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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

Q&A

2007年04月23日 | 本(ミステリ)

「Q&A」 恩田陸 幻冬社文庫

始め、この本は恩田陸に対するインタビューをまとめたものかと思ってしまいました。
そうではなくて、れっきとした小説の題名。
この本は、すべて会話だけで構成されています。
しかも、なんとも言えず、恐ろしい・・・。

まず、ここで起きる事件そのものが異様です。
ある大型スーパーで、突然パニックに襲われた買い物客が、いっせいに何かから逃げようとして、倒れ、積み重なり、挙句に死者69名、負傷者116名という大事故になってしまう。
ところが、なぜかその原因が不明で、この本は、この事故の当事者に証言を求めるインタビューの記録となっているのです。
少しづつ事件の全容が明らかになっていくのですが、結局最後まで憶測の域を超えることはありません。
しかし、誰かの、あるいは何かの組織の陰湿な意図がどうも見え隠れします。
人間のそのような意図も怖いし、誰もが簡単にただの群集と化し、火に飛び込む虫のように自ら災害の渦中に飛び込んでしまう、そのあたりが妙にリアリティがあって、非常に怖いです。
しばらく人ごみには近づきたくない感じです。

カルト教団のテロなのか、何かの実験なのか、単に偶然の積み重なりなのか。
また、そのときに見られた犬の不思議な行動。
廃墟と化したビルにまつわる都市伝説めいたうわさ。
血まみれのぬいぐるみを引きずる幼女のなぞ。
薄気味悪いエピソード満載です。
それぞれの話で、短編が出来るのではないかと思えるほど。
これが一つの小説というのは、すごく贅沢というかもったいないと思ってしまいました。