チェスにのめり込むほかなかった
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オーストリア作家シュテファン・ツバイクが1942年に発表し、
命をかけてナチスに抗議したとして世界的ベストセラーになった小説「チェスの話」の映画化です。
ヨーゼフは久々に再会した妻と共に、ロッテルダム港からアメリカへ向かう豪華客船に乗ります。
それ以前、1930年代のウィーン。
公証人の仕事をしていたヨーゼフですが、
ナチスドイツがオーストリアを併合するやいなや、ナチ将校に拉致されます。
そして、貴族の資金の預金番号を教えるよう迫られるのです。
しかしヨーゼフは回答拒否。
ホテルに監禁されることに。
・・・そんな過去を挿入しながら、船上の出来事も進んでいきます。
船上ではチェス大会が開かれていて、世界王者が乗客全員と対戦しています。
ヨーゼフが船のオーナーに助言をしたことから、
ヨーゼフと世界王者が対戦することになり・・・。
さて、ホテルに監禁されたヨーゼフはどうなったのか。
ホテルに監禁などと言うと、なんだか快適そうにも聞こえてしまいます。
けれど、本当にその一室に閉じ込められて一歩も外に出ることができません。
水も出て食事は運び込まれる。
けれど窓は開かず、ただ無為に時間が流れるだけ。
音楽も、本も無し。
このナチ将校は体に苦痛を与える拷問はしないといい、
しかし、何もすることがないという精神的拷問を、時間をかけて仕掛けてきたのです。
しかしあるとき、ひょんなことからヨーゼフは一冊の本を手に入れます。
とにかく活字に飢えていたから、どんなモノでもかまわないと彼は思った。
しかしそれはヨーゼフには全く興味の外であるチェスの対戦記録の本でした・・・。
彼は一度は絶望を感じたものの、しかしそれでもないよりはマシと、
監視の目を盗みつつ、パンでチェスの駒のようなものを作り、
チェス盤はトイレの床の市松模様を利用。
ヨーゼフはチェスの世界にのめり込んでいきます・・・。
つまりそれで、ヨーゼフは世界王者と対戦できるくらいにチェスが上達したというわけなのですが・・・。
チェスにのめり込みすぎたヨーゼフの世界がゆがんでいく・・・。
意外なラストに言葉を失います・・・。
本作の題名「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」ですが、
まあ、確かにナチスのおかげで酷い目にあう話ではあるけれど、
でも本作は、ナチスの非道さを主題としたものではなくて、
「自由を奪われる」ということの意味を言っているわけなので、
原題「チェスの話」のままの方が良かったのでは?
ナチ将校とチェス世界王者が一人二役、つまり同一人物が演じていたというのには、
私は気づきませんでした。
あまりにも様子が違うので・・・。
でもこのストーリー全体を考えてみると、一人二役は必然なんですね。
とてもよく練られている作品です。
<Amazon prime videoにて>
「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」
2021年/ドイツ/112分
監督:フィリップ・シュテルツェル
原作:シュテファン・ツバイク
出演:オリバー・マスッチ、アルブレヒト・シュツク、ビルギット・ミニヒマイアー、アンドレアス・ルスト
苦痛度★★★★★
混乱度★★★★☆
満足度★★★★☆
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