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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

BRAVE HEARTS 海猿

2013年04月10日 | 映画(は行)
救助に必要なのは、スキルと冷静な判断力、そして・・・



            * * * * * * * * *

「海猿」最新作は、結局公開時には見ず、このたびレンタルで。
まあ、確かに面白かったです。


海上保安庁で海難救助に当たる名コンビ仙崎(伊藤英明)と吉岡(佐藤隆太)は
「特殊救難隊」に志願し所属となりました。

この度の事件は、ジャンボジェット機のエンジンが炎上、
飛行困難となり東京湾へ着水というもの。
機体が海面に浮かんでいられるのは20分間。
その間に乗客乗員346人を救出しなければなりません。
そしてその機には吉岡の恋人がCAとして乗っているのです・・・。
海面にブイを浮かべて作った誘導灯を目印に、
ジャンボジェットが着水体勢に入る・・・。



自らの危険を顧みずひたすら人を助けたいと願う仙崎の強い思いに胸が熱くなり、
わかってはいるのですが、ドキドキハラハラとのせられてしまいます。
特にラスト、ついにお定まりの犠牲者が・・・?
と思ったのですが、意外でした。
まずは自ら助かろうと思う気持ちが大切なのか。
そして、仲間を信じることも。
ジーンときますね。
出来すぎだけれど、許しちゃいます。



また、今作はフロントと現場の意思疎通がちゃんととれていて
(現場暴走気味ではありますが)、
事件は会議室で起こっているのではない、
ちゃんと現場で起こっていて、
しかもフロントはフロントとしての機能を果たしているのがほっとします。

人命救助の場は、こうあるべきですね。
・・・時任三郎さんみたいな上司がいれば大安心。



BRAVE HEARTS 海猿 スタンダード・エディション [DVD]
伊藤英明,加藤あい,佐藤隆太,仲里依紗,三浦翔平
ポニーキャニオン


BRAVE HEARTS 海猿 スタンダード・エディション [Blu-ray]
伊藤英明,加藤あい,佐藤隆太,仲里依紗,三浦翔平
ポニーキャニオン


「BRAVE HEARTS 海猿」
2012年 /日本/116分
監督:羽住英一郎
出演:伊藤英明、加藤あい、佐藤隆太、仲里依紗、伊原剛志、時任三郎


男の友情度★★★★★
パニック度★★★★☆
満足度★★★★☆

「女中譚」 中島京子

2013年04月09日 | 本(その他)
知的でチャーミングな女中・・・???

女中譚 (朝日文庫)
中島京子
朝日新聞出版


              * * * * * * * *

90歳を超えるばあさんは「アキバ」のメイド喫茶に通い、
かつて女中をしていた若かりし頃の思い出にふける。
いつの世にもいるダメ男、わがままお嬢様、変人文士先生につかえる、奥深い女中人生…。
直木賞受賞作『小さいおうち』の姉妹小説。


              * * * * * * * *

「小さいおうち」と姉妹小説というのに釣られて読んでみましたが、
主人公が"女中"という職業のほかは特につながりもなく、
またテイストも異なるので、ちょっとやられた~という感じです。
まあ、だからといってつまらないわけではありません。
とは言うものの・・・


アキバのメイド喫茶に現れた90すぎの老女。
彼女が誰にともなく語る、自身の昔話です。
時は昭和初期。
日本は軍国主義へとひた走り、次第にきな臭くなってくる時代。
そんな時代背景を置きつつ、
すみは女中をしたりダンサーをしてみたり、女一人生きていくために必死だったのです。
そんな中で彼女が見聞きした3つの物語。

「ヒモの手紙」ではダメ男を見下しながらも、自身も次第に彼にとりこまれていってしまう女。
ちょっぴり女の底意地の悪さや残酷さをのぞかせながら、
男女の愛憎の複雑さを語っていきます。

