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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

普通の人々

2012年06月21日 | 映画(は行)
誰もが羨むような家庭に潜む罠

             * * * * * * * * * 

ロバート・レッドフォード初監督作品にして、
1980年アカデミー賞4部門に輝いた作品。


中流家庭のジャレット一家は、夫婦と二人の息子、何一つ不足なく充足した家庭でした。
ところがある時、ヨットの事故で兄バックが亡くなり、
更には弟コンラッドが自殺未遂。
どんどんきしみ始める家族・・・。


コンラッドは、兄が亡くなった事故でトラウマを抱えていたのです。
誰にも明かせない心の奥の思い。
なぜ自殺しなければならなかったのか、
彼の心を解きほぐすのは精神科医のバーガー。


精神科医は、患者にあれこれ教え諭したり、指示を出したりはしません。
ただ患者の信頼を得て、
患者が心を開き、自らの心の奥底をさらけ出すのを待つのみ。
患者が抱え込んだ思いを吐き出した時に、それで治療完了なんですね。
そうしたプロセスがよく分かります。
でもこれがなかなか簡単ではなさそうです。
そこまで行く前に、患者が来なくなってしまいそうですもんね。


さて、コンラッドの混乱は兄のことばかりではありません。
彼の生まれ育った家庭、
特に母の心が大きく影響していることがわかります。
父は弁護士で、母も美しく教養があり魅力的な女性。
誰もが羨むようなそんな家庭にも、
罠が潜んでいるのですね・・・
なぜか母は、バックだけをひたすらに愛していたのです。
最愛の自分の分身とも思える息子バックが亡くなり、
どうでもいい方のコンラッドが生き残っている。
愛せないというよりはむしろ憎んでいる風。
幼少の頃から母の気持ちをコンラッドは感じ取っていたのでしょう。
兄が亡くなったことで母の気持ちはますます離れていく。


友人や彼女より何よりも、まず家族に認められること。
それが私達が生きていく上で必要なのかも知れません。
悩み多きコンラッドは、
それでもさすが若くて心がしなやかです。
そんな母でさえも最後には受け入れようとしますが・・・・。


今作は、コンラッドの悩みが中心のようで、
実は一番問題なのはこの母です。
なぜかあまり父と息子の葛藤というのは感じません。
『アメリカ文化は女性嫌悪の文化』という、内田樹氏の持論をまさに地で行く作品。

コンラッドの気持ちの変化をじっくり描く良作ではあります。

普通の人々 [DVD]
アルヴィン・サージェント
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン


「普通の人々」
1980年/アメリカ/124分
監督:ロバート・レッドフォード
出演:メアリー・タイラー・ムーア、ティモシー・ハットン、ドナルド・サザーランド、ジャド・ハーシュ