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50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

文学賞に、日本の影。

2007-11-10 05:11:06 | 映画・演劇・文学
今年の読書の秋、皆さんはどのような作品を読まれましたか。季節が秋から冬へと巡る11月上旬は、文学賞発表の季節でもあります。



11月5日、フランスで最も権威のある文学賞、ゴンクール賞(le Goncourt)とゴンクール賞の残念賞とも言われるルノドー賞(le Renaudot)が発表になりました。上の写真はその結果を伝える7日付(6日発売)のル・モンド紙です。

今年のゴンクール賞は、ジル・ルロワ(Gilles Leroy)の『アラバマ・ソング』(Alabama Song)が受賞しました。『華麗なるギャツビー』などでおなじみのアメリカの作家、スコット・フィッツジェラルドの夫人ゼルダの生涯を描いた作品です。

(7日付のフィガロ紙に掲載された広告)
総合失調症で入院中にその施設の火事で死亡したゼルダ夫人の自由と自らの欲するところを強烈に追及する強さを描いた作品だそうで、その文体、スタイルの素晴らしさが絶賛されています。

作者のジル・ルロワは、1958年生まれ。現代文学を専攻し修士号まで取得しましたが、大学に別れを告げ、世界を旅行しながら、アメリカ文学と日本文学に耽溺。多くの作品を読み漁ったようです。12作目の作品でゴンクール賞を受賞しましたが、それらの作品のどこかに、日本文学の影響が見て取れるかもしれませんね。これが、日本の影の一番目。まだまだ出てきますよ。

ゴンクール賞の結果を見てから選考され、同じ日に発表されることから、ゴンクール賞の残念賞とも言われるルノドー賞。しかし、フランス五大文学賞(他に選考委員が女性だけのフェミナ賞、主にデビュー作を対象としたメディシス賞、ジャーナリストの作品を対象としたアンテラリエ賞)の一つで、もちろん立派な文学賞です。

(9日付のフィガロ紙に掲載された広告)
今年受賞したのは、ダニエル・ペナック(Daniel Pennac)の“Chagrin d'ecole”(学校の苦悩)。リセ(高校)で国語(フランス語)の教師だった自らの体験を自伝風に書き上げた作品で、エッセー風小説とも言われているようです。作者のペナックは1944年生まれ。児童書から大人向けの作品まで幅広い作家活動を行なっていますが、日本では『人喰い鬼のお愉しみ』などで有名ですね。日本でも有名ということで、無理やり日本の影の仲間入りです。さて、次ぎに、本格的な日本の影が登場します。

ルノドー賞にはエッセー部門もあり、今年この賞を獲得したのは、オリヴィエ・ジェルマン=トマ(Olivier Germain-Thomas)の“Le Benares-Kyoto”(ベナレス・京都)。作者のジェルマン=トマ氏は日本とインドの文化に惹かれ、それぞれの国に長く滞在し、その文化に深い造詣があります。日本について語った作品は、以前、弊ブログでもご紹介しています(先人たちの知恵―15)。ルノドー賞を取った作品も、タイトルから推察するに、インドと日本についての慧眼をまとめたものと思われます。これは日本の影というよりは、日本そのものが俎上に乗っているような作品ですね。

そして、もう一作。1994年に創設された文学賞、フロール賞(Prix de Flore)。気鋭の若手作家の作品を対象にした賞で、サン・ジェルマン・デ・プレの有名なカフェ、カフェ・ド・フロールで授与式が行なわれることからフロール賞と名づけられたそうです。今年この賞を獲得したのは、アメリ・ノトンブ(Amelie Nothomb)の“Ni d'Eve ni d'Adam”(イヴでもなくアダムでもなく)。

(9日付のル・モンド紙に掲載された広告)
アメリ・ノトンブ女史が生まれたのは、神戸。父親が駐日ベルギー大使館に勤めていたため、子供時代を日本で過ごしました。その記憶が強烈に残っているそうで、その後、中国・アメリカ・ラオス・ミャンマー・バングラデッシュで暮らし、ベルギーで大学を卒業すると、再び日本へ。日本の会社で働き、いろいろと辛い経験もしたそうです。今回の受賞作も、舞台は東京。ヨーロッパ人女性と日本人青年との恋愛がストーリーの中心になっているそうです。

どうですか、受賞すると発行部数も一気に増えるといわれるフランスの有名な文学賞。その受賞作に、これだけ日本に関係した作家、作品が並んでいる。やはり、文化面では、日仏関係はいっそう緊密になっているといわざるを得ないような気がします。後は、如何にこれらの作品を、日本人が受容するかですね・・・せめて一作でも、原書で読んでみなくては・・・まずは、書店で厚さ等を見て読めそうな一冊を(情けない)買うことから始めてみることにしましょう・・・

