映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

黒く濁る村

2011年01月12日 | 映画(か行)
本当の勝者は誰か



            * * * * * * * *

韓国で人気を博したWEBコミックの映画化です。
韓国映画はあまり見ない私なのですが、予告編を見て興味がわきました。
何だか横溝正史の世界、八墓村のような・・・おどろおどろしい雰囲気が感じられたものですから。
そういうのが嫌いではないのです。


20年来音信不通であった父の訃報がヘグクに届きます。
彼はその父が暮らしていた山奥の村を訪ねる。
ところがこの村の人々は彼に対して警戒心をあらわにするのです。
この村の絶対権力を握っているのは村長のチョン・ヨンドク。
村長が彼の滞在を受け入れたため、村の人々の態度も一変する。

ヘグクは父の死因に不審を覚え、村の事情を探り始めます。
そんな彼の動きを阻止しようとする村長の手下たち。
しかし、関係者が一人、また一人と命を落としていく。
最後に現れる真相とは・・・
父の素顔、村長の正体、そして30年前のおぞましい事件。


この村長、チョン・ヨンドクは強烈にしたたかでアクが強い。
暴力や金がすべてを支配すると信じている。
つまりはコイツがすべての元凶なのですが、
このインパクトには嫌悪する一方、目をはなすことが出来ない。
これがこの作品の力になっているところです。

一方、ヘグクの父は宗教者であり、人々の心を導く高潔な人物であったはずなのですが・・・
政治と宗教が互いに利用し合い地下で通じている。
そうなったときは本当に怖いですよね。

そしてヘグクは・・・真摯に事件の謎を追う。
ヘグク役のパク・ヘイルのおかげかも知れませんが、
若干さめつつも爽やかな感じ(?)好感を持ちました。
そして、彼を助ける検事とのユーモアと皮肉にあふれる言葉のやりとりが、
この作品の重苦しさを救っています。


また、村の家々を結ぶ秘密の地下通路をたどるときのドキドキ感、
やはり、八墓村の鍾乳洞のシーンを思い出したりもして、
やっぱりこういう舞台はこの手のストーリーには不可欠なんですね。

ということで、この作品、おどろおどろしい雰囲気ばかりでなく
腐敗した構造をえぐるというような側面もあり、
なかなか見応えのあるものになっています。


ところが、ラストのほんのワンシーンで、
また私たちは足元が崩れる思いを味わわせられるのです。
本当の勝者は誰なのか。
すべてを俯瞰し操っていたのはある人の怨嗟だ。
実は大変に怖い物語であった・・・と最後に気づく、全く侮れない作品です。

2010年/韓国/161分
監督:カン・ウソク
原作:ユン・テホ
出演:パク・ヘイル、チョン・ジェヨン、ユソン


ジャイアンツ

2011年01月10日 | ジェームズ・ディーン
ジェームズ・ディーンは永遠に

ジャイアンツ [DVD]
ジェームス・ディーン,エリザベス・テーラー,デニス・ホッパー
ワーナー・ホーム・ビデオ


              * * * * * * * *

ジェームズ・ディーン最後の出演作です。
全部で201分、DVDなら2枚組という長大な作品ですが、
これがまた実にドラマチックな人生ドラマですね。


20世紀初頭のアメリカ西部テキサスが舞台です。
テキサス州ベネディクトの広大な牧場に、
東部から嫁いできた若妻レズリー(エリザベス・テイラー)。
彼女は聡明で活発。見るからに活き活きとした魅力に富んでいます。
そんな彼女が見たテキサスは、いかにも考えが古く思われる。
女性は政治の話しに口を出せないこととか、メキシコ人を人並みに扱わない偏見・差別の根強さとか・・・だね。
そんなことでしばしば夫ジョーダン(ロック・ハドソン)と意見が合わず、口論になる。
そんなとき、彼女は言うのです。
「私がこういう女だって、始めから解っていたでしょう? 
私は始め猫をかぶっていた?」
そうなんですよー。
お互い一目惚れしたようなのに、かみ合わない会話・・・。
それでも結婚しちゃった。
あえて、夫に合わせようとしないレズリー、私は好きですね。
たぶん、そういうと思った・・・。


あれ? それで、ジェームズ・ディーンはどこに出てくるの。
はい、それが、彼はこの大きな牧場のしがない下働き、ジェット。
いかにも無教養で品のない田舎者って感じです。
もともとジョーダンはこの男が気に入らなくて、追い出したいと思っていた。
でも、彼の姉がジェットを気に入っていて、
彼女の遺言により、この牧場の一部が彼に譲られた。
そしてジェットは若く溌剌としたレズリーに密かに思いを寄せていくんですね。
私は夫との関係が破綻したレズリーが、
ジェットに惹かれていく物語かと思ったんですよね。
しか~し、夫婦の絆は強かったんですよ! 
不倫物語ではなかったのです!!
この夫婦には一男二女ができ、時がどんどん過ぎ去っていく。
一方ジェットは譲り受けた土地で石油を掘り当て、
とんでもない富と名声を手に入れる。
しかし、彼は孤独のまま、ちっとも幸福そうではない。
ラストでは、レズリーがこの地に嫁いでから25年が立っています。
夫婦の危機を乗り越えながら、25年を共に過ごしすっかり馴染んでいる夫婦。
今はあまりにも簡単に離婚があるけれども、
こうして苦難を乗り越えて育む愛もあるという・・・、
今時逆に新鮮な気がしてしまうドラマなんですね。
天涯孤独なジェットをここまで支えてきたのはある一つの思い・・・。
これがまた胸を突かれますねえ。
いってみればテキサス版の“風と共に去りぬ”だなあ。
この土地に根付いた人々の人生ドラマ。
レズリーが育った東部は緑があふれる美しい街なんです。
しかし、このテキサスはだだっ広いばかりで、見渡す限りの荒野。
緑はほとんどない。
私ならノイローゼになりそうだ・・・。
でも、彼女は強いんです。
意地悪な小姑にも屈しない。
でもその小姑があっけなく死んでしまったので、ちょっと悪い気がしてしまいました・・・。


