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もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら

2010-02-22 23:59:58 | 活字の海(書評の書評編)
著者:岩崎夏海 ダイヤモンド社刊 1680円
書評:速水建朗(フリーライター)
2010年2月21日(日) 朝日新聞朝刊 11面読書欄より


うん。
タイトルは、上手い。

人の。
目を惹きつける、力を有している。

これが、リアルな書店であるならば。
思わず手にとって。
ページを開いてみたくなるというものだ。

多少、その表紙に気恥ずかしさを感じたとしても、だ(笑)。



高校野球の女子マネージャーと、ドラッガー。

意外性のある二つを組み合わせることは、物語作りの王道。

例えば、こうしたスタイルの小説なら。

「女子高生ちえの社長日記―これが、カイシャ!? 」著:甲斐莊 正晃
辺りが有名だろう。


上手く小説と経営理論をフュージョンさせたものといえば。


僕ならば。
「THE GOLE」に代表されるエリヤフ・ゴールドラットの一連の
シリーズ辺りを連想してしまう。

この人の、一連のシリーズは。
どれも、結構好きなんだけれど。

ちょうど、システム開発に関する仕事をしていた頃に出会ったので、

「クリティカル・チェーン
       -なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか? 」

などは、本当に身につまされる思いで読んだことを思い出す。


その後。
理論書と小説との融合の垣根は、どんどん低くなってきて。


硬軟取り混ぜた、様々な書籍が世に現出しだしたのだけれど。


でも、まさか。

女子高校生とドラッガーとは。

こいつぁ、一本取られた!といったところである。



「マネジメント」を行う人が、「マネージャー」である。

そして。
本来、管理者を表わす「マネージャー」と言う言葉の。
そのどれ程の重みを持って、人は高校野球の「マネージャー」という
言葉を用いているだろうか。

勿論、色んなケースがあるだろうが。
普通、高校野球における「マネージャー」は。
管理者ではなく、サポート役が主意となるだろう。


まして。
その「マネージャー」が、ドラッガーに何を学ぼうとするのか。



書評子に拠れば。

本書は、極めて真面目に。
ドラッガーを「イノベーション」して、読者の前に再提示しようとして
いるかに見える。


しかも。
何度も書くが。
それを具現化しようと悩み、努力し、奮戦しているのが。
高校野球の女子マネージャーなのだから。

目の付け所がシャープ!なのだ。


ただ。
惜しむらくは、本書の文章である。

表紙は、まだいい。
この表紙だから買えないor買わないというほどのことはない。

問題は…。
文章力、である。

AMAZONでは。
本書の冒頭数ページを立ち読み(ネット読み?)出来る。

それを読んでみると、よく分かっていただけると思うが。


いまひとつ、キャラが立ってこないのである。

まず組み合わせの妙を思いつき。
それに合わせて構築した世界観が、しっくりと馴染んでいない。

そんな印象を受けてしまう。


勿論。
この数ページで判断することは酷かも知れない。

それでも。
物語の導入部分は、普通もっとも作者が力を注ぐ部分であり。
ここで読者の気持を惹きつけられなければ、作品世界にぐいと引っ張り
込むことは不可能だろう。

AMAZONも、それを期待して。
こうした”なか見!検索”という機能を設けているのだろうから。

そこで、読み手が躊躇してしまうのであれば。
導入部分としては、失敗だったということになるのだ。


面白い設定だっただけに、非常にそこが残念である。

とはいえ。
本書は、既に6刷13万部も売れているというのだから。

勝てば官軍!なのであるが…。


(この稿、了)



(付記)
本稿の中では、結構絶賛したゴールドラットのシリーズであるが。

読んでいるときは、とても面白いのだけれど。
読後、なぜかあまり自分の中に堆積されない。

直接間接を問わず。本書で得た気付きや学びが活かされている。
そう感じることがなかなか出来ないのだ。

無論、それは僕自身の読解力や吸収力に問題があるのだろうけれど。

自分に合ったビジネス書を見つけるということは。
自分自身の導師を見つけるにも等しいことなのだから。

相性というものも、また。
大きな要素、ということなのだろう。

そうした意味では。
僕にとっては以前紹介した佐々木常夫氏の書物が、最近では一番
しっくりきているのであるが。
#とはいえ。実践が難しいのは言うまでもない(笑)。






もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
岩崎 夏海
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女子高生ちえの社長日記―これが、カイシャ!?
甲斐莊 正晃
プレジデント社

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ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
エリヤフ ゴールドラット
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部下を定時に帰す仕事術 ~「最短距離」で「成果」を出すリーダーの知恵~
佐々木 常夫
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2 コメント

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Unknown (シャドー81)
2010-02-24 06:31:34
さすがですね。
これ読もうと思っていたのですが、先を越されました。
そうですか、いまいちですか・・・
BOOKOFFで見つけたら買うことにしようかなぁ。
返信する
Unknown (MOLTA)
2010-03-08 01:46:21
それで十分では?
とは、あくまで僕の所感ですが。

コラムでも書いたように、AMAZONでは少し冒頭部分を読むことが出来るので、それで判断されてもよいかと思います。

あの数ページを耐えられたなら、OKということで。

ほんと、着眼点は面白いんだけどなぁ。
返信する

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