「すみの話」は、令嬢と女中のレズビアンのような関係を描きます。

「文士のはなし」では、洋館に住む文士がすみをモデルに小説を書くというお話。

面白くなくはないですが、特別なものもないような・・・と、
読み終えて、解説を読んでぎょっとしました。


この3作はかつて書かれた「女中小説」を下敷きにしているというのです。
林芙美子「女中の手紙」、
吉屋信子「たまの話」、
永井荷風「女中のはなし」。
そういえばもともと中島京子さんは古い作品のリサイクル(?)を得意とする方だったのですね。
・・・とはいえこの3作、私が読んでいるはずもなし。
たぶん、多くの読者の方も同様と思います。
そういう「本歌」を知らない者にとって、この作品の意味は・・・?
なんだか釈然としないのです。
なにも知らずに読んだとして、正直な感想は前述のごとし。
無知がバレバレの感想でしたけどね。


それにしても本の帯にある
「知的でチャーミングな3つの女中の物語」
というのは全然違うだろ!と思います。
この言葉で変な先入観ができてしまったために
余計楽しめなかった気もします。

「女中譚」中島京子 朝日文庫
満足度★★☆☆☆


音楽劇 「探偵~哀しきチェイサー2 雨だれの挽歌」

2013年04月07日 | 舞台
昭和の神戸でコンゲーム

            * * * * * * * * *

沢田研二さん出演の音楽劇。
昨年「探偵~悲しきチェイサー」を見たので、張り切ってまた観覧。
しかし、時代設定がややずれていただけで、
登場人物たちとその関係はそっくり同じ。
思わず「え?全く同じなのに見に来ちゃったの?」と焦ってしまったのですが、
事件は別物なのでした。
いえ、全く同じものでも別に構わないのですけどね・・・。


前作は、1998年神戸が舞台でしたが、
今作は昭和34年の神戸。
人々が最も「昭和」の時代を懐かしむあたりですね。
事件は戦後のドサクサ時の日本の暗部に絡む犯罪が描かれています。
神戸元町の「フェアウェル」のマスター兼私立探偵、花山新太郎(沢田研二)。
常連たちで賑わう店に、ある美しい女性(南野陽子)が探偵の依頼にやってきます。
まもなく結婚予定の相手の女性関係を調べて欲しい、と。
花山の妻と子供は、前作では交通事故で亡くなったのでしたが、
今作では空襲で亡くなったことになっています。
やはり時代が違いますね。
少年探偵が登場するあたりも、“昭和”感たっぷり。
それから今作は、まるで「スティング」のような逆転ドラマがあるのですが、
まあ、なんとなく読めてしまいますね。
そして真犯人についても、前作を見ていれば想像がついてしまう・・・。


…と言ったところで、面白くはあるのですが、
前作を見た者にとっては、感動も半減・・・といったところでした。
前作を見た時はひたすら面白かったのですけれど・・・。
残念。
でも周りに座っていた方々は、たぶん初めてなのでしょう、
大満足の様子でした。
声は、素晴らしいあのジュリーのままですし。


しかし、皆様一様に「ジュリーは太り過ぎ」とおっしゃる。
そうなんですよね・・・、
ジュリーのイメージもさることながら、
そもそも「探偵」というのはスマートであるべきです。
メタボ検診に引っかかりそうな体型・・・、
健康のためにも、プロとして減量に努力していただきたい・・・。
オバサマたちは、自分を省みずに勝手なことを言うのです・・・。
いつまでも憧れのジュリーでいて欲しいから・・・。

(2013年3月31日 札幌市 教育文化会館にて)

→「探偵~哀しきチェイサー」

音楽劇「探偵~哀しきチェイサー2 雨だれの挽歌」
脚本・演出:マキノノゾミ
音楽:Coba
振付:南流石
出演:沢田研二・南野陽子・瀬川亮・若杉宏二
満足度★★★☆☆

