ホームズシリーズ読書第四弾は、「シャーロック・ホームズ全集4・シャーロック・
ホームズの思い出/アーサー・コナン・ドイル著」です。全集3のシャーロック・
ホームズの冒険と同じような構成で、短編が12編収録されています。
まず驚くのが、巻末に収められた『最後の事件』ですかね。一連の物語の締めくくりに
ホームズが死ぬらしいという知識は何となく持ち合わせていて、しかし何の前触れも
なく唐突に終章が訪れるので、かなり違和感を感じるのは確かです。解説によると、
推理小説を早めに切り上げて、本来書きたかった歴史小説へ転換するべく、ドイルは
ホームズを早々に葬り去りたかったようなのですが、ホームズファンである実母メアリ
がそれを許さず、仕方なく存続させた経緯があるらしく、今度こそ終わらせた時には、
さぞや清々したことでしょう。
姦通した母への恨みは消えるわけでなく、シリーズ中多数登場する「メアリ」と
いう名の女性は悪女の役割を与えられ、ホームズを死に至らしめる宿命のライバル・
モリアーティ(Moriarty)教授のつづりの中にメアリ(Mary)が含まれるなど、
意趣返しは変わらず徹底していて、ドイルの執念深いまでの恨みつらみが見え隠れ
するホームズものは、内情を知ると、けっこうドロドロの内輪もめなお話ばかり
なので興味が尽きません。
早く終わらせたいドイルの心持ちを反映させられたホームズは、前作~冒険の
いきいきした活躍と比べると全般覇気がないようにも映りますが、そこはかとなく
全般重い空気が漂う~思い出を、私は気に入って読み進めましたよ。
さて、次作はどうなるのか? ホームズの死でいったん幕を下ろしてしまった物語を、
「実はホームズは生きていた!」みたいにしらじらしく復活させ存続させたのか、
それとも、過去にはこんなすごいエピソードがありました的なワトスンの昔語りが
繰り広げられるのか? 今からとても楽しみにしているのです。