ジェームズ・ディーンは、前2作では家族とうまくいかない孤独なティーンエイジャーと言う役どころで、
今度は違うと思ったのですが・・・。
結局同じなのかも知れません。
虚勢を張り自分の弱いところをつつみ隠して、
孤独に打ち震える純粋なコドモのような青年・・・。
やっぱり、ジェームズ・ディーンのイメージそのままだね・・・。


この作品、20代の俳優さんたちが、終盤50歳くらいを演じますよね。
うん。今でこそメイクの技術とかCGでどのようにでも出来そうな気がするけど、
これは1956年の作品でしょ。
それにしてはとても自然に年とってました。
昔のメイク技術もバカにしたものではないよ。
24歳で亡くなってしまったジェームズ・ディーンの将来の姿をかいま見ることが出来た・・・ということで、何だか不思議な感じです。
この撮影終了後に、自動車事故で亡くなったということなんですね。
1955年9月30日。
それは日本で「エデンの東」が公開される直前のことだったそうです。

でも、フィルムの中では永遠に生き続ける。
俳優さんはそういう意味でシアワセだと思います。
いや、もう“フィルム”もなさそうなんだけど・・・
はあ、じゃ、なんていえばいいんでしょ。
ディスク?・・・味気ない世の中だなあ・・・。

1956年/アメリカ/201分
監督:ジョージ・スティーブンス
原作:エドナ・ファーバー
出演:エリザベス・テイラー、ロック・ハドソン、ジェームズ・ディーン、デニス・ホッパー

理由なき反抗

2011年01月09日 | ジェームズ・ディーン
お父さん、強く正しい家族のリーダーを務めていますか?

理由なき反抗 特別版 [DVD]
ジェームス・ディーン,ナタリー・ウッド,ジム・バッカス
ワーナー・ホーム・ビデオ


            * * * * * * * *

「エデンの東」に続くジェームズ・ディーン主演作の第2作ですね。
17歳ジムは家庭内の不和から、つい反抗的態度に出てしまいます。
冒頭は、酔いつぶれた彼が警察署に連れてこられるシーンから。

シンバルをたたく猿のオモチャが落ちていて、
彼はそれに新聞紙を掛けて寝かせようとしたりしている。
本当は心の優しい子ということが解るよね。
ジムはとにかく自分の父親がふがいないと思っているんだね。
母親は独善的で、高圧的。
夫の言うことにはいちいち文句をつけるし、夫はそれにいいなり。
アメリカでは強く正しい家族のリーダー、という
確固とした理想の父親像というのがあるよね。
そう、今でこそ離婚された情けない姿の父親像はあふれているけれど・・・
まあ、それも本来の理想の父親像があるからこそ、その裏返しなんだろうなあ。
アメリカはともかく日本でも今はこういう父親像、どこにでもあるって感じ・・・。
だね・・・。
ともかく、ジムはそんな父親が嫌で嫌でしょうがない。
彼は友人たちから“チキン”と呼ばれることに異常に反応してしまうんだ。
チキンってのは、ひよっこ・・・まあ、“弱虫”みたいな感じかな。
それというのも、彼自身父親のことをそのように思っているからなんだね。
自分は決してそんな風にはならない、自分は違うぞ、と思っている。
それでつい、“チキン”と呼ばれることが嫌さに、
不良少年グループの挑発に乗って“チキン・ラン”をすることになってしまうわけだ。
その“不良”って言葉、何だか懐かしい気がするね。
そうだねえ。今はあんまり言わないかな。
ツッパリ?・・・というのも古いか。ヤンキー?
はは。アメリカではまさかヤンキーとはいわないよね。
まあ、いつの時代もティーンエイジャーは親に反抗するもんなんだよ・・・。
素直ないい子ばかりだったら気持ち悪い。
ここでジムに同調し仲間になるのがジュディとプレイトウだけど、
彼女らも結局家庭でうまくいっていないわけだ。
愛情不足・・・。
17歳くらいって、端から見るとオトナに近いけれど、
実はまだ子供で、親はしっかりと支えてあげないとダメ、ということかなあ。
その加減が実に難しいところだと思うんだけどね。
しっかりと相手の人格を認めつつ、愛と信頼を持って接するべきだ・・・。
言うのは簡単なんだけどねえ。
その年頃ってつまり、一人の人間としてのアイデンティティ確立の時なんだよね。
親としては何とかそれを助ける方向に働きかければいいんだろうな。
ジムってさ、いい奴だよね。
気持ちがまっすぐで、友達には思いやりがあって。
なのにどうして親を相手にするとああなってしまうのか・・・と、思わずにいられないけれど。
親もまた不完全な人間である、ということを受け入れられないのが、
やはりまだ子供だということなんだよ・・・。
なるほど・・・。


