映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

歌声にのった少年

2017年08月27日 | 映画(あ行)
コンテンストの前段階こそが苦難の道



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パレスチナ、ガザ地区出身の歌手ムハンマド・アッサーフの実話をもとにしています。



紛争の絶えないパレスチナ、ガザ地区。
少年ムハンマドは姉ヌール、友人2人とバンドを組み、町で歌っていました。
姉は、ムハンマドの声と才能を信じ、
「いつかカイロのオペラハウスに出る」と夢を語ります。
しかしその姉は病に倒れてしまい・・・。
そして時は流れて青年となったムハンマド。
相変わらず町は紛争の中にあり、瓦礫の山。
難民の彼らは自由にこの町を出ることができません。
けれど姉との誓いを諦めきれないムハンマドは、ある決心をします。



本作の前段、少年時代のシーンがいいのですよ。
特に、姉、ヌールの生き生きとした表情が忘れられません。

彼女は聡明で実行力に富んでいて、
そして何よりも弟を大事に思っています。
この地では女性が前面に出ることはタブーなのですが、
それでも彼女は負けていない。
夢も大きい。
しかしその彼女が腎臓を患ってしまうのです。
移植手術する費用もない・・・。
この少女の喪失の痛手は大きい・・・。



カイロのテレビ番組として、勝ち抜きの歌唱コンテストがあるのです。
しかしそのカイロに行くまでが大変なわけで・・・。
でも誰が聞いても一目瞭然の才能と言うのは確かにあるものなのですね。
あの、スーザン・ボイルやポール・ポッツのように。
その才能が瞬く間に人々に受け入れられ認められていくさまは、
いずれにしても感動的です。
ましてや、このような困難な状況の中では。



現実であるからこそ、素晴らしいストーリーでした。



歌声にのった少年 [DVD]
ハニ・アブ・アサド,サメホ・ゾアビー
アルバトロス


「歌声にのった少年」
WOWOW視聴にて
2015年/パレスチナ/98分
監督・脚本:ハニ・アブ=アサド
出演:タウフィーク・バルホーム、ナディーン・ラバキー、ムハンマド・アッサーフ
世界を知る度★★★★★
満足度★★★★★