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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ブラックアウト」コニー・ウィリス

2017年08月03日 | 本(SF・ファンタジー)
第二次世界大戦下のイギリス、危険な実体験

ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
松尾たいこ,渡邉民人(TYPEFACE)〔カバーデザイン〕,大森 望
早川書房


* * * * * * * * * *

2060年、オックスフォード大学の史学生三人は、
第二次大戦下のイギリスでの現地調査に送りだされた。
メロピーは郊外の屋敷のメイドとして疎開児童を観察し、
ポリーはデパートの売り子としてロンドン大空襲で
灯火管制(ブラックアウト)のもとにある市民生活を体験し、
マイクルはアメリカ人記者としてダンケルク撤退における
民間人の英雄を探そうとしていた。
ところが、現地に到着した三人はそれぞれ思いもよらぬ事態にまきこまれてしまう…
続篇『オール・クリア』とともに
ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞の三賞を受賞した、
人気作家ウィリスの大作。

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コニー・ウィリスの、タイムトラベルのシリーズ、大好きです。
「ドゥームズ・デイ・ブック」と「犬は勘定に入れません」を読んだのち、
続きを待っていたのですが、その後忘れてしまっていたようです。
というか、新書サイズのこの判で出ているとは思っていなかったもので・・・。
本巻は2012年に出たもので、もう5年も経っていました。
そしてこの本のボリューム(解説を含めて766ページ)に驚いたのですが、
なんと話は完結しておらず、
「オール・クリア」という題名で続きが出ており、
それは一巻では収まりきらず上下2冊となっているのです!
私、はじめからそれに気づいていれば恐れをなして読むのを止めたかもしれないのですが、
しかし本作、あまりの面白さに一気に読んでしまい、
すぐに続きを借りる手配をしました。


このシリーズ、未来のオックスフォード大学の史学部が舞台となっており、
学生たちがダンワージー教授の指導の元、
過去のいろいろな場所・時代へ「降下」し、現地調査をするというストーリーです。
学生たちが行く先々で様々な困難に襲われ、
命の危険やら現代への帰還が危うくなるなど、ハラハラ・ドキドキ。
また文体はユーモアに富んでいて飽きることがありません。


本作は、第二次大戦下のイギリスへ赴いた3人のことがメイン。
郊外の屋敷のメイドとなり、疎開児童の観察をするメロピー。
ロンドンでデパートの売り子となり、
空襲のための灯火管制中の市民生活を体験するポリー。
アメリカ人記者となり、ダンケルク撤退における英雄を探そうとするマイクル。


この3人は、それぞれ場所も違うし、時もわずかずつずれてこの時代にやってきたのですが、
それぞれにアクシデントがあり、
また原因もよくわからぬままに、現代へ帰ることができなくなってしまうのです。
そこで、同時代にいるはずの同僚を探し当てて、
ついに3人が再開を果たすというところで、本巻はおしまい。
どうも大もとの大学の施設の方で何かアクシデントがあったようにも思われるのですが・・・。
この先の彼らの運命が気になって、続きを読まずに入られません。


彼らが向かった先の「時代人」たちが個性豊かで生き生きとしていて、
また楽しいのですよね~。
私は、ダンケルクのところのコマンダーが好きでした。
頑固一徹、正義感に萠える老人。
しかしなんと、その後亡くなったということになっているのですが、
いやいや、実は生きていたということが後で判明するのではないかと、私は期待しています。


すぐに続きに行きましょう!!

「ブラックアウト」コニー・ウィリス 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
満足度★★★★★
図書館蔵書にて