命をつなぐバイオリン

2013年04月06日 | 映画(あ行)
大人たちがバカだからさ・・・



            * * * * * * * * *

第二次世界大戦下、ナチス・ドイツに侵攻されたウクライナが舞台です。
ユダヤ人の少年アブラーシャはバイオリン、
少女ラリッサはピアノに特に優れていて、
神童と呼ばれていました。
二人は幼なじみで、いつも共に練習をし、演奏しているのです。
そんな二人を見たドイツ人少女ハンナは二人に憧れ、
共にバイオリンの練習をするようになります。
そして3人は音楽で絆を深めていくのです。



ハンナのお父さんはドイツからウクライナのドイツビール工場の経営のために、
こちらに来ていたのです。
そんな時、ナチス・ドイツが、ロシアに侵攻を始めます。
つまりはロシアとドイツが敵対関係になってしまった。
とすれば、敵地のまっただ中にいるハンナ一家に危険が迫ります。
そんな時に、子どもたちが親しくしている縁で、
ハンナ一家はアブラーシャの一家にかくまってもらうのです。
さてしかし、それもつかの間。
ついにこの街にドイツ軍がやって来ました。
ハンナの一家はこれで安泰。
また、一般のロシア人は、ドイツ軍に反抗さえしなければ、
普通に生活していられます。
しかし、ユダヤ人は・・・。
ユダヤ人はただでさえも差別を受けていたのですが、
ナチス・ドイツからはただならぬ迫害を受けますね。
今度は、ハンナ一家がアブラーシャとラリッサの家族を匿うことになるのです。
しかも同じ部屋で。
なんという運命の皮肉・・・。
けれど、ついに彼らはドイツ軍に発見され、家族は収容所へ送られてしまいます。
ただ、アブラーシャとラリッサだけは、その音楽の才能のために残されるのですが、
二人は大変過酷な運命と戦わなければならなくなってしまうのです。

 
「ハンナと私達が敵同士だなんて、どうしてこんなことになってしまったのかしら・・・」
とつぶやくラリッサに、アブラーシャはいいます。
「大人たちがバカだからさ」
まさに馬鹿げたことなのですが、
人種間の差別や争い、これは今も消えてはいませんね・・・。
それにしても、わざとラリッサにプレッシャーをかけまくるナチス将校のおぞましさ・・・。

大人のすることじゃない。
衝撃のラストに、涙が止まりません。



普通バイオリンを弾く子といえば、
指に傷を付けないように、大切にされて何もしない、
華奢でひ弱・・・、そんなイメージがあります。
けれどもアブラーシャはそうではないんですよね。
ナイフも使うし、労働もする。
並以上に生活感溢れたくましい。
そのうえでのあの器用な指さばき、というのがすごくいいなあ・・・と思いました。



美しい音楽とは裏腹に、
戦争が狂わせる人々の運命、
人種差別のバカバカしさ、
生死を分ける一瞬の緊張感、
多くを訴えかける作品です。


「命をつなぐバイオリン」
2011年/ドイツ/100分
監督:マルクス・O・ローゼンミュラー
出演:エリン・コレフ、イーモゲン・ブレル、マティルダ・アダミック、カイ・ビージンガー、カテリーナ・フレミング

音楽性★★★★☆
歴史発掘度★★★☆☆
衝撃度★★★★★

「マドンナ・ヴェルデ」 海堂尊

2013年04月05日 | 本(その他)
子供を宿して、母はなお成長する

マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)
海堂 尊
新潮社


* * * * * * * *

美貌の産婦人科医・曾根崎理恵、人呼んで冷徹な魔女。
彼女は母に問う。
ママ、私の子どもを産んでくれない―?
日本では許されぬ代理出産に悩む、母・山咲みどり。
これは誰の子どもか。
私が産むのは、子か、孫か。
やがて明らかになる魔女の嘘は、母娘の関係を変化させ…。
『ジーン・ワルツ』で語られなかった、もう一つの物語。
新世紀のメディカル・エンターテインメント第2弾。


