明るいときに見えないものが暗闇では見える。

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【カールじいさんの空飛ぶ家】 UP!

2010年03月03日 | 映画
【ネタバレあり】

鑑賞からそろそろ3ヶ月経ってしまい、おじいさんが風船で忘却の彼方に飛んで行ってしまいそうなので思うところだけ書き留めておこうと思います。

みなさんはTVで流れるあの切ないCMを観ましたか?「この家で妻と出会い……ある日ひとりぼっちになった」ってヤツ。もうこれだけで涙腺ウルウルのヤツっすよ。「おお今回のピクサーはいつもと違うね。大人向けのやさしいおじいさんの傷心思い出旅かな。」なんて思って観たら、実は偏屈ジジイの改心大活劇でビックリ。

これ妻に先立たれて誰にも心を開けなくなったジイさんが"死に場所を探す旅"なんです。二人で行きたかった"幻の滝"で、ジイさん最期を迎えようって算段なの。開発の進む中、ポツン残された家だけが妻との絆。じゃあ風船屋だった自分はこの家もろとも飛んでってやる!で滝にはたどり着くんですが、風船がほとんど割れてかろうじて浮かぶ家をヒモで引っ張る様なんて完全に棺桶を引っ張ってる状態。うへぇこれでピクサーアニメかよ。この話どこへ落ちていくのやらと心配になりました。

ところがドッコイやっぱりピクサーなんで物語はポジティブに大豹変!ひょんなことで道連れになったラッセル少年と丁々発止の大冒険活劇へと突入。すると生きる希望を失っていたジイさんが変わってきます。ジイさん子供を授からなかったこともあり少年がかけがえのない存在へと変わっていくんです。また少年自身も親の愛情に恵まれなかった様子で二人は強い絆で結ばれていきます。ジイさん最初は妻との思い出に浸って死ににいくところなんで、とにかく少年が鬱陶しく遠ざけたい。またラッセルくんが如何にも子供らしく文字通り鬱陶しいw。そんな掛け合い漫才の中、様々な危機に陥り、お互いがお互いを助け合い、良さをかいま見せながら心を開いていく。そして家よりも少年を選ぶシーン。ジイさんの表情の変わり方といったら。このへんの描き方がほんとニクイです。背骨の伸び具合もニクイですw。やっぱ人ってのは愛し愛され必要とされてこそ生きる歓びがあるのだのぉと改めて思った次第。

空とカラフルな風船とのコントラストや幻の滝の情景などCGはさすがはピクサーと感心すること然りです。3Dで観ればよかった。

ところがこの映画、残念なのは最初の10分のクダリがあまりにも良く出来過ぎていること。始まって10分間で例のCMの部分がプロローグとして流れるのですが、セリフもなく音楽と映像だけで綴っていくんです。愛する妻との出会い、平凡ながらつつましく幸せな二人、そして妻の死。ジイさんが一人になった時、もう劇場みんながすすり泣き状態。既に今年一番の大感動作を観たほどの味わい。そのためこのプロローグだけで大満足過ぎてその後の本編が残念ながらそれを超えてないかも…。まあとってもいい映画なんです。ええとても心温まるステキなお話。でも最初に大感動して泣いちゃった分、最後は小感動で微笑ましいって感じ。ボクと同じ感想を持った人は多かったのではないかしら。


評価:★★★★☆

原題は『UP!』と言うらしい。
邦題はあきらかにジブリ意識してますよね。『ハウルの…』とか。


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