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著者:高木由臣 毎日新聞 2009年3月1日 東京朝刊 価格:1,019
評者:海部宣男
サブタイトル:なぜ生物は死すべき運命を背負ったか
※ この書評の原文は、こちらで読めます。
永遠の命を求めて…。
その昔、鉄郎はメーテルと共に、銀河鉄道に乗って旅をした。
その世界では、生身のままでは不死の夢は実現できず、機械の体を
手に入れたものだけがミレニアム(百年王国)を満喫していた。
同じ松本零士の作品「ミライザーバン」では、人為的な施術により、
これまでの血族の記憶を永遠に継承された少年が主人公となっていた。
梶尾真治の「おもいでエマノン」では、地球に生命が誕生して爾来、
全ての記憶を保持し続ける少女が主人公だった。
#SFアドベンチャーに初出したのは、1979年。
そうか、もうそんなに昔になるのか…。
そういえば、高橋留美子「人魚」シリーズでは、人魚の肉を食べて
不死となった主人公が描かれていた…。
人は、どうして永遠の命や若さを夢想するのだろう?
多くの作品で、不死こそが人間にとって最大の恐怖、と語られ
続けているにも関わらず。
人は、目前に迫った生命の脅威に対して、何とか抗おうとするし、
その気持が嵩じて不死を夢見る。
自らの存在が、この世から消えてしまうことへの恐れ。
自分がいなくとも、世界は何事も無く回り続ける、ということ。
それは、自分という存在が、世界の有り様に対して何ほどの影響も
与えるものではない、という認知を持つこと。
#と言いながら、実は自分が死ねば、その瞬間に世界は消滅する、
という天動説な夢想も、一方で僕の中に存在するのだが。
では、自分の痕跡を残すことが出来れば、人は満足して死ねるのか?
結局、人は自分のDNAを残すという生物学的な欲求と同じく、
自分の思想や行動のDNAも残したい、そう考えているからこそ、
それらが残せていない状況では死を畏怖するのか?
…という、実に文系的な思いとは全く異なり、純粋に細胞学的な
見地から、生物の寿命というものを捉えたのが本書である(笑)。
そもそも、どうして生物は死んでしまうのだろう?
細胞の劣化コピーが嵩じて、という話もわからないではないが、
それでも樹木(先日、樹齢1500年という桜の木がTVで紹介
されていた)や、動物でもゾウガメのように100年を超えて生き
続けるものも存在するのだ。
竹やぶの竹を一本切ったら、その竹にとっての寿命は終わりなのか?
それとも、地下茎で繋がっている竹やぶがある限り、一本の死は
単なる細胞の死でしかないのか?
サンゴにも、同じことがいえる。
バラノドンにも(笑)。
そうした命の有り様を、純粋に細胞の群体として捉え、その寿命とは
何かを研究してきた著者の現時点での結実が本書だ、と評者はまとめる。
生命という仕組みが、如何に巧妙に考えされつくしたものなのか。
決して簡単に読解できるものではない、との評者のコメントに文系脳と
しては恐れを感じつつ、読みたいリストに計上しておくこととする。
その上でなお(というか、必然的に)。
模索する。
自分自身の生きる意味を。
『人は生まれ、人は死ぬ。天に軌道があれば、人には運命がある。
炎に追われ、閃光に導かれ、辿りゆく果ては何処。
だが、この命、求めるべきは何。目指すべきは何。打つべきは何。
そして、我は何。』
by 高橋良輔
(この稿、了)
評者:海部宣男
サブタイトル:なぜ生物は死すべき運命を背負ったか
※ この書評の原文は、こちらで読めます。
永遠の命を求めて…。
その昔、鉄郎はメーテルと共に、銀河鉄道に乗って旅をした。
その世界では、生身のままでは不死の夢は実現できず、機械の体を
手に入れたものだけがミレニアム(百年王国)を満喫していた。
同じ松本零士の作品「ミライザーバン」では、人為的な施術により、
これまでの血族の記憶を永遠に継承された少年が主人公となっていた。
梶尾真治の「おもいでエマノン」では、地球に生命が誕生して爾来、
全ての記憶を保持し続ける少女が主人公だった。
#SFアドベンチャーに初出したのは、1979年。
そうか、もうそんなに昔になるのか…。
そういえば、高橋留美子「人魚」シリーズでは、人魚の肉を食べて
不死となった主人公が描かれていた…。
人は、どうして永遠の命や若さを夢想するのだろう?
多くの作品で、不死こそが人間にとって最大の恐怖、と語られ
続けているにも関わらず。
人は、目前に迫った生命の脅威に対して、何とか抗おうとするし、
その気持が嵩じて不死を夢見る。
自らの存在が、この世から消えてしまうことへの恐れ。
自分がいなくとも、世界は何事も無く回り続ける、ということ。
それは、自分という存在が、世界の有り様に対して何ほどの影響も
与えるものではない、という認知を持つこと。
#と言いながら、実は自分が死ねば、その瞬間に世界は消滅する、
という天動説な夢想も、一方で僕の中に存在するのだが。
では、自分の痕跡を残すことが出来れば、人は満足して死ねるのか?
結局、人は自分のDNAを残すという生物学的な欲求と同じく、
自分の思想や行動のDNAも残したい、そう考えているからこそ、
それらが残せていない状況では死を畏怖するのか?
…という、実に文系的な思いとは全く異なり、純粋に細胞学的な
見地から、生物の寿命というものを捉えたのが本書である(笑)。
そもそも、どうして生物は死んでしまうのだろう?
細胞の劣化コピーが嵩じて、という話もわからないではないが、
それでも樹木(先日、樹齢1500年という桜の木がTVで紹介
されていた)や、動物でもゾウガメのように100年を超えて生き
続けるものも存在するのだ。
竹やぶの竹を一本切ったら、その竹にとっての寿命は終わりなのか?
それとも、地下茎で繋がっている竹やぶがある限り、一本の死は
単なる細胞の死でしかないのか?
サンゴにも、同じことがいえる。
バラノドンにも(笑)。
そうした命の有り様を、純粋に細胞の群体として捉え、その寿命とは
何かを研究してきた著者の現時点での結実が本書だ、と評者はまとめる。
生命という仕組みが、如何に巧妙に考えされつくしたものなのか。
決して簡単に読解できるものではない、との評者のコメントに文系脳と
しては恐れを感じつつ、読みたいリストに計上しておくこととする。
その上でなお(というか、必然的に)。
模索する。
自分自身の生きる意味を。
『人は生まれ、人は死ぬ。天に軌道があれば、人には運命がある。
炎に追われ、閃光に導かれ、辿りゆく果ては何処。
だが、この命、求めるべきは何。目指すべきは何。打つべきは何。
そして、我は何。』
by 高橋良輔
(この稿、了)
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