チキン・ランは、二人で崖に向かって車を走らせて、
先に車から降りた方が“負け”なんだね。
出来るだけぎりぎりまで乗っていた方が“勇気がある”ということだ。
しかし、この時相手のバズは失敗し車もろとも崖から転落してしまう。
ここのシーンは有名だよね。
私も、理由なき反抗というと、このシーンだけ、しっかり覚えていたよ。
でも、このドラマのさらに重要なシーンは、
終盤ジムたち3人が無人の屋敷に忍び込む当たりからだね。
忍び込んだその邸宅のからのプールではしゃぎ回る彼らは、やはりまだ無邪気な子供だ・・・。
そしてプレイトウというのが、本当に気の弱い孤独な子なんだ。
その彼が拳銃を持ち出す。
こういう子が拳銃を持つと怖い。簡単に暴走してしまうよね。
そうして、悲劇が起こる・・・。

若く繊細というジムの役柄、ジェームズ・ディーンにはまり役。
ステキです・・・。

1955年/アメリカ/111分
監督・原作:ニコライ・レイ
出演:ジェームズ・ディーン、ナタリー・ウッド、サル・ミネオ、デニス・ホッパー

エデンの東

2011年01月08日 | ジェームズ・ディーン
兄弟間の相剋、父への複雑な感情



            * * * * * * * *

さあ、ジェームズ・ディーンシリーズをはじめまーす!
といっても3作だけだから、一気に連続でいっちゃいますねー。
この作品ね、実はTSUTAYA DISCASで1位で予約登録しても、
なかなか順番が回ってこなかったんだよ。
そうしたら、たまたま「午前10時の映画祭」でやってた!!
だから、ちゃんとスクリーンで見ることが出来たんだ。
ラッキーだったな。
うん、結構席も満席に近くて盛況だったね。
まあ、中高年、特にオバサンがほとんどだったけど・・・。
まあ、人のことはいえないので・・・。

さてこの「エデンの東」がジェームズ・ディーンの初主演作。
この作品で彼は一挙にスターダムに押し上げられるんだね。
この役柄とジェームズ・ディーンのイメージが実にぴったりだったからね。
態度は粗暴だけど実はナイーブで孤独な美青年・・・
思い切り母性本能をくすぐるんだよねえ・・。だからだよ。


オホン。
まずは「エデンの東」というこの題名の意味は・・・?
これは、ジョン・スタインベックの小説が原作なんだけれど、
旧約聖書のカインとアベルの物語を下敷きにしているんだね。
カインとアベルはアダムとイブがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟。
ある時二人はヤハウェの神に捧げ物をするのだけれど、
神はカインの供物を無視して、アベルの供物ばっかり褒めたんだね。
アベルに嫉妬したカインは、アベルを殺してしまう。
その罪により、カインはエデンの東の土地へ追放されてしまう。
そこから取った題名ということだね。
兄弟というのは人生で始めに出会うライバルなんだよね・・・。
人類初の殺人事件かあ・・・。
カインとアベルの名前はしばしば兄弟間の相剋を表す代名詞みたいに使われるよ。
そうなんだね。この作品で父親の名がアダム。
二人の息子がケイレブ(通称キャル)とアロン。
ということで、かなり原点を意識しているんだな。


舞台設定は1917年カリフォルニア北部。
父アダムは信仰深く、常に正しいことを行おうとする人物として描かれる。
兄アロンはそれにそっくりなんだね。
だから父親には受けがいい。すべて彼の期待通り。
だけど、弟キャルは粗暴でひねくれていて、だめな奴
・・・と、父親は思っている。
兄、弟って言うけど、この作品では双子ということになってるね。
うん、似てないから二卵性だね、きっと。
たぶん、年のせいでこうなってしまったのではなくて、
生まれながらの相違ということを強調したかったんだと思う。
それから、二人の母親は死んだと聞かされていたのだけれど、
実は、彼らが生まれてまもなく家を出て、今は近くの街でいかがわしい酒場を経営している。
この映画の冒頭は、そういう噂を聞いたキャルが母を訪ねるシーンから始まっているわけだ。
その母というのは、型にはまらないというか奔放な人なわけだね。
うん、つまり、あまりにも堅苦しくて“正しい”夫に耐えられず、家を出たんだね。
そのとき夫が引き留めようとしたので銃で撃った・・・というから半端じゃない。
キャルはその母の気性を強く受け継いだといえるわけだ。
そうだからこそ、父に受け入れられないのだということも解ってくる。
でも、彼には自分自身の存在をまず受け入れてくれる存在が必要だったんだよ。
自己がきちんと形成されるためには、やはりそれは大切なことなんだよね・・・。


父は、レタスを冷凍保存して売り出すことを考えた。
冷凍・・・というよりは冷蔵だね。
今なら当たり前の話だけど、当時それは斬新なアイデアだ。
でも、列車が雪崩のために不通になってしまい、氷がとけて貨物列車何両分ものレタスが腐ってしまう・・・。
相当な財産を失ってしまうんだ。
そこでキャルはある人の言葉を思い出す。
今の戦争(第一次世界大戦)に、まもなくアメリカも参戦するだろうけれど、
そうなると穀物の需要が伸びて儲かる、と。
彼は父親を喜ばせたいあまりに、母からお金を借りて大豆相場に手を出す。
そしてそれは見事に成功するわけだ。
父の誕生日、彼はその儲けたお金をプレゼントとして用意する。
そして兄のアロンもまた・・・。
ここのところがまさしく、カインとアベルが神に供物を捧げる場面と重なるわけだね。
まあ、だから結果も想像がつくよね・・・。


