てくてく日々是雑感

こんにちは。てくてくねっとの たま です。
日々のあれこれをつづります。

うたかた

2008年08月01日 | 近辺
空き地に家が建ち始めた。それがわが家のベランダの正面なのだ。
朝からバチバチドンドンとうるさいのは建築の間だけと思えば我慢できるが、新しい二階建ての家は、わが家のベランダからの景観をまったく遮ってしまった。南アルプスをはるかに見渡せた広い空がなくなってしまった。
あるうちは当たり前と思っていた景色も、なくなってみると惜しく感じる。冬の朝のあけぼのの頃のオレンジに染まる空も建物の向こう側を見はるかすしかない。
完成してみないとわからないことだが、もしベランダと向き合う形で隣家の窓などあったりしたら、家をのぞくような姿になってしまい、それも間がわるい。
借り物の住まいだから、それでも仕方ないと思えるものの、この家の持ち主がアルプスを望む設計をベランダに施したのだとしたら、さぞ残念なことだろう。
昔からこの地に根を持ち、ひとつところでじっと暮らしている在家の人たちは、自分の家周りの移り変わりをずっと眺めてきたことだろう。田んぼがふさがれ、道が広がり、家が建ち、灯りがつき、人が出入りする様子に、うれしかったり悲しかったりしながら、ひっそりとただ居るのだろう。
子どもの頃に読んだ絵本『ちいさいおうち』。丘の上に静かに建っていたちいさいおうちが、やがて、家やお店、ビルに囲まれるようになる様子に境遇を重ねてしまう。絵本のラストのような幸せな展開はしょせん夢とすれば、幸せとは何だろう、ともぽつんと思ってしまう。