『「いき」の構造』 は日本哲学史上の名著として知られる本である。著者は九鬼周造。人脈的には京都学派に属する学者であろが、やはり異色の存在といえるだろう。その著作も、「いきの構造」以外はあまり知られていない。
しかし、九鬼周造の名はこの「いきの構造」によって、後世も輝き続けることとなると思う。
「いきの構造」は昭和5年の出版であるが、書かれたのは彼がパリに留学していた期間である。文庫版の多田道太 . . . 本文を読む
学校の教材である。古本屋で買った。800円。
とてもわかりやすく本当にタメになる。随所に研究課題が記されていて更なる学習意欲もわくというものだ。
この本の前の所有者であった松○△×子さんはまじめな生徒であったらしく、アンダーラインや書き込みがたくさんある。
巻末の「研究」はこんな感じである。
・もめんと毛、スフと毛などの交ぜ織りの繊維を見分けるにはどうしたらよいか。
・着物につく虫には、どんなも . . . 本文を読む
「万葉草木染」の作家である著者が、日本の歴史を、染と織の文化を視点として描いていく。
著者独特の柔らかな語り口が肌に合うなら、一つの工芸文化から見た日本史として、面白い読み物だと思う。
しかし、著者の歴史観というのが、若干というか、かなりかたよっているのだ。
まず古代史においては、江上波夫の「騎馬民族征服王朝説」に全面的に依拠し、日本の服飾史もその枠の中押し込めてしまっている。
また、日本の歴史 . . . 本文を読む
谷崎潤一郎の有名な随筆である。
潤一郎は1886年(明治19年)東京日本橋に生まれた生粋の東京人で、1823年(大正12年)の関東大震災を機に関西に移り住んだ文化人の一人だ。
潤一郎は最初は関西の文化に異質なものを感じたが、その後積極的に関西弁を作品に取り入れ「春琴抄」「細雪」などの名作を発表していく。
陰翳礼讃は1933年の執筆である。1868年の明治維新と2005年現在の丁度真ん中にあたる時代 . . . 本文を読む
「きものの歴史」と言う平板な書名であるが、実際はかなり変わった構成である。
きものの産地ごとの歴史や由来を述べ、そのあとに染織技法の解説がある。
歴史の記述は細微にわたり、○○織は△△村の××エ門が始めて行った など非常に具体的である。
それもそのはず、著者は伊勢丹の呉服部門に長く勤めた人で、この本は繊研新聞社の業界紙「きもの」に連載されていた文章をまとめたものなのだ。
つまり、この本は業界内部 . . . 本文を読む