ありがとう、トニ・エルドマン

うざったい、イタい、空気読まない父

＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

陽気で悪ふざけが大好きなヴィンフリート。
彼の娘イネスはコンサルタント会社に勤務し、
今はルーマニア、ブカレストで暮らしています。
ヴィンフリートは娘とは疎遠で、最近ゆっくり話したこともありません。
ある時、そんな彼がイネスの元を訪ねてきます。
突然の父の訪問に驚くイネス。

そして父は数日滞在し、帰ったと思ったのに、
今度はかつらをかぶりトニ・エルドマンという別人のふりをして現れ・・・。



ヴィンフリートはきっと人の笑顔を見るのが好きなのでしょう。
だから一生懸命人を笑わそうとするのですが、
それは全く子供じみた悪ふざけとしか言えないようなシロモノで、
実のところ滑りっぱなしというか白けるというか・・・。
とにかくそんな彼は、娘が仕事に振り回されピリピリしていて笑顔がない、
イコール幸せではないと思い、
心配のあまり彼女につきまとうわけですね。
しかしイネスからすると、仕事先にもプライベートの外出先にも
別人のふりをして（誰が見ても一目瞭然なのですが）現れるうざい父に、
呆れることを通り越して怒りさえ覚えてしまう。



空気が読めなくて、うざったくて、イタい父。
けれどそこがやはり親子で、怒りながらも、
父が自分の為を思っていることをイネスはわかっている。
いつしか父の娘に対するただ一直線の思いに
元気づけられていきます。
そしてそんな中で彼女はだんだん気づいていくわけです。
自分自身仕事をうまく務めたい一心でがんじがらめになっていることに。



彼女が自分自身を開放する大胆な行動には、
やはり、ヴィンフリートの娘だなあ・・・と思ってしまいましたが。


最初の方に少しだけ登場したヴィンフリートの愛犬が可愛かったな。
その犬はもうほとんど歩くこともままならない老犬だったのですが、
ついに天寿を全う。
その後、ヴィンフリートは娘を訪ねていくのです。
娘は犬が死んで父がヒマになったのだろうと思うわけですが、
いやいや、前から気になっていたけれど、
犬がいたから行けなかったというのが本当のところですよね。



2時間42分という長さでしたが、
じっくりと父娘の関係を描くのに実際必要な長さだったように思います。


「ありがとう、トニ・エルドマン」
2016年/ドイツ・オーストリア/162分
監督：マーレン・アーデ
出演：ペーター・シモニスチェク、サンドラ・フラー、ミヒャエル・ビッテンボルン、トーマス・ロイブル、トリスタン・ピュッター
意表を突く度★★★★☆
うざったい度★★★★☆
満足度★★★★☆