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ゴミ削減週間。

2007-11-09 05:07:48 | 自然・環境・健康
全く知らなかったのですが、11日の日曜日まで、今週は「ゴミ削減週間」なんだそうです。特にゴミの分別とリサイクルに対する関心を高めることがテーマだそうです。



その内容を紹介している7日付のマタン・プリュス紙です。この記事によると、ゴミの分別・リサイクルは、周辺諸国と比べて特にフランスに改善の余地が多い分野なんだそうです。フランスでは家庭から出るゴミの僅か13%がリサイクルされているだけなのに対し、オーストリアでは59%、ベルギーのフランス語圏では70%近い数字だとか。

ではどうやったら改善できるのでしょうか。まずは分別回収の徹底から。



同じマタン・プリュ紙に紹介されているように、一般的にゴミは4種類に分別して出すようになっています。新聞やダンボールなどの紙類、瓶などのガラス製品、ペットボトルなどのプラスチック製品、そして生ゴミなどその他のゴミ。しかし、これらがきちんと守られていないために、ゴミ回収車が故障してしまったりすることが多いとか。また、分別回収に協力的でないのは、若い世代と都市部だそうです。一方、行政側にも問題があり、こうした分別回収がエリアによって異なっていることがリサイクルがうまく行かない理由の一つになっているそうです。確かに、私の住んでいる地域では、4種類ではなく、3種類の分別になっています。紙とプラスチックを同じゴミ箱に入れて良いことになっています。


(ゴミ箱を収納している倉庫にはこうしたパネルが貼ってあります)


(倉庫の入り口にも、3種類の分別方法が図示されています)

地域ごとに分別内容が異なっていては、回収した後で、どう仕分けし、リサイクルに回すのか、問題ですね。

次ぎに、製品を作るメーカー側にも改善の余地があるそうです。まずは、包装が多すぎる。ビニールの箱の中でさらにプラスチックのトレーに包まれているビスケットなど、確かに過剰包装かもしれないですね。それに最近ではスーパーで売られるきゅうりが1本ずつビニールに包装されているんですね。そこまでしなくても良さそうなものですが。そしてもう一つの問題は、紛らわしい表示。パッケージによる環境問題を解決する事業への分担金を支払った企業の製品にはパッケージに支払い済みのマーク(緑の矢)を印刷できるのですが、それは分担金を支払ったという表示で、そのパッケージがリサイクルできるという意味ではないのですが、緑色のマークだけにリサイクルできるパッケージだと誤解しているフランス人が半数以上いるそうです。そうした誤解を意図的に狙っている企業も多いのか、リサイクルできるパッケージかどうかを的確に表示することには反対が多いとか。



朝早くから、建物ごとに多くのゴミが出され、回収されていきます。フランスでは家庭から出るゴミは増え続け、今や年間一人当たり360kgになるそうで、ここ40年で倍増しているとか。しかし、なかなかリサイクルされないものも多いようで、例えばヨーグルトのパッケージや、ペットボトルを6本ごとにまとめておくビニールの包みなどは、リサイクルされずにいるそうです。しかしベルギーなどではこうした製品もリサイクルされ、また生ゴミや枯れた花なども別に回収され的確に処理されているとか。



ただ、上の写真にあるように、メトロ駅の改修工事現場にも、作業から出るゴミはきちんと分別して出しますというパネルがわざわざ出されているくらいですから、ゴミ分別や環境に対する一般的な関心はかなり高いのではないかと思われます。しかし、周辺の国々と比べると、まだまだだ、ということなのでしょう。リサイクルできるものは、極力リサイクルできるように。そのためには、一人ひとりが分別回収に協力をする。そして、それ以上に、余分なゴミを出さないような暮らしに変えていく。そのようなことが大切なのかもしれませんね。

ところで、日本では、ゴミの分別回収、パッケージを減らす企業の努力・・・こうしたことはしっかり進んでいるのでしょうか。

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時代は、木造家屋。

2007-11-08 04:58:41 | 自然・環境・健康
フランスは石造りの家、日本の家屋は木造建築・・・なんとなくそんなイメージがありますよね。もちろん、フランスにだってコロンバージュといわれる木骨組みの家屋もありますし、日本にもコンクリート打ちっぱなしの家などもあります。でも、やはり石の文化と木の文化。そうした伝統は生きているように思っていたのですが、今フランスでは、なんと木造の家に注目が集まっています!