でもこの作品では、兄の恋人アブラという女性が唯一キャルを理解していて、
次第に二人が惹かれていく、というところがまたステキだよね。
そうだね、あの観覧車の二人のシーン、いいよねえ・・・。
女としてはさ、やっぱりあのまじめ一方の堅苦しいアニキより、
ちょっぴり危険な香りがするオトートの方がいいよなあ・・・。
気持ちが揺れ動くのも無理はない・・・。


この作品以来、できのいい兄とだめな弟、兄の恋人に密かにあこがれる弟・・・
そういう構図を持つ物語がたくさん誕生したと思う。
これも世界共通、古今の人の普遍的な物語でもあるんだろうなあ。
私が連想するのは吉田秋生さんの「カリフォルニア物語」だけど・・・。
ああ、これもカリフォルニアなのか。
やっぱりエデンの東を意識した作品なんだね。


まさに、名作。すごくいい物語なんだけどね、私が気に入らないのは音楽。
あの有名なメインテーマの旋律はいいよね。
けどこの映画全体のバックミュージック、これがどうにもオーバーというか重すぎるというのかな、なんか違和感を覚えちゃう。
いや、当時としてはこれが普通だったとは思うけどね。
うーん、音楽だけでもろに古色蒼然としてしまうんだなあ・・・。
他のシーンは充分いけるとおもうけど。
音楽だけ入れ直したら、もっと良くなると思うけどなあ・・・。
そんなことしたら、エリア・カザンの冒涜だって言われちゃうって・・・。

エデンの東 [DVD]
ジェームス・ディーン,ジュリー・ハリス,レイモンド・マッセイ
ワーナー・ホーム・ビデオ


1955年/アメリカ/115分
監督:エリア・カザン
原作:ジョン・スタインベック
出演:ジェームズ・ディーン、ジュリー・ハリス、レイモンド・マッセイ、ジョー・バン・フリート

キック・アス

2011年01月07日 | 映画(か行)
あなたはヒーローになれますか?



           * * * * * * * *

同名コミックの映画化。
というよりは、はじめから映画化をにらんで描かれたもので、
コミック執筆と映画の制作は同時進行であったといいます。
そういう意味で、まことに今日的成り立ちのこの作品。


主人公デイブはなんの取り柄もないさえない高校生。
唯一の特技は女の子から姿が見えない(!)ことだという・・・。
そんな彼は考える。
コミックのヒーローには誰もがあこがれるのに、
どうして誰もヒーローになろうとしないのだろう・・・?
よし、それなら自分がなって見よう・・・と通販で買ったスーツを身につけ、
スタイルだけはスーパーヒーロー(でもかなりダサイ!)で、街に出る。
さっそくチンピラに絡まれている人を見つけて間に入り・・・
ボコボコにのされたあげく、車に轢かれて重傷を負ってしまう。
そりゃそうですよ・・・。
バットマンだって、あそこまでになるためには相当の修行を積んだ・・・。
でも彼はめげないんですね。
普通はそこで止めると思うのですが、まだ続けようとするところ、
それはこの子のある種の才能かも・・・なんて思います。
そもそも、彼の発想の根源はヒーローのカッコ良さというよりは純粋な正義感。
見てみないふりをする人がほとんどという中で、この心意気は良いぞ!
そしてまた彼は、この怪我の手術のおかげで若干討たれ強くなったのです。



次にまたチンピラに絡まれてボコボコ殴られつつも意外にがんばっている姿が、
You Tubeにアップロードされ、たちまち大人気。
まさに、今日だからこそあるストーリーなんですね。
実際にこんなことがあれば、
アメリカだけでなく全世界であっという間に話題になりますよね。
そんな彼が、また調子に乗って犯罪組織のたまり場に踏み込んでしまった。
絶体絶命!というところに現れたのが、
これもまた怪しげなコスチュームに身を包んだ二人連れ。
ビッグ・ダディとヒット・ガール。
しかし彼らは本物でした!!
・・・というか実戦に備えて日夜訓練を積み、
あらゆる武器を使いこなす達人でもあった。
まさにプロのなりきりヒーロー。
彼らは趣味でヒーローをしているのではなく、
実はこの街を支配するマフィアに復讐を遂げるため、密かに力を蓄えていたのです。
更には、このマフィアのボスの息子がデイブと同じ学校の子。
彼もまたレッド・ミストと名乗るヒーローに扮し、
キック・アスに協力するフリをしながら攪乱をもくろむ。
・・・ということで三つ巴のヒーローたちが、
どんな活躍と混乱を繰り広げるのか、お楽しみあれ!