* * * * * * * *

「ジーン・ワルツ」は大変興味深く読みましたが、本作はその続編。
前作では医師曽根崎理恵の視点で描かれていたストーリーが、
今回ではその裏側、山咲みどりの視点で語られていきます。
55歳で娘の子供を出産。
随分勇敢なお母さんだ・・・と思っていたのですが、
その裏にはかなり理恵の勝手な理論があって、
母は振り回されてやむなく、という感が漂います。
けれども、前作でも書いたかな? 
"母は強し"なんですね。
お腹に子供を宿すようになってから、
みどりは次第に気持ちが若返り、強くなっていくような気がします。
受精卵を受け入れる前に、みどりは女性ホルモンの投与を受けて、
すでに止まっていた生理がまた始まるという描写があります。

「昔の生理は沈鬱な冬の日本海だが、
今回の生理は、明るい日差しのエーゲ海のようだ。
月のものが訪れるたびに。こんな幸福感を味わっている女性がいたのかと思うと、
かすかな羨望を覚えた。」

う~ん、私も生理をそんな風に考えたこともなかったけれど、
それを喪失した今となっては、この羨望は私自身ものでもあるなあ・・・と、
妙に納得してしまいました。
これを書いたのが男性だなんて、ちょっと信じがたいくらいです。
みどりは俳句の会に入っていたり、
ほんのちょっとした食事の用意のシーンなど、
とても情緒が漂うシーンが多い。
しっとりと深い味わいがあります。
そして、お腹の父親である理恵の夫と交わす手紙もいいですよね。
海堂尊さんは、医療ミステリ作家としての側面が大きいのですが、
私はかねてよりこの方の醸す叙情性に驚かされていまして、
だから飽きずにもっと読みたくなるのです。
私はぜひまたこの子たちの成長した何年か後の物語を読みたい・・・!!

→ジーン・ワルツ

「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊 新潮文庫
満足度★★★★☆

ポスター犬16

2013年04月04日 | 工房『たんぽぽ』
コンナ・カレーニナ、ドンナ・カレーニナ?



例によって、読んだことはないけれど
名前だけは知っているという
海外の名作。
現在公開中。ぜひ見たいと思っております・・・。





同じワンちゃんを2つ作りました。
ちょっぴり小首を傾げている。



双子のワンちゃんは、それぞれ
別の方にプレゼントしましたー

蟹工船

2013年04月03日 | 西島秀俊
意外とライトなプロレタリア



            * * * * * * * * *

小林多喜二によるプロレタリア文学の金字塔「蟹工船」の映画化です。
えーと、私は西島秀俊さんはてっきり労働者の先導役かと思ったのだけれど・・・、
これが意外にも、蟹工船の冷酷無比な監督。
ほほう、興味をそそりますねえー。
本作はとにかく重苦しそうなので、公開時には見ていなくて、
このたび、まあ、西島さんに釣られてみたわけだけど、意外とライト感覚だったね。
そうだね。結構ユーモラスで、現代的。


舞台はひたすら1隻の蟹工船内部。
劣悪な環境に、重労働、低賃金。工員たちは絶望感に囚われている。
そんな仲間に語りかけるのは、新庄(松田龍平)。
「こんな地獄のような今の状況には見切りをつけて、みんなで自決しよう。
そして幸せな来世に生まれ変わろう・・・。」
のせられたた皆とともに首吊りを図るけれど失敗。
「もう少しで死ぬところだった」なんて言ってたね・・・。

また、ある者は、小舟で漁に出ているうちに母船とはぐれ、
遭難しかけたところをロシア船に救助される。
その様子なども・・・。
確かに軽いです。
だけど、今「蟹工船」を描こうとすれば、これでいいんじゃないかな、という気がする。
やたら重苦しいだけでは若い人はそっぽを向きますよ。
いや若い人だけじゃなく、私もあんまり見たくない・・・。
ロシア船で感化された新庄は、蟹工船に戻り、
ここで今度こそシリアスな演説を始めるね。
うん、松田龍平さん、カッコ良かった。
今作は特別にイデオロギーを強調しているわけじゃないよね。
そうそう、「自分の有りたい未来を考えろ、そしてそれに向かって行動しろ。」
そういうことなんだよね。
これこそが、今表現しうる「蟹工船」なんだと思う。
小林多喜二氏は怒るかも知れないけど・・・。
ホンモノを知りたい方は1953年版の旧作を見ればよいのです。



