結局は“正しい”ものが強い

* * * * * * * * *
どなたもご存知のアメリカ合衆国第16代大統領、
エイブラハム・リンカーンの物語ですが、伝記ではありません。
1865年。
リンカーンは大統領に再選されたばかり、そして南北戦争4年目。
この時、リンカーン大統領が最も重要と考えていた、
奴隷解放のための合衆国憲法修正第13条が下院議院を通過するかどうか、
焦点はそれ一本です。

リンカーンは、この法案が成立することに自らの政治生命をかけていたわけですが、
どうしても南軍との講和以前にそれを成立させる必要があったのです。
しかし、講和が遅れればまたそれだけ多くの若者の命が失われてします。
しかし人類の未来の為に、
なんとしても修正13条を成立させなければならない。
彼の中で葛藤が繰り返されるのですが・・・。

冒頭、戦闘シーンがあったくらいで、
後は延々と政治工作や議会のシーン。
実に地味なのですが、
ピンとはった緊張感で最後まで引っ張っていくのはさすがスピルバーグ監督。
はじめ20票足りないとされていたものが
様々な裏工作を行い、少しずつ変化していきます。
ここに描かれている限りでは、リンカーンはそうしたことが好きではなさそうなのですが、
なりふり構わず、とにかく法を成立させたいということなのです。
ですがリンカーンのその理念を貫こうとするブレない姿勢、人柄、
そうしたものに周りの人も協力したくなるのですよね。
まさに、リーダーシップの見本といえましょう。

最後の評決のシーンは思わず一喜一憂。
そもそも、結論はわかっていることなのに・・・、
嘆息してしまいます。
「アメイジング・グレース」という作品も
同様に奴隷解放のための法(英国)をテーマとしたものでしたが、
その時にも感じました。
強固に反対する者も多い。
けれども結局は“正しい”ものが強いのではないかと。
そういうことで、なんだかまだ「人類」を信じられそうな気がする・・・。

それから、議員にも頑固な人、優柔不断の人、信念の人・・・、
色々いるのがまあ、当たり前ではありますが、面白いですよね。
はじめから「人種による区別なく、人はみな平等」と訴えていた
スティーブンス(トミー・リー・ジョーンズ)の渋さもステキだし、
彼がなぜそこまでこだわるのかという謎解きが最期にあるのもいい。
しかし、当時そこまで言うのはあまりにも過激、
「法の下では平等」と言い換えなければならなかった、
という無念さもにじみます。

「黒人が選挙権を持つことになるんだぞ、そしたら女性もか?」
そんな反対派のヤジに思わず苦笑させられます。
が、これが今、“苦笑”で済むのは、
まさにこの法のおかげなんですよね。
人類にとって最も偉大な法かも知れません。
選挙権どころか、黒人が米国大統領就任という事実に、
また改めて感慨を覚えてしまいます。
でも、ここまで来るのに150年かかったということなんですね・・・。

「リンカーン」
2012年/アメリカ/150分
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:ダニエル・デイ=ルイス、トミー・リー・ジョーンズ、サリー・フィールド、ジョセフ・ゴードン=レビット、デビッド・ストラザーン
歴史再認識度★★★★★
緊張感★★★★★
満足度★★★★☆

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どなたもご存知のアメリカ合衆国第16代大統領、
エイブラハム・リンカーンの物語ですが、伝記ではありません。
1865年。
リンカーンは大統領に再選されたばかり、そして南北戦争4年目。
この時、リンカーン大統領が最も重要と考えていた、
奴隷解放のための合衆国憲法修正第13条が下院議院を通過するかどうか、
焦点はそれ一本です。

リンカーンは、この法案が成立することに自らの政治生命をかけていたわけですが、
どうしても南軍との講和以前にそれを成立させる必要があったのです。
しかし、講和が遅れればまたそれだけ多くの若者の命が失われてします。
しかし人類の未来の為に、
なんとしても修正13条を成立させなければならない。
彼の中で葛藤が繰り返されるのですが・・・。

冒頭、戦闘シーンがあったくらいで、
後は延々と政治工作や議会のシーン。
実に地味なのですが、
ピンとはった緊張感で最後まで引っ張っていくのはさすがスピルバーグ監督。
はじめ20票足りないとされていたものが
様々な裏工作を行い、少しずつ変化していきます。
ここに描かれている限りでは、リンカーンはそうしたことが好きではなさそうなのですが、
なりふり構わず、とにかく法を成立させたいということなのです。
ですがリンカーンのその理念を貫こうとするブレない姿勢、人柄、
そうしたものに周りの人も協力したくなるのですよね。
まさに、リーダーシップの見本といえましょう。

最後の評決のシーンは思わず一喜一憂。
そもそも、結論はわかっていることなのに・・・、
嘆息してしまいます。
「アメイジング・グレース」という作品も
同様に奴隷解放のための法(英国)をテーマとしたものでしたが、
その時にも感じました。
強固に反対する者も多い。
けれども結局は“正しい”ものが強いのではないかと。
そういうことで、なんだかまだ「人類」を信じられそうな気がする・・・。

それから、議員にも頑固な人、優柔不断の人、信念の人・・・、
色々いるのがまあ、当たり前ではありますが、面白いですよね。
はじめから「人種による区別なく、人はみな平等」と訴えていた
スティーブンス(トミー・リー・ジョーンズ)の渋さもステキだし、
彼がなぜそこまでこだわるのかという謎解きが最期にあるのもいい。
しかし、当時そこまで言うのはあまりにも過激、
「法の下では平等」と言い換えなければならなかった、
という無念さもにじみます。

「黒人が選挙権を持つことになるんだぞ、そしたら女性もか?」
そんな反対派のヤジに思わず苦笑させられます。
が、これが今、“苦笑”で済むのは、
まさにこの法のおかげなんですよね。
人類にとって最も偉大な法かも知れません。
選挙権どころか、黒人が米国大統領就任という事実に、
また改めて感慨を覚えてしまいます。
でも、ここまで来るのに150年かかったということなんですね・・・。

「リンカーン」
2012年/アメリカ/150分
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:ダニエル・デイ=ルイス、トミー・リー・ジョーンズ、サリー・フィールド、ジョセフ・ゴードン=レビット、デビッド・ストラザーン
歴史再認識度★★★★★
緊張感★★★★★
満足度★★★★☆