コミカルな展開にわくわくしながら、あっという間に時間が過ぎます。
レッド・ミストは本来敵役なのですが、
どこか憎めなくて、次第にキック・アスと友情めいたものが芽生えていく・・・
そんなふうで、単純に割り切れないところも、結構気に入りました。

しかし、一つ難点は、これはそうとうきわどい。
ほとんどキル・ビルに近いバイオレンス描写。
そもそも11歳の少女にこんな殺人機械のような役をやらせていいのか!! 
良識ある人は眉をひそめるでしょう。
私の良識?
そんなモノがあればこんな映画は始めから見ません・・・(^^;)
まあ、見て痛快に感じてしまうのだから仕方ない・・・。
だからR15指定。
よい子の皆さんは決して見ないように。


バットマンを相当意識したビック・ダディ役は、ニコラス・ケイジです。
これが何故かやたらとかっこよかった。
どうも最近パッとしないニコラス・ケイジとしては一番のはまり役だったかも・・・。


2010年/アメリカ・イギリス/117分
監督:マシュー・ボーン
原作:マーク・ミラー、ジョン・ロミータ・Jr、
出演:アーロン・ジョンソン、クリストファー・ミンツ=プラッセ、ニコラス・ケイジ、クロエ・モレッツ、エリザベス・マクガバン

「愛おしい骨」 キャロル・オコンネル

2011年01月05日 | 本(ミステリ)
20年の沈黙の後、また時を刻み始めた事件の謎

愛おしい骨 (創元推理文庫)
務台 夏子
東京創元社


          * * * * * * * *

しばらく戦国時代末期~江戸時代初期当たりを旅している内に、
翻訳物の本がたまってしまいました。
私が読む洋物は、非常に限られているのですが、
キャロル・オコンネル、
サラ・パレッキー、
パトリシア・コーンウェル、
サラ・ウォーターズ・・・
何故かどっと新刊が出てしまっていました。

まずは、20011年版「このミステリーがすごい!」海外編第1位に輝いた、
「愛おしい骨」と行きましょう。
この著者は、あの名著「クリスマスに少女は還る」を書いた方です。
すごく好きだったんですよ・・・、あの驚愕のラスト。


さて、この物語は・・・
17歳の兄オーレンと15歳弟ジョシュア。
二人は森へ行き、戻ってきたのは兄一人。
弟は行方不明のまま・・・。
オーレンはその後家を出るのですが、20年の後、帰郷します。
20年止まったままだった事件が、また時を刻み始める。
誰かが、玄関先に死んだ弟の骨を一つずつ置いてゆく。
その意図は。その犯人は・・・?
登場人物が実に個性的で、わくわくします。


まずはこのオーレン。
イケメンです!
合衆国陸軍犯罪捜査部下級准将という、すごい肩書きの持ち主だったのですが
ある日突然退職してしまった。
その理由ははっきりとは記されていませんが、
あまりにも見るべきでないものを見てしまった・・・そのように推察されます。
ジョシュアとは非常に仲の良い兄弟だったのですが、
実は彼自身も容疑者の一人。
しかし、そのとき彼のアリバイを申し立てた女性が二人。
それぞれが二人で一緒にいたというのでは、かえって疑いを招きますね・・・。

オーレンの父は元判事の、ホッブズ氏。
彼はお手伝いのハンナと共に、家を守っていました。
このハンナは彼ら兄弟の母親が亡くなった時にやって来て、
以来このホッブズ家を支える重要な人物。
温かくて世話好きで、機転が利く魅力ある人物。
しかし彼女の出自を誰も知らない。
IDがないので運転免許も持てない・・・というらしいのです。
一体この人はナニモノ?というのも興味の一つ。

イブリン・ストラウブというのは、ホテルの女主人ですが、
彼女は昔セクシーな夫人で、当時17歳オーレンのいい人・・・。
しかし、20年後の彼女は見事に肥え太り、見る影がない・・・。

私が最も好きなのは、イザベル・ウィンストン。
オーレンとは幼なじみなのですが、実は顔見知りというだけで会話を交わしたこともない。
しかし、何故か20年ぶりに会ったオーレンを突然蹴り倒すのですよ!
過去に何かあったらしいのですが・・・、
この辺の謎が実は私には一番面白かった・・・。
愛憎たっぷりのこの二人の成り行き、ここだけでも充分楽しめます。
オーレンは蹴り倒されても戸惑うばかりで怒ったりしない。
ヨロヨロと立ち上がってまた歩き始める
・・・なんてところが実に興味深いではありませんか!

さらには このイザベルの母、セアラ・ウィンストン。
非常に美しく上品な夫人。
しかし、何故かアルコール中毒。
この症状はジョシュアの失踪後からのようなのですが。
彼女をやさしく見守るかのように見える夫、アディソン・ウィンストンは弁護士。

そして、元警官で、昔の事故が原因で足が不自由なウィリアム・スワン。

オーレンとは幼なじみだけれど仲が悪かった、現在副保安官のデイブ・ハーディ。

その母、街の図書館の怪女メイヴィス・ハーディ・・・等々・・・。

これらの人々が絡まり合って織りなす謎を、オーレンが紐解いていきます。
ホッブズ家には
「決まり切った質問をしてはいけない」
という不文律があるようなのです。
だからオーレンは父親にさえも、ストレートな疑問を口にすることが出来ない。
非常に婉曲な言い方で、腹の底を探り合ったりします。
もどかしいのですが、この会話のやりとりが何ともユーモラスであり、
またアメリカ的ですね。
親子であっても個人的なことには立ち入らない、
というような根源的なあり方が見え隠れします。
こういう調子の会話は、日本のモノではないですが、私は好きですね。

さあ、結局弟を殺したのは誰?

