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【レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー(2009)】

2012年09月19日 | 映画



とってもめずらしいアイスランドホラー。裕木奈江さんとガンナー・ハンセン目当てに鑑賞。

世界的な反捕鯨運動のせいでクジラを捕れなくなったアイスランドの町で、ホエール・ウォッチングに来た観光客をガイキチ漁師一家が血祭りに上げていくというお話。『○○マサカー』という題名や、ガンナー・ハンセン(レザーフェイスの中の人)が出演している点からもよくある『悪魔のいけにえ』リスペクト映画です。アイスランド初の本格スプラッタホラーとの触れ込みからB級どころか大変なC級映画を期待していたのですが、思いのほか普通のホラーに仕上がっていました。

作品冒頭、捕鯨の様子や鯨の解体映像などが記録フィルムで入れ込まれ、結構マジな反捕鯨反対映画かと思いましたが、期待通り全くそんなことはなくw、普通にホラーホラーしています。ただしこの映画が他の作品と違うのは、誰にも感情移入できないようにわざと仕向けられていることでしょうか。通常ホラーの定石としては、餌食となる方々の中で最後に残るサバイバーガール(ボーイもあり)に観客を感情移入させ、その恐怖と逃げ切った時のカタルシスを味合わせるというのが普通なのですが、この『レイキャヴィク』では観光客がどいつもこいつも嫌なヤツに描かれており、全く誰にも生き残って欲しくないと思わされますw。さらに襲ってくるガイキチ一家がかなり弱く結構簡単にやられてしまうという体たらくです。

なぜ本作がこんな作りになっているのかいろいろ考えてみたのですが、これは捕鯨反対派、推進派両方の気持ちを汲み取った結果ではないか、と。

反捕鯨派から見ると、「捕鯨なんてしている連中(アイスランドのガイキチ一家)はガサツで野蛮だ、やられてしまえ!」というように感じ、捕鯨推進派から見ると「我々の天職を奪った上にホエール・ウォッチングなんかに来る平和ボケの外国人(観光客)なんかやられてしまえ!」というように、両方へアピールするように作ってみたのですが結果どっちつかずなものに仕上がったのではないか。そういう意味ではこれはブラックコメディなのだと方向転換して見ればなかなか面白く感じてきました。

アイスランド人から見ると、ドイツ人もフランス人もアメリカ人も日本人もあんな風に見えているのでしょうかね。唯一まともである黒人さんが○○であるというのもかなりの皮肉が効いています。他人を蹴落としてのうのうの生き残るのが日本人だってのも複雑なものがありますが、これも同じ捕鯨国へのエールとして捉えておきましょう。

切り株描写やゴア描写もありますがそこそこのレベルですので、まあアイスランドとしてはこれで精一杯なのでしょう。見所は日本人のオッチャンが捕鯨銛でズドンされるところ。夕日の中で吊るされたオッチャンの画はなかなかのものです。

奈江さんは無表情な役で『ホワイト・オン・ライス』のような熟女さ加減は見られず残念でしたが、そもそも彼女が現役女優として見られることに過去のファンとしては大いに感謝です。


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