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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「テアトル東向島アカデミー賞」

2007年04月07日 | 本(エッセイ)

本日は本の紹介です。
「テアトル東向島アカデミー賞」 福井晴敏著 集英社文庫

私の敬愛する福井晴敏さんが営んでいる自宅のホームシアター「テアトル東向島」。
そこで選出されるアカデミー賞受賞作の紹介。

・・・と、こういう内容です。
つまりは、映画レビューですが、さすが物書きのプロ。
数知れない映画遍歴、基礎知識、社会的考察力、
そして何よりも、自己の確固とした思考及び嗜好が表れており、
このようなブログを続けようとしているものにとっては、
こんな文章が書きたいものだ・・・と、
見本にしたくなってしまうのでした。

そのラインナップを見てみると
ジュラシック・パーク、羊たちの沈黙、ターミネーター、バットマン、未知との遭遇、マトリックス、プライベート・ライアン、スパイダーマン、ガメラ・・・・・
私も、嫌いではありませんがこの方向性は、なかなかのものです。


そもそも、この本の「ウリ」は、
「世の男性が本当に好きなのは、このような作品群であって、
恋愛映画や、アート系のミニシアターに付き合っているのは彼の本当の姿ではない、と女性に知らしめること。」とし、
彼のハートを射止めるなら、このような映画に付き合うのも手だよ・・・
といっております。
まあ、これはちょっとした、福井氏のユーモアで、
やはりこれは、彼の映画好きの発露の結果としての本である、と素直に見たほうがよいでしょう。
しかし、こんな(失礼!)作品の話でありながら、妙に引き込まれ、
私が見ていないものについては、是非見なければ!と、思わせる力と勢いに満ちています。映画好きの方は是非ご一読を。

さて、もともと福井氏の作品群は、
どれも始めから映像化を意図したような印象的な場面でつながれています。
そもそも、軍隊だの、兵器だの、全く興味のない私が、
わくわくしてほとんどの作品を読破し、次作を待ち焦がれているというのも、多分、このためだと思うのです。
ただ、映画というよりは、アニメ的かなあ、と、思っていました。
そして、この本には、しっかり自作
「ローレライ」、「戦国自衛隊1549」、「亡国のイージス」の紹介もあります。


私は「ローレライ」しか見ておりませんが、
原作をこよなく愛したものとしては、失望・・・としかいえません。
多分、女性読者は、皆そうだと思います。
あの長大なストーリーを2時間にまとめるのは、やはりムリがあったと思います。
この本の中で、福井氏は言っています。
「状況を後退させ、ドラマを前面に立てた。そのため、タイトルから「終戦の」がはずれた。戦争映画ではなく、ばらばらな個人が一致団結した瞬間に生まれる奇蹟を描いた映画になった。」
そうですね、その方向は納得できるし、望むところでもあり・・・、
では何が問題かというと、
そのドラマとして寄り添う人物が、
私の望む人物ではなかった、ということです!
フリッツの存在自体を抹消!! そんなばかな~!


やれやれ・・・、気を取り直して、そのうち「亡国のイージス」の映画も見たいと思います。

さて、この本の最後には福井氏の最大お勧め「ブレイブハート」に触れています。
彼は20代半ば、どうしようもない閉塞感に襲われていた頃、この作品に出会い、
「個人の中に眠る熱が事態を動かし、世界さえ変え得るという”現実”を思い出させてくれた」、といいます。
その後すぐに彼は江戸川乱歩賞をめざして小説を書き始めた。
いわばこれは人生を変えた一本ということになります。
こんな劇的な映画との出会い、残念ながら私にはそこまでの出会いはありませんが、
(というよりはそこまでの感性がないのかもしれない・・・)
単に暇つぶしではない、何かがそこにあるのだと、思い続けたい気がします。