満足度★★★★

ドクトル・ジバゴ

2011年01月04日 | 映画(た行)
荒れた広大な大地で・・・・

ドクトル・ジバゴ アニバーサリーエディション [DVD]
オマー・シャリフ,ジュリー・クリスティ,ジェラルディン・チャップリン,リタ・トゥシンハム,アレック・ギネス
ワーナー・ホーム・ビデオ


            * * * * * * * *

ロシア革命前後の動乱期を舞台とするドラマチックな恋愛物語です。
主人公ジバゴは、純粋な魂を持つ詩人であると同時に医師。
第一次世界大戦に医師として従軍し、看護師ラーラと出会う。
実はこの美しいラーラを彼は以前ちょっとした事件で見かけたことがある。
血なまぐさい戦場で、次第に二人は心惹かれていくのですが、
実は双方結婚していて子供もいる。
「あなたに奥さんの前でウソをつかせたくない・・・」
ラーラはそう言って、この時は何事もなく別れの時を迎えます。

モスクワに帰ったジバゴを待ち受けていたのは、温かい家族。
しかし、革命の波がおしよせ、彼らの屋敷は民衆が占拠している。
彼ら家族は別荘のある田舎へ移ることにする。

この時の列車の旅の情景が実に印象的です。
まともな客車ではありません。
貨物車に我先にと乗り込み、わらを敷いて雑魚寝。
ロシアは内線で、そこここに銃声が響き渡る。
誰もが貧しく、焼き払われた村、荒廃した大地・・・。
その広大な大地を蒸気機関車が突き走ります。
数日をその旅に要し、たどりついた村は一見のどかで昔のままのように見えるけれども、
屋敷に着いてみるとそこも革命軍により封鎖されている。
やむなく横の番小屋にすむことにして、
医師である彼が、ジャガイモを作ったりして密やかに暮らす。


ロシアの冬の描写は本当に寒そうです。
窓が凍り付き家は半分雪に埋もれている。
酷寒の地の生活感がリアルです。
真っ赤になるほどストーブを焚いても、
背中の方は寒気が忍び寄り、窓は霜がついて真っ白・・・
北海道も私が子供の頃にはそんな光景も当たり前だったのですが、
近頃は住宅事情もよくなりましたし、温暖化もあり、
今では懐かしい光景になってしまいました。

しかし、その後の春、群れ咲く水仙の黄色のなんと鮮やかなこと。
この春の訪れのうれしさは、実感として痛いほどよくわかります。

さて、この村の近くの街にラーラがいるという噂を聞いて、
ジバゴはたまらず訪れ、二人は再会を果たします。
そうして、愛を確かめ合ってしまう二人。

気持ちが優しく純粋であるが故に、妻トーニャとラーラの間で揺れ動くジバゴの心。
しかし、身ごもった妻が変わらず自分を愛し支えてくれることに報いるため、
ジバゴはラーラとの別れを決意するのですが・・・。

ジバゴは特に思想的にどうこうというわけではないのです。
基本的にはやはり詩人なのですね。
しかし、その「詩」すらも、
個人的な感情を表すことは共産主義から外れているとして敵視される。
そんなひどい社会で、それでも生きていかなければならないのは、苦しいことですね。
人の心のありようは、いつの時代も、どこの国でも同じなのですが、
このように大きな歴史のうねりの中で、ときに運命に翻弄される人々がいる。
個人の力ではどうすることも出来ない、ドラマです。

ジバゴの母が愛用したという、バラライカ。
彼は自分では決して弾くことはなかったのですが、母の形見として大事にしていました。
私たちは最後に思いがけないところでまたバラライカに遭遇します。
人と人とのつながりの不思議。
しんみりと過ぎ去った日々が思い起こされ、
そしてまた未来をも感じさせるラスト。

いや~、映画っていいもんですねえ~、
とつぶやきたくなるさすがの名作でした。
最近はこんな風に本気の雄大な愛のドラマというのがあまりないですね。
ちょっとさみしい気がします。

バラライカが奏でる名曲、ラーラのテーマの余韻に浸りつつ・・・。


さて、この物語は1957年ボリス・パステルナーク著の原作によります。
ところがこれはロシア革命を批判する作品として、
当時のソ連では発表できず、イタリアで刊行されたのだそうです。
また、ノーベル文学賞候補となったのですが、
これもソ連共産党が辞退を強制。
受賞には至りませんでした。
・・・何だかつい最近も聞いたような話ですね。
少なくとも「国」が個人の表現の自由を奪うようなことは、
なくなって欲しいと願います。
ただ、この映画の制作年からすると、
アメリカがソ連の共産主義体制へ痛烈に批判を浴びせかける意図も
少なからずあったのだろうと推察はできますね。

1965年/アメリカ・イタリア/194分
監督:デヴィッド・リーン
原作:ボリス・パステルナーク
出演:オマー・シャリフ、ジェリー・クリスティ、トム・コートネイ、アレック・ギネス、ジェラルディン・チャップリン

「シューマンの指」奥泉 光

2011年01月03日 | 本(ミステリ)
音楽の深淵にふれ、ミステリであることを忘れる

シューマンの指 (100周年書き下ろし)
奥泉 光
講談社


          * * * * * * * *

まずはこのピアノの鍵盤を模した装丁がいいですね。
この本は、音楽の深淵へ私たちを導いてくれるのですが、
しかし、間違いなくミステリなのでした。


音大受験生の「私」は、天才美少年ピアニスト、永嶺修人(まさと)と知り合います。
彼はシューマンに惹かれ、その音楽理論も並みのレベルではない。
まずは「私」と修人の出会いからその後について、順に手記のように描かれています。
「私」は修人の才能に一目を置くばかりでなく、
次第に彼そのものを恋い焦がれていくようになっていくのですが・・・。
実際には、天才と呼ばれる修人のピアノ演奏を「私」は3回しか聞いたことがありません。
その一度目の描写がすばらしいですよ。
卒業式の夜、学校の音楽室で一人ピアノを弾く修人の演奏を
外のテラスにいる「私」が漏れ聞くシーン。