7日付のマタン・プリュス紙です。10日まで行なわれている“BATIMAT”というタイトルの建築展示会を紹介する記事なのですが、特に注目されているのが木の家。写真奥に見える家がそれで、全て木で造られていて、屋根にはソーラーパネル。日本では時々見かけるような家屋ですが、フランスでは環境に優しい家として展示会の目玉になっているようです。写真手前にいる男性が設計を担当したEric Wuilmot氏で、家の延べ床面積は135㎡、価格は162,000ユーロ(約2,673万円)。どうでしょう、日本の家と比べて建築費は高いのでしょうか、安いのでしょうか・・・

「環境」は今、フランスでも関心の的。全て木で造られている、エネルギーは太陽熱・・・こうした家はいかにも環境に優しそうで、やはり注目されるのでしょうね。それにしても、木の家が注目の的になるとは、時代も変わったものです。昔は、日本の家イコール木と紙の家で、石の家に住む西洋人にとっては、貧しさのシンボル、未開のイメージだったようです。はっきりそう言った人もいたと記憶しています。それが、時代が木の家のほうへ歩み寄ってきた。



これは、チャンスです。日本は昔から自然と共生してきた。自然に優しい家を造り、そこに住んできた。環境への配慮には、西洋とは異なり、長い歴史がある。そう、言えるチャンスです。木と紙の家に住む貧しい人々、と言われていたのですから、ここは、日本の住文化は環境に優しい、と堂々と言ってしまいたいものです。もちろん実際には、気候風土の関係も大きかったのではと思うのですが、木の家を見下した物言いをした人たちには、今こそ、その良さをはっきりと言ってあげましょう。



もちろん西洋でも、木の文化のよさを認めていた人、あるいは、最近気付いた人もいるのでしょう、上の写真2点ともに世界地図がデザインに使われていますが、珍しく日本、東アジアがセンターに来ています。フランスで使われている地図では、一般的にヨーロッパ、あるいは大西洋を挟んでヨーロッパと北米が中心に来るのですが、この展示会のメインデザインになっている地図では、日本がセンターに。環境に優しい木の家は日本の伝統である事を知っている人たちが、このデザインでそのことに敬意を示しているのでしょうか・・・たんなる深読みで、そんなことはないのかもしれませんが、なんとなくそんな気もしてきてしまいます。

なお、会場の木の家の写真を撮ってお見せしたかったのですが、入場料がなんと50ユーロ。8,000円以上ですから、出展企業数は多いとは言うものの、木の家一つ撮るためにはちょっと・・・会場入り口まで行ったものの、さすがに諦めてしまいました。出展している建築業界の社員と思しき多くのサラリーマンが入場していきました。言うまでもなくチケットは事前に会社からもらっていたようで、会場でチケットを買って入っている人はほとんど見かけませんでした。何しろ、通常の展示会の入場料が12ユーロ前後のところ、今回は50ユーロですから。

見下されていた木の家が、今や環境に優しい家として脚光を浴びる・・・時代が日本の伝統・文化に近づいてきたようです。環境問題では、ぜひ、世界に範を垂れるとともに、その取組みをリードしていきたいものですね。存在感を立派に示せるチャンスが巡ってきているようです。

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戻ってみれば、内向きのヨーロッパ。

2007-11-07 05:13:36 | パリ
(8日再開の予定でしたが、善は急げ(?)、一日早く再開してしまいました。)

6日の便で、パリに戻ってきました。パリは日本人の間で相変わらず人気があるようで、機内は混んでいました。しかし、出迎えてくれたパリは、以前とちょっと変わっていました。どう変わっていたかというと・・・



2週間も離れていれば、季節も巡り、木々の姿も変わって当然。すっかり紅葉、冬木立も見えるようになっています。しかし、出迎えてくれたのは、こうした時の美しい移ろいだけではありませんでした―――。

まずは、パスポート・コントロール。以前は、係員同士おしゃべりしていて、ほとんどチェックもせずに返してくれたのに、今回は、厳重にチェック。フランスで何をやっているのか、家族はどこにいるんだ・・・しっかり質問して来ました。滞在許可証を見せて、一件落着でしたが、仕事をする入国検査官に私はフランスではじめて出会いました。しかも、左右を見れば、どの係員も、程度の差こそあれ、きちんとパスポートをチェックしていました。ずいぶん変わったものです。

