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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

絵本「レッドタートル ある島の物語」

2017年03月23日 | 本(その他)
島が語る物語

レッドタートル ある島の物語
池澤 夏樹
岩波書店


* * * * * * * * * *

どこから来たのか どこへ行くのか いのちは?
嵐の中、海に放りだされた男が小さな無人島に打ち上げられた。
必死に島から脱出しようと試みるが、
見えない力によって何度も島に引き戻される。
絶望的な状況におかれた男の前に、ある日、一人の女が現れた――。
詩情あふれるマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督初の長編アニメーションを絵本化。
池澤夏樹の言葉で物語る。


* * * * * * * * * *

先日、「児童文学の条件―子どもの本を書く時、作家は何を考えるか―」という
池澤夏樹さんの講座を拝聴する機会があり、
そのときにこの絵本を購入し、サインをしていただきました!
・・・というかこの日のために、
これまで読んだことのなかった池澤夏樹さんを読み漁っていたのです、実は。


(頂いたサイン)


で、私はスタジオジブリによるこのアニメーションはもちろん見ていますが、
こんな形で池澤夏樹さんも関わっていたということを、この日はじめて知った次第!!
「ある島の物語」という副題を考えたのは池澤氏だそうです。
またアニメの中のどのシーンをこの本に入れるのかということも検討したのだと
おっしゃっていました。


さて、このアニメにはセリフも解説のナレーションもないのです。
それでこの絵本では島が物語を語るという形になっています。
そのため、この本は実際のアニメよりも親切。
映画を見ただけではよくわからなかった部分が、
ちょっとだけ分かるようにできているのです。
といっても、これも解釈の一つにすぎないのかもしれませんけれど。


(アニメの画面に合わせて、変則的にタテ開きとなっています。)


例えば、はじめの方で男は筏を作って何度も島を脱出しようとします。
けれど、何ものかによって筏を壊されて失敗。
そのときに男はウミガメを見かけたものだから、
ウミガメが筏を壊したのだと思って怒るわけです。
けれど、この本によれば、実は男を島から出さなかったのは
島の意志であるように描かれているのです。


なるほど~、色々な考え方ができるんですね。
アニメを見た人でもこれは一読の価値があります。
でもやっぱりこれはあくまでもアニメの補助。
この本を見たらアニメを見なくていいということにはなりません。
ぜひ、アニメの方も御覧ください。


考えてみたら、南の島で起こる不思議。
これは池澤夏樹さん向きのストーリーなのでした。


→ アニメ「レッドタートル ある島の物語」

「レッドタートル ある島の物語」原作マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
構成・文 池澤夏樹  岩波書店
満足度★★★.5