
わが大地に遅咲きの桜、八重桜の「松月」と桜とは思えないような「ウワミズザクラ」が満開となった。早咲きの「カンヒザクラ」と「河津桜」はすでに葉桜となったが、20日過ぎていよいよ遅咲きの桜が見事開花爛漫となった。
「松月」は、江戸時代以前からある品種で、荒川堤から全国に広まり、オオシマザクラを親とする優雅なサトザクラ。花の中心を見るとめしべ1~2本が葉化している。
似ている品種に、葉化が1本であるのが「イチヨウ」、2本なのが「フゲンゾウ」である。40年前近くか、高尾の「多摩森林科学園」の「サクラ保存林」に何回か訪問して1800本ほど植えてある桜の中で気に入ったのがこの「松月」だった。そのため、現在地への移住記念としてこの「松月」を購入して、現在植栽から15年を超えた。
ただし、桜の樹皮がシカが大好きで何度も食害にあっている。ここまで成長したのが奇跡でもある。また、挿し木で育てたものもあるが、いずれもシカの食害にあい、弱っているうえにカミキリムシに食われ、成長が危うい状態となっている。その意味で、なんとか満開となっていることに感謝している。ふっくらしている花といい、控えめなピンクの色合いといい日本的な様式を備えている。
いっぽう、裏山で以前発見した「ウワミズザクラ」が見事にブラシの花の満開を謳歌している。そのうえ、畑の隣に移植した若い「ウワミズザクラ」も数日遅れで満開となった。ソメイヨシノのような派手な演出はないが、ブラシ状の花と葉とのコラボが突然見えてくるのにいつも意外性を感じられる。
「ウワミズザクラ」の花の一つひとつは五弁の花とオシベが見られ、まさに桜の花であることに納得する。「ウワミズザクラ」は古代の宮中での卜占で使われていたことで有名だ。ただし、どのように利用されていたかの説明は微妙に違いがある。また、学者によっては、ほんとうは「リンボク」という似た樹木が本命で利用されていたが、入手が難しいので身近にあった「ウワミズザクラ」になったのではないかという論文もある。
畑の近くにある「ウワミズザクラ」がいつ咲くかが毎日気になっていたが、21日にいっせいに開花したのがわかった。なお、アイヌはこの樹皮をお茶代わりに飲んでいたようだし、実を果実酒にして飲んでいたのはヨーロッパや日本も共通しているようである。熟した実は食べられるというがまだ試してはいない。わが住まいからいろんな桜が見られる至福な時間・空間があることは、暮らしは貧しくとも「ありがた山の寒がらす」てーことになる。