輪郭の明瞭な決然たる響きは、
月の光に照らされた音楽室の隅々まで行き渡り、
手で触れられる物質のように満ちあふれ、渦を巻き、
しかしここでも、ていねいでやさしい慈しみが、音の棘や角を消し去って、
ぶあつくて滑らかな肌を持つ官能の大波が、
聴く者の躯を幾重にも押し包んだとき、
全身の毛という毛を逆立てた私は、
おおう、おおう、と喉の奥で叫びながらまたも熱い涙を流した。


シューマンの幻想曲ハ長調。
といっても、全く私には見当もつきませんが・・・。
音に陶酔することの表現がすごいですね。
音楽は常に私たちの気づかぬ底の方で豊穣に流れていて、
演奏家はそれがほんの少し表層に上がってきたところをすくい取るだけ
・・・そのように語る永嶺少年の言葉などに、
私ものめり込んでしまい、
ついこれがミステリ小説であることなどすっかり忘れていました。

が、なんとこの演奏が終わった直後に事件は起きるのです。
夢見心地のところを、たたき起こされる感じです。
一人の少女の死。
一体これがどのように関わってくるというのか・・・?
さらにまた、終盤で「私」の目前で修人は指を切り落とすことになる。
もちろんピアニストとしては致命傷。
そして30年の後、「私」の元に、修人が外国でシューマンを弾いていたという噂が届く。
一体そんなことがあり得るのだろうか・・・。


この本はラストで二転三転、くるくるとその世界観が変わります。
その大波に翻弄され、何だか酔ってしまいそう。

始めは音楽の世界に浸り、
次には血なまぐさい普通のミステリ。
(実はここで一度がっかりしました。・・・なあんだ、そんなことなの?と。)
しか~し、実はそうではない。
さらなる衝撃が私たちを襲います。
そうして私たちは音楽の世界に戻っていく。
時には人の心を危うくもする、音楽という計りしれないモノに思いを馳せる・・・・
これはそういう構造の物語なのでしょう。

う~ん・・・堪能しました。

満足度★★★★★


ゲゲゲの女房

2011年01月02日 | 映画(か行)
夫婦のあり方の原点



         * * * * * * * *

昨日の言葉とは裏腹に、お休みナシの連続新作。
まあ、お正月の特番ということで・・・。

         * * * * * * * *

さてこれは、漫画家水木しげるの妻、武良布枝さんの原作本映画化。
・・・などということはもう解説の必要がないくらい、すっかりお馴染みですね。
NHKの朝ドラマのおかげで。
しかし実は私はその朝ドラマは見たことがありません。
原作本を読んだのみ。
従ってテレビドラマとの比較は出来ませんので、あしからず・・・。


このご夫婦は、お見合いをしてから5日で結婚したんですね。
布枝さんは、しげる氏は軍人恩給をうけているし、漫画を書いてそこそこ収入もあるので、
充分生活していけると思っていたのです。
ところが漫画は思うように売れず、実際はとんでもない貧乏生活。
結婚して初めてしげる氏の家へ行き、心細く心許ない・・・
そんな様子が良くあらわされていました。
実際、会ったばかりのほとんど他人。
こんなふうにして始まる結婚生活。
現代から見るとかえって新鮮な感じがします。
その時代は、周りにも貧乏人はけっこういて、
貧しいながらも助け合って何とか生きていけたんですね。
この生活、つまりは今で言う究極の“断捨離”なんだな。
なんと潔いまでの何もなさ。
本当に生きていくために必要なものって、そう多くはない。

しげる氏はいいます。
「貧乏は戦争よりましだ。貧乏は人の命まで奪わないから」
いえ、貧乏も度が過ぎれば命に関わりますけれど・・・。
布枝さんがそんな貧乏生活から逃げ出さなかったのは、
しげる氏のとにかく熱心な仕事ぶりを見たからなのでしょうね。
時には、漫画のアシスタントをも引き受ける布枝さんは、夫の漫画の良さを信じている。
原作中にありました。
夫の背中からオーラのようなものがたちのぼっていた、と。



また、特にこの映画の楽しいのは、
時にこの水木しげる氏の漫画原稿、アニメになって動き出すのです。
また、なにやら正体不明の怪しい存在が彼らの周りにある。
けれど彼らは決して悪さをしません。
はるか昔から人と共にあった存在なのだけれど、
今ではもうその姿を見ることが出来る者は少ないし、信じる者もいない。
いえ、それは水木氏の漫画から出るエネルギーに引き寄せられて、寄ってきたのかも。
単に事実を綴っている原作を、ドキュメンタリーではなく、
あえて映画作品に仕立てた成果が、こういうところにあります。


ところで、この水木しげる役をしているのは、宮藤官九郎さんじゃありませんか。
脚本家であり、映画監督でもある。
もしゃもしゃの髪に、黒縁めがね、
妙にこの時代にマッチしていましたねえ・・・。
ハンサムすぎないところがリアルでいい。

