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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ブラックブック

2007年04月16日 | 映画(は行)

1944年。ナチス・ドイツ支配下のオランダ。
家族をナチスによって惨殺されてしまった、ユダヤ人歌手ラヘルはレジスタンスのスパイとして,ドイツ将校ムンツェに接近する。

さて、この作品は、ナチによるユダヤ人迫害、オランダ人によるナチへのレジスタンス。そんなところが主題となっています。
チラシには
1994年スピルバーグ「シンドラーのリスト」
2003年ポランスキー「戦場のピアニスト」
そして、2007年バーホーベンの「ブラックブック」
という風に並び称しているのですが、ちょっと違うかな・・・、と思います。
前者は、戦争と人間を考えさせられる、大変に重い作品。
然るに、こちらは、基本的にはエンタテイメントだと思います。サスペンス・エンタテイメント。
いえ、だから前者より劣るとは思っておりません。
この監督のポール・バーホーベンは、よく「バイオレンスとエロティシズム」の単語で評されるオランダ出身の監督。
23年ぶりに故郷に舞い戻って完成させた作品であるとの事。
まさに、彼の真骨頂といえましょう。
約2時間半弱。大変長いのですが、長さを感じさせない。
「いや~、何というドラマチック!!。これぞ、ストーリーだなあ・・・」と感嘆してしまったのです。

まず、この主人公ラヘルの次々訪れる不幸にも負けず突き進んでいく、強さと情熱。強い女性は大好きです。
ドイツ将校のムンツェは、そろそろ、ドイツの降伏も近いと読み、これ以上いたずらに犠牲者を増やすべきではないと考え、ひそかにレジスタンスと手を結ぶ。
演じるセバスチャン・コッホは,先日「善き人のためのソナタ」で、お会いしました!!
情報を引き出すために近づいたラヘルだったけれども、いつしか本当に愛してしまう・・・。この2人の運命は・・・?

さて、後半、「この中に、内通者がいる。アンフェアなのは誰か。」というフレーズが私の中で流れておりました。
この映画のもう一つの興味は、この、誰が裏切り者なのか、ということ。
誰も彼もが怪しい中、映画中では、ラヘルが裏切り者と仲間に誤解されてしまうという、恐ろしい展開になってしまいます。
このような映画は、普通ドイツの降伏で、ほっとして、メデタシメデタシとなりますよね。
ところが、ここでは、ラヘル自身「ドイツが負けるのがこんなに恐ろしいとは思わなかった」といったとおり、なんだかそこからがまた、ドキドキさせられ、怖いのです。
ドイツが負け、レジスタンスが一気に喝采を受け、英雄に祭り上げられる。
そこまでは当然かもしれません。
ところが、少しでもナチに加担したり、ナチを相手にいい思いをした女たちがひどい迫害を受けることになる。
はたから見ればラヘルも、ナチ将校とつるんで、うまい汁を吸っていた、そんな風に見えてしまうのです。
人間の心の尊さと醜さをもまざまざと見せ付けられます。
このあたりで、私は絶対にこのラヘルは誰かに殺されてラストになる・・・と、予感しておりました。
しかーし!本当のラストで、驚いた。
そういえばこの映画は冒頭、数年後のラヘルが、過去を回想するところから始まったのでした!
それをも忘れてしまっていたとは!
あまりにもストーリーに没頭していた・・・。
いえ、単にボケですかね。
では、ということは、始めに出てきたあの観光客の女性は、一緒に働いていた、あの彼女だったんですか??うーん、あなどれない。

表題の「ブラックブック」は裏切り者の正体とラヘルの潔白をあかす決定的証拠となった、あの黒い手帳のこと、ですよね。


2006年 /オランダ=ドイツ=イギリス=ベルギー/144分
監督:ポール・バーホーベン
出演:カリス・フォン・ハウテン、セバスチャン・コッホ、トム・ホフマン、ハリナ・ライン
ブラックブック [DVD]カリス・ファン・ハウテン.セバスチャン・コッホ.トム・ホフマン.ミヒル・ホイスマンHappinet(SB)(D)