映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

あぜ道のダンディ

2011年09月12日 | 映画(あ行)
弱音は吐かずに颯爽と・・・



           * * * * * * * *

妻に先立たれて15年。
50歳の宮田。
ある日、自分はガンなのではないかと疑いを持ち、
ほとんどもう先がないと思いこみます。
大学入学が決まったばかりの娘と息子には弱音は吐けない。
唯一中学時代からの親友、真田にだけ胸の内を明かします。


宮田は、中年のパッとしないおじさん。
家の中では、娘・息子とはほとんど会話もなく疎外感タップリ。
まあ、今時普通かもしれませんが。
でも、男手一つで二人の子供をここまで育ててきたというのは、すごいと思うんですけどね。
けれども、宮田の心はダンディ。
いつもダンディでありたいと見栄を張りながら、
懸命に生きているわけです。
彼が思う「ダンディ」というのは、
颯爽としていて、決して弱音は吐かない、
そういう「男」の生き方なのでしょう。

「大変だなんてあたりまえのこと今さら言ってんじゃないよ。
こんな時代におじさんやってんだぞ。
後にも下がれねえ、前にも進めねえ50歳だ!」
と見得を切る。

けれど子供たちも、当初は今時のしらけきった子供に見えるのですが、
実はかなり健全に育っているのが次第に見えてきます。
そりゃそうですよね。
このお父さんに育てられたら、こうなります。
だから、やっぱりこれまでがんばってきた甲斐はあるんですよ。

毎日毎日を普通にがんばることこそカッコいい。
派手でなくても、目立たなくても、お金はなくても。
でも、必要なものはあります。
それは、心の内を打ち明けられる友。
真田は、どちらかというと宮田の子分的存在なんですが・・・。
言いたい放題言われるのも、実は信頼感があるからこそ。
お気に入りの帽子も結局淳一に取られてしまうのですが、
この真田も、なかなかどうして、立派にダンディです。



さて、でも50歳。
立派にまだまだ先へ進めますよ!!
でなけりゃ50歳過ぎのオバサンはどうすりゃいいんですか。
オジサンとオバサンは別?
そうかも、と思ったりして・・・。


「川の底からこんにちは」の石井裕也監督作品。
地方都市で、地味にがんばる人々の悲喜こもごもを
泥臭くなくコミカルに描きます。
今後も楽しみです。

「あぜ道のダンディ」
2011年/日本/106分
監督・脚本:石井裕也
出演:光石研、森岡龍、吉永淳、西田尚美、田口トモロヲ