山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

二つの『壬申の乱』を読む

2015-01-23 19:21:23 | 読書
 昨日は一日中雨だったので、こういうときは買い物に出かけるか、「雨読」することにするか、どちらかにすることにしている。
 最初に読んだのは、八木荘司『古代からの伝言・壬申の乱』(角川文庫、2007/2)という小説だった。
 天皇候補だった天智天皇の弟大海人皇子(オオアマノオウジ=天武天皇)が吉野に下野したにもかかわらず、大友皇子(=弘文天皇)らの近江朝政権を打ち破るという、古代最大のクーデターだ。
 数十人から決起した大海人皇子軍が現政権に勝利することが可能なのか、前々から大きな疑問だった。

                    
 二冊目は、松本清張『壬申の乱・清張通史5』(講談社文庫,1988.12)だった。
 たまたま入手した二冊だったが、視点が対照的だった。
 八木荘司は、『日本書紀』をベースにして、天武天皇の力量・魅力を中心とするサクセスストーリー。
 松本清張は、『日本書紀』を勝ち組による粉飾歪曲を前提に真実をついていく切れ味が魅力。

 古代は粛清の権力闘争だったことがわかる。
 天皇と二分した蘇我氏を殲滅することに成功した天智天皇は、たしかに猜疑心が強かったのだろう。
 大海人皇子はそれを知っていたので、吉野に逃れてすぐ蜂起準備を進めたのがわかった。

天武天皇即位で、天皇を中心とする中央集権体制が確立する。
 妻である持統天皇(天智天皇の次女)がそれを引継ぐが、異腹の大津皇子が「謀反」発覚で謀略死するなど、いやはや皇位継承は相変わらずのようだ。
 だから、「鎮魂」の寺院建築にも熱心だったんだ。

 歴史家の平板な見解よりも松本清張の推理のほうが説得力がある。
 それは清張文学にあるリアルな人間把握にあるように思えた。 
コメント
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