「日本の水産業は復活できる」

2012-07-06 | 貿易業務
日本の水産業は復活できる! ―水産資源争奪戦をどう闘うか
片野 歩
日本経済新聞出版社


現役のマルハニチロの社員の方が書かれた本です。
生産者の視点、では書かれていません。ですので、こと漁業経営者、漁業従事者にとっては、ちょっと面白くない話しかもしれませんが、この視点は視点として、私は非常に参考になりました。

著者はヨーロッパとの取引を長年行われているようで、特に資源回復+漁業の安定経営が進んでいる欧州漁業と衰退著しい日本漁業を比較して考察されています。
私自身、同じ水産業界で仕事をしておりますが、いわゆるヨーロッパの青物・青魚には縁がなく、実体について詳しく知ったのは初めてです。(とはいえ、甘エビ船に乗ったりしてましたので、漁船の環境の良さは知ってますが・・)

漁業資源の管理方法、根本的な漁獲の規制・制限の方策を、「各船割り当て」 にすること で、大きく変わる、というのが骨子です。

簡単に言えば、

全体で1000tとったら、漁は終了
という方式と、
各船100t 10隻で1000t割り当てます
という方式 です。

単純に考えても、早い者勝ち は、ロクなことがありません。

学生時代の焼き肉を思い出します。。ww 寮で焼き肉をすると、そのうち焼けてない肉をバクバク喰い出すやつがでてきます。早いもの勝ちですから。
漁業も同様で、早い者勝ちにすれば、未成熟魚からなにから皆、我先に、と、獲ってしまう傾向は否めません。
漁期になれば一斉に漁が始まりますので、大漁になれば、大概他船も大漁、すなわち、相場は簡単に下がります。

私は以前、アラスカのトロール船の商材担当をしていたことがあります。当時はいわゆる早い者勝ちでした。大漁の影響か不良品も多く、また、搬入時期もまとまっていました。最近は各船割り当てになったせいで、安定的・計画的に搬入がおこなわれています。買うほうも予定が立てやすく、品質も以前に比較すると、ずいぶん良くなった印象があります。

漁業の秘匿性というのでしょうか。昔は漁場、どこで魚が獲れているか、というのはトップシークレットでした。日本の場合、未だに報告と水揚げの魚の大きさが違うこと、があります。欧州では、漁業資源はみんなのもの、漁場の秘匿性などないようです。
これだけ通信が発達すると、秘匿性を保つことは困難ではないでしょうか。
(日本の漁船で、局長・通信長がステータスが高かったのは、他船からの情報の入手や、他船との漁場の調整などを行っていたからでしょうね)

日本だけではなく、周辺各国もこぞって水産資源を漁っています。日本だけが管理をしたところで、すでに遅すぎるのでは・・という気もします。
ですが、このまま放っておけば、間違いなく資源は減少していきます。

水産物をどうやって高く売るか? どうやって消費者に認知させるか、という点でいえば、加工・流通部門が一生懸命考えてやってはいますが、実際には旬でないときに魚を大量に搬入させ、その魚自体の価値をさげてしまったり、規格で流通されるものを、未だに箱単位(入れ目で価格調整)で取引させたりしている点など、根っこの部分も含めて考えていかなければいけないのではないか、と、思います。

生産者の苦しい立場、が、よく取りざたされますが、生産者が変わらなければならない部分も多分にあります。もちろん生活があり、自分の利益を犠牲にしてまで将来のために我慢できるか、と言われれば、私も自信はありません。
ただ、筆者も書いているとおり、みんなの意見を聞いていては、物事が悪い方にしか進まないことも多いわけで、こと、限りある資源をどうするか、という点では、どこかで大きな、身を切るような決断をしなければならないのかもしれません。

著者が学者や役人ではなく、現役の水産会社の方だけに、関係者の方々には参考になるかと思います。






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5 コメント

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Unknown (ton)
2012-07-07 17:18:34
失礼します。
書物の話は別にして/

まぁ、昔からよくある話なんですが、
業界(水産)の復活が目的なのか、
資源(水産)の復活が目的なのか会話が明確じゃ無いというか、本題がね?

はっきりしてるのは、日本の消費人口の拡大は?ってことですよね。

いまさらですが大型船の話に至る前に、
各地域の漁業調整規則をテーブルに並べて(把握)からでなければ漁業法は語れない。
つか、民法ってなに?って感じ。

んで、魚が大きければ良いという話もありますが、日本国中の地域文化を無視してる気がしてなりませんですね。
個人的に…


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Unknown (デバンニング)
2012-07-07 23:20:54
お疲れ様です 梅雨のように鬱陶しい売上が続きます(>_<) 値決めが決まると横槍が必ず入りどこからしらから品物が現れます(*^_^*) 見積り出しづらい… ドメスの冷蔵庫&洋上在庫ならばある程度の腹は読めましたが 海外にまで素晴らしい(*^_^*)冷蔵庫&加工施設が現れた現在 把握出来ません 大商社は魚を含めたグロス取引と五年否十年単位で商材の単価を考え生産者から消費者の口にはいるまでを抑える現実、金利プラスアルファで『売る』のでは無く『流す』にはついて行けません(>_<)既存の流通は大渋滞で新しい流通は外交官ナンバーです(*^_^*) 本の内容は確かに一理ありますが口と耳を抑えられた一匹狼が目までも抑えるのか…と 感じました
仕方ない…鼻だけは守ります (*^_^*)
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Unknown (デバンニング)
2012-07-07 23:23:13
お疲れ様です 梅雨のように鬱陶しい売上が続きます 値決めが決まると横槍が必ず入りどこからしらから品物が現れます 見積り出しづらい… ドメスの冷蔵庫&洋上在庫ならばある程度の腹は読めましたが 海外にまで素晴らしい冷蔵庫&加工施設が現れた現在 把握出来ません 大商社は魚を含めたグロス取引と五年否十年単位で商材の単価を考え生産者から消費者の口にはいるまでを抑える現実、金利プラスアルファで『売る』のでは無く『流す』にはついて行けません既存の流通は大渋滞で新しい流通は外交官ナンバーです 本の内容は確かに一理ありますが口と耳を抑えられた一匹狼が目までも抑えるのか…と 感じました
仕方ない…鼻だけは守ります
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ton さんへ (tare@)
2012-07-09 07:41:35
毎度様です。
漁業の問題に限らず、大抵の問題はその場しのぎ、場当たり的に処理され、後になってどうしようもない状態に。。。と、感じます。
漁業者と水産物流通業者、消費者含め、皆が利益を共有できるどころか、お互いから搾取するような構造になっているように思えてなりません。じゃ、どうすれば、と言われても、やはり皆が納得できる策というのは、ここまでくると見つからないような気がします。
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デバンニングさんへ (tare@)
2012-07-09 07:50:15
毎度様です。
大手さんが今まで入ってこなかった領域にまで踏み込んでこられているのは、肌で感じます。
大資本で利益度外視で流されると、我々はひとたまりもありません。。。
となると、新たな道に踏み込まざるを得なくなります。資本力、組織力ではどうしようもないので、土俵を変えるしか無いのかな、と、思ってます。。。辛いデスねー。。
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