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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

オー・ブラザー!

2011年09月14日 | 映画(あ行)
脱獄囚3人組の珍道中



            * * * * * * * *

この作品、私が初めてコーエン兄弟監督作品を見て、はまってしまったものです。
お勧め作のご紹介。
1930年代、ミシシッピーの片田舎。
エヴェレット(ジョージ・クルーニー)、
ピート(ジョン・タトゥーロ)、
デルマー(ティム・ブレイク・ネルソン)
の三人組が脱獄するところから始まります。
この三人、以前お宝を隠した場所が、まもなくダムのために水底に沈んでしまうので、
お宝を掘り起こすために脱獄したのです。
この3人組のいわばロード・ムービーですが、すったもんだの大変な旅。
裏切られたり、騙したり、
かと思えば気のいいヤツと道連れになったり。
途中何気なく立ち寄ったラジオ放送局で歌った曲が、
本人たちも知らぬ間に、大評判。
このことが後々彼らの窮地を救ったりします。


ラジオも車もある時代ですが、ミシシッピーはアメリカの大いなる故郷。
まだまだ素朴な宗教心とか、
白人至上主義の秘密結社KKKの怪しげな信仰があったり、
作戦をこらした選挙戦があったり、
大いに時代性が混沌としています。
ジョージ・クルーニー演じるエヴェレットは、3人の中では一番知的なのですが、
“伊達男”というポマードで髪を整えることに異常に執着していたりして、
まあ、あまりまともではありません。
シニカルな笑いを呼ぶコーエン兄弟の入門編としては最適です。

T・ボーン・バーネットによる数々の音楽がまた素晴らしくいいんですよ。
古き良きアメリカ・・・、
そういうイメージですね。

ラストのダムの湖の光景は、何かを暗示しているような気がしました。
「これからは、電気をどんどん使って豊かな生活をするのさ・・・」
エヴェレットはそう言うのですが・・・。
人々のエネルギッシュさ、
そして、懐かしく猥雑なアメリカの原風景。
そういうものがダムの底に沈められ、消えていく。
そうして無機質な都会の光景が広がっていく。

日本もまたしかり。
建物や街の様子、文化。
そうしたモノの近代化と共に、私たちの心が失ったものもあるのかもしれません。
懐古主義では、もはや私たちの生活も立ちゆきませんけれど。

オー・ブラザー! [DVD]
ジョエル・コーエン
ジェネオン エンタテインメント


「オー・ブラザー!」
2000年/アメリカ/108分
監督・脚本:ジョエル・コーエン
制作・脚本:イーサン・コーエン
出演:ジョージ・クルーニー、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソン、ホリー・ハンター、ジョン・グッドマン