのちの日本料理発展のベースになる。
奈良といえば仏教の都、今も大寺をはじめたくさんの寺院があり、県民の信仰もあつい。まさに精進料理は、奈良の風土を表現したFOODではないか。
「精進料理は地味では?」という人がいると思ったので、信貴山玉蔵院の目にも鮮やかな精進料理の写真をスクリーンに映し、納得していただいたいた。
「ガストロノミーツーリズム」と聞くと身構えるが、ブレークダウンすれば、いろんなものが見えてくる。奈良流ガストロノミーツーリズムは、「あるもの探し」から始めよう!(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
※トップ写真はシンポジウムの様子、毎日新聞奈良版(1/29付)から拝借
このイベントについては当ブログ(1/29付)でも簡単に紹介したが、もう少し詳しく奈良新聞「明風清音」欄(2/16付)に書いた。いわば「奈良流ガストロノミーツーリズムへの提言」である。では以下に全文を抜粋する。
「食」を求めて旅をする
1月28日(土)、県コンベンションセンター2階天平ホールで開催された「ガストロノミーツーリズム&食文化を語るシンポジウム」に、パネリストとして参加した。 これは「大立山まつり2023 奈良ちとせ祝(ほ)ぐ寿(ほ)ぐまつり」に関連した食イベントである。
他のパネリストは門上武司さん(フードコラムニスト、『あまから手帖』編集顧問)と青江覚峰さん(浅草・緑泉寺住職、料理僧)、MCは南かおりさんで、門上さんは基調講演の講師もお務めになった。以下、門上さんのお話に私見を交えて紹介することにしたい。
▼ガストロノミーツーリズム
門上さんによると「その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」で、いわば「食を求めて旅をすること」。主な内容は「食材、食習慣、調理、郷土料理、歴史など、さまざまな観点から食を楽しむこと」。私は「その土地の風土を表現したフード(FOOD)を味わうことですね」とまぜっかえした。
南さんからは、昨年12月に奈良県で開催された「第7回UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラム」の内容が紹介された。同フォーラムが日本で開催されるのは、これが初めてだったそうだ。
▼服と違って試着できない
1967年の『東京いい店うまい店』(文藝春秋刊)以来、レストランガイドが大はやりで、最近は紙媒体だけでなく、インターネット分野にも広がっている。門上さんは「服は試着できるが、デパ地下を除けば料理は試食できない。失敗するのが嫌だから、レストランガイドに人気が集まる」と言う、なるほど。
▼鉄田流、奈良食を楽しむ旅
ここで私の体験談。昨年11月27日(日)、静岡県浜松市とその周辺から来られた3人の女性をガイドした。当初11月前半にお越しになる予定を「奈良の紅葉ピークは11月末頃ですよ」と、日を変えていただいた。紅葉真っ盛りの奈良公園とならまちをすべて徒歩で案内した。
昼食は春日荷(にない)茶屋で「きのこ粥」(月替わりの「万葉粥」)、夜は旬彩ひよりで「奈良町なべ」(自家農園で収穫した野菜の蒸し物)や「自家製わらび餅」のついた大和の野菜会席。海のない奈良の素朴な「うまいもの」に、感激していただいた。なおわらび餅は、奈良が発祥地という説がある。
私は以前に何度か関東方面からお越しになったお客さまに、奈良市内のお店で「茶粥」を食べていただいたことがある。皆さん「おいしい!」を連発されていた。そもそも関東ではあまりほうじ茶を飲む習慣がないので、「新鮮です」とも言われた。
▼精進料理が1つのヒントに
ここで私から料理様式の変遷を解説。神さまに供える神饌(しんせん)料理から、平安貴族の大饗料理へと展開する。画期的だったのが、平安末期以降の精進料理の登場だ。中国(宋)の禅寺で考案された料理で、格段に高い調理技術を要し、それが留学僧により日本にもたらされた。この技術がのちの日本料理発展のベースになる。
奈良といえば仏教の都、今も大寺をはじめたくさんの寺院があり、県民の信仰もあつい。まさに精進料理は、奈良の風土を表現したFOODではないか。
「精進料理は地味では?」という人がいると思ったので、信貴山玉蔵院の目にも鮮やかな精進料理の写真をスクリーンに映し、納得していただいたいた。
「ガストロノミーツーリズム」と聞くと身構えるが、ブレークダウンすれば、いろんなものが見えてくる。奈良流ガストロノミーツーリズムは、「あるもの探し」から始めよう!(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
