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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「神去なあなあ日常」 三浦しをん 

2012年10月19日 | 本(その他)
自然とともにある、林業。そしてスペクタクルへ!!

神去なあなあ日常 (徳間文庫)
三浦しをん
徳間書店


               * * * * * * * * * 

今作も、文庫化を待ちかねていた一作です。
三浦しをんさんのお仕事小説ですが、
この職業がなんと林業というのが虚をつかれる感じですね。
実際どんな仕事なのかと、検討もつかないところから攻めてくる。
けれども、これは日本人の信仰の原点をつく、大切な作品であるように思いました。


横浜のごく普通の高校生だった勇気。
ところが卒業後、なぜか突然
三重県の林業の現場で研修生として働く事になってしまった。
ケータイは通じない、仕事はきつい、
遊ぶところなんかない、逃げ出したくても、駅までの足がない・・・。
そんな山奥の神去(かむさり)で、泣きたくなってしまう勇気だったのですが、
何事にも「なあなあ」とのんびりした村の人々の中で、
次第に自分の居場所を得て仕事が好きになっていく
勇気の1年間の成長を描きます。


「なあなあ」というのは、この地方の方言で、
「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」というニュアンスの言葉。
拡大して「のどかで過ごしやすい、いいお天気ですね」
などという意味までも持ちます。
100年単位の木の成長を見守る土地の人々ならではのことばですね。
でも、だからといって、林業の仕事がのんきでのどかだと思えば大間違い。
自然相手の仕事は時として大変な危険も伴います。
山ではいつ何がおこっても不思議ではない。
人々は自然=神という感覚が身についていて、
だからこそお祭りも本気に命がけで盛大に行うのです。


山の美しい四季の移り変わり。
横浜でなら道端の草花に興味も持たなかったであろう勇気ですが、
生命力に満ちた山の草花に圧倒され、好きになっていきます。
三浦しをんさんらしく、ちょっぴりラブストーリーもあるところがまたいい。
まあ、前途多難ですが。
そして、意外にも終盤は大迫力のスペクタクル!!なのです。
いやあ、すごい。
著者のなみなみならぬ力量を感じるところでもあります。


私はぜひこれをアニメで見たい。
実写ではダメです。
是非、細田守監督で!!


「神去なあなあ日常」三浦しをん 徳間文庫
満足度★★★★★