映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「コンビニたそがれ堂」 村山早紀

2011年09月23日 | 本(SF・ファンタジー)
大切なものを失ったときに・・・

コンビニたそがれ堂 (ポプラ文庫ピュアフル)
早川 司寿乃
ポプラ社


             * * * * * * * *

駅前商店街のはずれ、赤い鳥居が並んでいるあたり、
夕暮れどきに行くと、不思議なコンビニを見つけることがあるといいます。
ドアを開けて中に入ると、
ぐつぐつ煮えているおでんと、つくりたてのおいなりさんの甘い匂いがして、
レジの中では長い銀色の髪に金の瞳のお兄さんが、にっこりと笑っている。

さて、このコンビニ「たそがれ堂」には、
この世には売っていないはずのものまでが何でもそろっていて、
大事な探しものがある人は必ずここで見つけられるという・・・


たとえば、雄太少年は、
気になる女の子が転校間際にくれようとしたメモ帳を、
皆が見ている気まずさから、冷たく払いのけてしまった。
それからずっとその子を傷つけてしまったことを気に病んでいた、
本当はやさしい男の子なのです。
その少年がふらりとこのコンビニに迷い込んで、
そこにあるはずのないあのメモ帳を見つけるのです。
その夜、雄太はあの女の子からパソコンのメールを受け取ります。
少年と少女のほのかな思い。
不思議でほっこりと温かい、コンビニの物語の始まり・・・・・・・・。


ママに捨てられてしまったリカちゃんのお人形。

桜の花びらが封じ込められている不思議なガラスのストラップ。

猫が人間になるための薬。

そして不思議な小さな光の粒。


それは単純に「商品」とは呼べない物であったりするのですが、
何かを切実に探し求めているとき、このコンビニが手助けをしてくれます。
年齢や性別に関わりなく、誰もが時にまよい、傷つき、落ち込んでいきます。
けれどこのコンビニのお兄さんは、それらをふんわりと受け止めて、
私たちを納得させ、癒しを与えてくれる。
今の私には怖くて触りがたいくらいに、ピュアな物語。
でも、しばしこの心地よさに身をゆだねていたい・・・。
本来は児童書だそうですが、
是非大人の皆様もどうぞ。

「コンビニたそがれ堂」 村山早紀 ポプラ文庫ピュアフル
満足度★★★★☆