お次は、税関(手荷物検査)。ここも、単に素通りすればよかったのですが、今回は、しっかり仕事をしていました。一人旅の旅行者が狙われるようですが、パスポートを提示させ、持ち物が何なのか、聞いてきます。運が悪いと、カバンを開けさせられ、チェックされる人も。私は、人相が悪いのか見事に呼び止められ、どこに住んでいるんだ、日本から何を持って来た・・・いくつか質問されましたが、ここでも滞在許可証を見せると、カバンを開けろとまでは言われずに済みました。隣のテーブルでは、なんと西洋人の女性がカバンを開けさせられていました。いつの間に、こんなによく働くようになったのでしょう・・・

不法滞在の外国人は国外退去・・・根拠がないとマスコミに批判されながらも、サルコジ大統領によって下達された国外退去者の目標数字を達成すべく、関係機関が力を入れているとは聞いていましたが、入国の際のチェックも厳重になったようです。水際でも防ごうということなのでしょう。

しかも、こうした動き、何もフランスだけで見られるのではなく、他のEU諸国でも見られるようです。



機内でもらった4-5日付のル・モンド紙です。その第一面。イタリア政府は数千人のルーマニア人を国外退去に。イタリア人女性が殺された事件があったのですが、その犯人が多くのルーマニア人が不法に住み着いているエリアにいたらしいということから、そのエリアの住人が国外退去に。殺人事件が、いい口実になったのでしょうね。東欧からの移民がいないと成り立たない職場もあるようですが、増えすぎて目障りだ、と思っている人たちも多いのかもしれません。

以前にもまして外国人に厳しい目を向けている西欧。どうも、世界が内向きに、排他的になってきているような気がしてなりません。こうした趨勢がちょっと度を超すと、また、いつか来た道へ・・・不幸が待っているようで、パリに戻ったとたん、思わず心配になってしまいました。杞憂で終わることを祈っています。

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貧困撲滅デー。

2007-11-04 17:38:59 | パリ
(ときどき更新の④です)

3週間近くも前の事ですが、10月17日は「貧困撲滅のための国際デー」でした。日本では何か行事が行われたでしょうか。パリではしっかりした取り組みが行われていました。


(事前にこうした大型ポスターでPRも行われていました)

今年はこの貧困撲滅運動の20周年。1987年10月17日にパリ・トロカデロにある人権プラザにて、ATD Fourth WorldというNGOの創設者ヨゼフ・レシンスキ氏(Joseph Wresinski)をはじめ世界各国から集まった10万人の人々が、貧困撲滅に取り組む決意を表す記念碑の除幕式を行いました。その日から20年という事で、同じトロカデロでさまざまなイベントが行われました。



貧困にあえぐ人々の現状を紹介する写真、著名人のメッセージ、貧困や差別など社会問題に対する子供たちの絵によるメッセージ・・・

そうした展示のほか、多くのシンポジウムが行われ、

(取材に多くのメディアが来ていました)
アトリエでは、染色など貧困から抜け出すための支援方法も紹介されていました。

また、貧困撲滅のメッセージを歌に託したグループのミニ・コンサートや、詩の朗読、ダンス、劇なども行われました。


SDFと呼ばれる路上生活者や、アフリカ、アジア、東欧などからの貧しい移民、不法滞在者などが社会問題になっているからでしょうか、フランスでは「貧困」に対する関心が高いようです。この日も、お揃いのTシャツを着た多くのボランティアの若者たちがイベントを手伝っていました。その中の一人、Regisという青年からたまたま話を聞くことができました。貧困問題を中心にいかに弱者救済に取り組んでいるかを熱く語ってくれたRegis君曰くは、日本では貧困撲滅の運動はあまり活発ではないようだが、社会的弱者も増えていると聞いている。そしてそれ以上に、世界に眼を広げれば、多くの弱者が貧困にあえいでいる。より積極的な参加ができないものだろうか・・・。

確かに、そうですね。世界に貢献する日本、という言葉は頻繁にメディアに登場するのですが、実際どう貢献しているのか、いまいち不透明ですし・・・


会場では、この様な貧困撲滅新聞といったフリーペーパーも配られていました。数ヶ国語で書かれたこの日の運動を説明するチラシの中には日本語のものもありました。

国連は15年前にこの日を「貧困撲滅のための国際デー」と認定しています。今年も、すべての子供たちが初等教育を終えられる世界・人々が安全な飲み水を手にできる世界・温室効果ガスの排出量を削減できる世界・・・こうしたミレニアム開発目標の実現へ向けてのいっそう積極的な参加を呼びかける潘国連事務総長のメッセージが紹介されていました。貧困の中で悲惨な生活を強いられている子供たちは、まだまだ多いようです。


