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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密

2012年06月20日 | 映画(た行)
最新技術で語るノスタルジー



                   * * * * * * * * * 

ベルギーの漫画家エルジェによる「タンタンの冒険旅行」を3Dアニメ化したもの。
少年記者タンタンと白いフォックステリア、スノーウィの冒険譚は、
残念ながら私は読んだことがないのですが、
スピルバーグ氏はたぶん子供時代に夢中になって読んだのでしょうね。
そういう監督の愛情あふれる作品。


17世紀、洋上で忽然と姿を消した帆船ユニコーン号。
タンタンは偶然にその模型を手に入れます。
そして、その模型のマストには、ユニコーン号に積まれていた莫大な財宝の行方を示す秘密が隠されていたのです。
その秘密を手に入れようとする者たちとの、追いつ追われつの冒険譚。
3Dアニメという最新技法を用いながら、舞台は20世紀初頭当たりでしょうか、
ノスタルジックなその雰囲気がいいですね。
とりあえずは、大いに楽しんだのでした。



さて、でもこのリアルな3Dアニメというものについて、
少し考えてしまいました。
街の風景や、家具や道具、海の波、
これはもう実写と殆ど変わらないくらいにリアルです。
けれど気になるのは人の表情。
これもよくできています。
・・・だけれども、何かが足りない、
残念・・・という思いをぬぐい去れない。
えーと、たぶんこの人の表情も、
本物の役者さんの表情をコンピュータで読み取ってアニメ化しているのですよね。
けれども、なんだか偽物という感じがしてしまう・・。
どんなに頑張っても、本物の人の表情には勝てないのではないでしょうか。
ほんのちょっとした目線とか、まゆの動かし方、シワのでき方、
私たちは普段意識せずにそんな微妙なところを読み取っているのでしょう。
そしてそれは個人個人で違ったりもするのです。
デジタルではまだまだ対応しきれているとは言えません。
でも、結局これは行き着くところまでは行き着かない、というか、
行き着いては欲しくないような気がします。
生身の人間がやはりいい。



それからこれが、3Dではない普通のアニメなら・・・、
私たちはその単純な表情から想像力を駆使するのです。
例えば殆ど動きもない無表情のカットがあったとして、
私たちはストーリーの流れからその表情に、
怒りや悲しみを勝手に読み取ったりもするんですよね。



だからどうにも、今作のような中途半端なリアルさは、
かえって良くないような気がしてなりません。
ここまで、リアルに作るのなら、
いっそ実写にしては・・・などとも思えてきます。


ではタンタン役は誰がいいかな?とか、
酔いどれ船長は、誰がいいかな?とか、想像するのも楽しい。
どうなんでしょう。
3Dアニメの方向性。
この先もただリアルになるだけなのかな?
どうなっていくのか、もう少し見守りたいと思います。



ただ、とても良かったのは犬のスノーウィです。
これこそ、実写ならすごく大変なことを、自在にやってのける。
より私達が「犬らしい」と感じる動きをするわけです。
また、実際に犬がするはずのないアクションも。
これはいいですね。
私はこちらの可能性に期待したいです。

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ジェイミー・ベル,アンディ・サーキス,ダニエル・クレイグ,ニック・フロスト,サイモン・ペッグ
角川書店



「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」
2011年/アメリカ/107分
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演(声):ジェイミー・ベル、アンディ・サーキス、ダニエル・クレイグ、ニック・フロスト