現在、新国立美術館では「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション(Bührle Collection)」が
催されている。展示されている作品数は64点と少ないようだが、個々のクオリティーが
高い上に、作品間に十分な余裕があり混雑していても観やすくなっている。
それにしても印象派の先駆者としてギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)や
エドゥアール・マネ(Édouard Manet)が挙げられることに多少の違和感が生じて
しまうのは、彼らの作風が古典的に見えるからであるのだが、彼らが印象派の先駆者と
されるのは作風ではなく、物の捉え方の方にある。
クールベとマネに共通していることは古典派の画家たちが持っているはずの「高貴さ」を
無視して描くことである。クールベが「貴族」ではなく「田舎者」を、マネが「貴族」
ではなく「娼婦」を古典的な筆致で描いたことで大顰蹙をかったのである。
後の印象派の画家たちが彼らに学んだこととは、古典派の画家たちが共有していた
暗黙のルールを無視して描いてもいいという自由であり、よって印象派は作風が特定の
ものに定まらず多岐に広がっていったのである。
本展で個人的に気になった作品はマネの「オリエンタル風の衣装をまとった若い女
(Young Woman in Oriental Garb / Jeune Femme en Costume Oriental )」
(1871年頃)である。
顰蹙を覚悟で言うならば、これは公式に「ブス」が描かれた世界初の作品だと思う。