さて、その西島さん演じる監督の浅川。
薄汚れてるけれどいつも白いロングのコートみたいのを羽織っていて、ちょっとナチス風の趣もあるね。
しかも頬に傷、足を少し引きずっている。
う~む、こいつは一体何者?って感じ。
どういう過去を設定しているのか、興味はそそられますが・・・、
もちろん作中そんな説明は有りませぬ。
たぶん、育ちはいいのだけれど、不幸な生い立ちとか・・・。
いやいや、実はやっぱり極貧で、
でも頭の良さだけを武器にしてここまでのし上がったとか・・・。
いや、ここまでと言ってもたかが漁船の現場監督だけどね。
なんだか、工員たちは鎖に繋がれていないけど、黒人奴隷と殆ど変わらないという気がしたけど。
であれば浅川は、冷酷で貪欲な農場主か。
ははあ・・・ここまで現代風にアレンジするなら、タランティーノ監督でもありってことだね。
それだと、船内は阿鼻叫喚の死体だらけになるね・・・。
うわー、それ、怖いけど見てみたい!
ぜひそのときも、浅川は西島秀俊さんでお願いします!!



それから、カニだよね、カニ。
グルメ番組じゃないから、ことさらカニを美味しそうには描いてないけどさ・・・
こんな大量のカニ、思い切り頬張れたらなあ・・・。
当時は冷凍技術もないので、水揚げしたカニをすぐに茹でて、船内で缶詰にしてたというわけだね。
まあ、それにしても巷では高価だったのかもしれない。
たぶんとんでもなく安い賃金だったろうし・・・、
ごく一部の金持ちが、「国家」を盾に、いいようにうまい汁をすすっていた・・・という。
これこそ、現在でも十分に通じる話なのでした。


「蟹工船」
2009年/日本
監督:SABU
原作:小林多喜二
出演:松田龍平、西島秀俊、高良健吾、新井浩文、柄本時生
ユーモア度★★★★☆
西島秀俊魅力度★★★★☆
満足度★★★☆☆

ダイ・ハード ラスト・デイ

2013年04月02日 | 映画(た行)
ノーテンキなアメリカ、バンザイ!!



            * * * * * * * * *

あら、まだやってたの?という時期でしたが、
ちょうどたまたま時間が空いたので、見てみました。
本当はすぐに見たかったのですが、見逃していたのですよね。
ダイ・ハード6年ぶりにして5作目。
“世界一ついていない男”ニューヨーク市警のジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)、
今度の舞台はなんとモスクワ!



冒頭、ロシア語で語られる何やらハード・アクションぽい硬質な雰囲気に、
思わず上映室を間違えた?と思ってしまったのですが、
間違えてはいませんでした。
ロシア政財界の大物が過去「チェルノブイリ原発事故」に絡む陰謀を繰り広げていた・・・。
今時チェルノブイリと聞けば
また日本人としてはドギマギしてしまいますが、
な~ぜか、ジョン・マクレーンがはるばるロシアまでやってきて、
こんな事件に巻き込まれてしまう・・・。
というのも、彼の息子ジャック・マクレーン(ジェイ・コートニー)が、
ロシアで警察沙汰のトラブルを起こし、裁判を受けることになってしまったのです。
何年も音信不通だった息子がロシアで逮捕された! 
どうせ麻薬がらみか何かのバカな犯罪に関わったのだろうと、
息子を全然信用していないジョンは、
とりあえず休暇をとってモスクワに向かいます。

 
いやいや、しかし、その読みは全くのハズレ!
息子は親を見て育ち、そして親を超えていくものなのですよ・・・。
たとえ物心ついてからは、反目し合うばかりで
ろくに話をしたことがなかったとしても・・・ね。

 

例によって冒頭からものすごいカーチェイスシーンが繰り広げられまして、
ただただボー然・ア然。
普通これで死んでますから・・・。
なんとも遠い父と息子の心の距離が、
少しずつ接近していく様が、とてもいい感じに描かれています。
息子は強がって父親を「父さん」とは呼ばずに「ジョン」と呼ぶ…。
それにしてもこの父有りて、この息子有り。
結局は似たもの同士。
もしかして「ダイ・ハード」は今後息子に引き継がれて続いていくのでしょうか? 
男っぽくがっしりタイプのジェイ・コートニーも悪くないですよね!