フランス政府も、17日の「貧困撲滅のための国際デー」を前に、サルコジ大統領が貧困撲滅に取り組む団体の代表者たちと会談しました。出席者たちは、会ってくれたのはいいことだが、どこまで理解してくれたのか・・・という感想を述べているようです。ル・モンド紙も結果重視のサルコジ大統領の姿勢に引っ掛けて、同情や共感よりも結果がほしいと述べる困窮者を漫画に描いています。

17日のトロカデロでのイベントには、2万人が参加したとか。弱者救済へ向けるまなざし、フランスではしっかり根付いているようです。

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アートの世界にも、新興国。

2007-11-01 17:40:07 | 美術・音楽
(ときどき更新の③です)

政治・経済の分野では、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)のように、新たに成長を遂げ、先進国の仲間入りをしようとする国々がありますが、同じようにアートの世界にも新興国があるようです。



その辺の事情を紹介してくれている9月30日-10月1日付のル・モンド紙です(ずいぶん古い資料で恐縮です)。「アート~東洋から起こってきたヌーヴェル・ヴァーグ」・・・アートの世界にも、新しい波が押し寄せてきているという見出しです。

今、アートの世界で注目されているのが、BRICsと重なる中国、インド、そしてイランなど。経済が成長し、何かと注目されるようになると、アートなど文化面でも脚光を浴びるようです。逆にいうと、政治・経済である程度の存在感を示さないと、その国の芸術は注目されない・・・そんなものかもしれないですね。国力が上がらないと、文化も大きくは注目されない・・・

「歴史の周辺部に辛うじて生息している我々ラテンアメリカの住民は、西洋人にとっては宴のライトが消されようとする頃にやってきた場違いな訪問者に過ぎない」と1989年に言った作家のオクタヴィオ・パスの言葉が途上国の文化状況を的確に言い表している。インターナショナルとは、文化も含め、ヨーロッパとアメリカ合衆国との間のやりとりに過ぎない。従って、アーティストが世界から注目されようとするなら、ロンドン、パリ、ニューヨークのいずれかに住んで創作活動をしない限り、注目されることはない―――。

少し前までは、こうした状況だったようです。しかし、今日では、新しい傾向が生まれているそうです。どんな傾向かというと、ヴェニス・ビエンナーレをはじめ多くのコンクールなどで周辺諸国の作品が注目を集め、そうした作品を集めたオークションも行なわれるようになってきている。もはやアーティストは欧米に行かなくても、その価値ありと認められれば、キュレーターのほうから訪問するようになってきている・・・ずいぶんな様変わりのようですね。

こうした傾向を反映して、パリでも新興国のアート作品を集めた、アート見本市が行なわれています。例えば、Hotel Dassault(ダッソー館)。10月1日に行なわれたオークションでは、中国、インド、イランなどのアーティストの作品が中心だったそうです。


(競売の行なわれたHotel Dassault、外見どおりで、受付の男性からしてスノッブを絵に描いたようなところです)

フランス人には、中国文化への憧れがある。1930年代の上海租界がその夢をいっそう掻きたてている。寿司、柔道、着物など日本的なものならなんでも脚光を浴びた15年ほど前の日本ブームのように、これからは中国ブームになるのではとも言われているようです。

イランについては、ヴェールの下に隠されたイスラム社会、特に女性たちがどのような暮らしをして、何を考えているのか・・・そのような関心にこたえてくれるような写真が特に受け入れられているそうです。紙面に紹介されている写真は、ソーダの小瓶とラジオがなかったなら、そのセピア色の色調から19世紀くらいの写真に見えてしまうかもしれない作品。5,000ユーロ(約82万円)くらいの値がついているそうです。

インドの作品への関心は、多くの国で見られ、9月初旬に上海で行なわれた美術見本市では、インド人作家の作品が中国人作家のもの以上の人気を集めていたとか。パリでも、関心の的になりつつあるようです。

ところで、アートの世界での新興国の作品を集めたオークション。やはりクリスティやサザビーが行なっているようですが、開催場所は、ニューヨークとドバイ。ニューヨークはともかく、ドバイ。何かと注目されるUAE(アラブ首長国連邦)です。アブダビにはルーヴル別館ができたり、美術・学術分野でもその注目はすごい! やはり、オイル・マネー。「お金のあるところに、美術品は集まる。それも、西回りで」と言われているように、ヨーロッパからアメリカへ、そして、日本へ。今やドバイ。しかし、芸術作品が注目されている中国、インドへ、ちょっと逆回りになりますが、世界の作品が集まり始めるのも、そう先ではないのかもしれないですね。アートとお金の関係・・・アート作品を個人所有する気持ち資金もない私は、せめて美術館に足繁く通おうと思っています(やせ我慢・・・)。

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