全くぎこちなかった夫婦が、次第にそれらしく馴染んでくる。
原作本では次第に仕事が増え、生活は楽になったけれども、夫婦が疎遠になってゆく
・・・そんな描写もありましたが、
この映画は貧乏時代に終始しています。
夫婦で力を合わせて貧乏を乗り切っていくこと、
夢や信念に向かって励むこと。
今、忘れられかけた夫婦のあり方の原点を、この作品が示しています。



エンディングテーマが、すごく面白い歌だったのです。
ユーモラスな妖怪たちにマッチした。
しかし、あまりにも強烈なので、耳に残ってしまって、
時々頭の中でぐるぐる曲が回っている・・・。
強烈すぎ・・・。

2010年/日本/119分
監督:鈴木卓爾
原作:武良布枝
出演:吹石一恵、宮藤官九郎、坂井真紀、村上淳、宮崎将

トロン:レガシー

2011年01月01日 | 映画(た行)
不思議の国のアリスが「デジタル世界」へ行ったのだと思えばいい・・・



              * * * * * * * *

新年明けましておめでとうございます。
といって、さして季節感のないブログですが、一応けじめの日でもありますし。
いつも見に来ていただいている皆様、今年もよろしくお願いいたします。
私の今年の抱負。
若干ムキになって映画を見すぎた傾向にありますので
若干セーブしようかと・・・。
おっと、新年早々後ろ向きなのはいかがなものか・・・ですね。
でも、評論家のわけではないので、
映画に忙殺されては意味がない。
もう少し創造的なことにも時間を使いたい。
・・・ということで、若干更新の間が開くことになるかも知れませんが
おつきあいいただければ、と思います。
とはいえ、年末年始は冬ごもりで
たっぷり本も映画も見ることが出来そうですので
まだしばらくはこのペースで行けそうです。
ではでは・・・


             * * * * * * * *

さて、トロン:レガシーです。
そもそもこの作品、元々あまり見たいとは思っていませんでした。
というのも、予告編などを見る限り、
あの無機質に近い世界観にどうも魅力が感じられない・・・。
あまりにも人工的な感じが寒々しいんですよね・・・。
ところがこれが、この度札幌で復活したIMAXシアターで
初の3D作品公開となるということで、にわかに興味がわいてしまったのでした。
しかし高いですね。2200円・・・。
朝イチ割引も会員割引もナシでした・・・。
とはいえ、さすがにその映像はすばらしかったです!
高所恐怖症気味の私は思わずすくんでしまいそうなリアルな感じ。
浮遊感とか、ライト・サイクルというバイクの疾走感。
まあ、これを見るためなら多少高くても仕方ないか・・・とは思わせられます。



さてさて、ところでストーリー。
う~む、私はいろいろな解説を読んでさえも、ストーリーをうまく説明することができません。
はっきりいって、何が何だか・・・。
いえ、いいたいことは解りますよ。

デジタル界のカリスマといわれたケヴィン・フリン氏が、7歳の息子サムを遺したまま失踪。
サムは父親に裏切られた思いを抱きつつ成長。
そして20年後。
突如父から届いたメッセージに従って
コンピュータシステムの中の世界「トロン」へ入って行く。

ここでもう私は疑問でいっぱいになってしまうのです。
コンピュータシステムの中の世界って何???
自分が作ったアニメとかゲームの中に入り込んでしまうというくらいのイメージか・・・。
はっきりいって、子供だまし・・・?
つまり、不思議の国のアリスが、現実にはあり得ない不思議世界に入り込んでしまう、
それと同じ。
この度の不思議な国は、デジタルっぽい無機質の世界です・・・と。
コンピュータシステムというなら、
私は、マトリックスのように意識だけが仮想現実の世界に入り込む
という方が、まだすんなり納得できるのですが。
子供だましのところを無理矢理難しい理屈をつけて、
後はお定まりの父と息子のドラマで味付けして、
面白い映像世界を作っちゃいました~!と、そういうことだと思います。
まあ、そのように割り切って見るべき作品なのでしょう。



だから、始めからストーリーを期待してはいけません。
あくまでも、映像を楽しむということに集中しましょう。
そのためにはやっぱりIMAXシアターはオススメです。
それから、このケヴィン・フリン氏はあの「クレイジー・ハート」のジェフ・ブリッジスですね。
次にこんな全く別の役柄を観るとは思ってもいなかった・・・。
あの渋みが光る役の後で、何故こんな役なのか・・・といえばつまり
この作品の大もと、「トロン」の主役を務めていたのが、彼自身だから。
つまり、前作「トロン」とはつながった物語であるということで、
にわかに、そちらの方も見てみたくなりました。
近いうちに、是非見ることにしましょう。

この映画ではそのジェフ・ブリッジズが二役を務めています。
若き日のフリン氏。
これは35歳当時の本人の顔をCGで再現したのだとか。
う~む、ここはちょっと見所でした。
こんなことができるのなら、若い頃の顔と差し替えて欲しいなんて、
女優さんが言い出しそうです・・・。

せっかく新年の第一弾というのに、あまりまともな記事でなくてごめんなさい!!

2010年/アメリカ
監督:ジョセフ・コジンスキー
出演:ジェフ・ブリッジス、ギャレット・ヘドランド、オリビア・ワイルド、マイケル・シーン、ブルース・ボックスレイトナー