今作は対比してロシアの父娘関係も語られますが、
これにもちょっと罠があったりして、一筋縄では行きません。


実はこの前に「クラウド アトラス」、「オズ・はじまりの戦い」をみて、
全然おもしろいと思えず、
もしかして私はミニシアター系でなければ感動できなくなってしまったのかと、
不安を感じておりましたが、
今作はやっぱり面白く、ホッとしました。
感動のツボというのは個人差があるものなんですね。
今作も、こんなに異国の街をめちゃくちゃにしたこの二人に
何の咎めもないのだろうかとか、
いろいろ突っ込むべきところはありつつも
エンタテイメントとしてはやっぱり面白いんですよね。
ノーテンキなアメリカ、バンザイ!っていう気になってしまう。
これもひとつの方向性ではあります。


「ダイ・ハード ラスト・デイ」
2013年/アメリカ/98分
監督:ジョン・ムーア
出演:ブルース・ウィリス、ジェイ・コートニー、セバスチャン・コッホ、ラシャ・ブコピッチ、コール・ハウザー
破壊度★★★★★
父子の意地っ張り度★★★★★
満足度★★★★☆

「解錠師」 スティーヴ・ハミルトン

2013年04月01日 | 本(ミステリ)
「今」を生きる若者の、瑞々しい青春小説。 


解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
越前敏弥
早川書房


* * * * * * * *

八歳の時にある出来事から言葉を失ってしまったマイク。
だが彼には才能があった。
絵を描くこと、そしてどんな錠も開くことが出来る才能だ。
孤独な彼は錠前を友に成長する。
やがて高校生となったある日、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり、
芸術的腕前を持つ解錠師に……
非情な犯罪の世界に生きる少年の光と影を描き、
MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞など世界のミステリ賞を獲得した話題作


* * * * * * * *

「解錠師」とは、ちょっぴりいかめしく取っ付きにくい題名でしたが、
読んでみれば、これは現代に生きる若者の、
大変みずみずしい青春小説なのでした。
原題 "THE LOCK ARTIST" 
この方が雰囲気には合いそうです。


言葉を失ったマイクルは、今は刑務所にいます。
このストーリーは、彼自身がこのようになってしまった経緯を文章にしている、という体裁になっています。
だから語る言葉は彼自身のもの。
金庫破りの犯罪者と言うイメージとは遠い、
内省的な美しい文章です。
物語は、彼がドアや金庫の鍵に興味を持ち、鍵なしにそれを開ける様になった経緯と
刑務所に入るまでの経緯が交互に語られ、
そして、そもそも彼が言葉を失ってしまった事件については
最期のほうで明かされています。
彼はなぜ鍵を開けるのか。
そもそもの原因は本当はここに隠されているのです。
それはとても切ない。


そして重要なのは、一人の少女、アメリアのこと。
アメリアとマイクルは言葉の代わりに、
お互いにコミックのイラストで気持ちを交わします。
二人の間にあった出来事を振り返り、
自分の気持を込めてコミックに描く。
私はこのシーンにとても惹かれてしまいました。
いかにも現代的で瑞々しい感じがします。
そしてお互いの芸術表現の才能をも表している。
口で喋らないことが、より以上に感情を伝え合うということもあるのですね。
マイクルの過去の事件についても、
マイクルは壁いっぱいに描いた絵で、アメリアに伝えるのです。
なんて劇的。
私はこの作品、是非映画化されるといいなあ・・・と思いました。
アニメーションと実写を織り交ぜて。

「解錠師」スティーヴ・ハミルトン Kindle版にて
満足度★★★★★