折からの強風に逆らわず、立葵は、右に左に大きく揺れている。例の雷門近くの二本だけの立葵である。
この立葵は桃色であるが、他に白・紅・紫などの色があり、美しい花を下から咲かせてゆく。
梅雨入りに咲きはじめ、頂上まで咲きのぼると梅雨が明ける、といわれている。
まだ五つ六つ蕾があるので、梅雨明けはまだまだ先のことであろう。
福原百之助の「笛」をiPodで聴きながら、墨堤を歩く。福原百之助は、現在の人間国宝・寶 山左衛門師の若き頃のお名前である。したがって、いまから20数年前の録音を聴いているわけだ。
「月~花見おどり~京の夜」、「竹の踊~竹のうた」、「山桜の歌」、「飛天」などを聴く。すべて福原師の作曲によるものだが、最も胸にひびいたのは「京の夜」。
「京の夜」は、昭和45年の、変人の大嫌いなNHKの大河ドラマの挿入曲として作曲されたもので、伊達藩家老・原田甲斐が思案にふけりながら、ひとり、京の宿で笛を吹く場面を想定したものという。
原田甲斐が、激情をぐっと押さえて吹く笛……、京の夜が静かに更けてゆくさまが、実によく表現されている。
先日の篠笛教室で、「竹のうた」の譜面をいただき、いま練習中であるが、一日も早く「京の夜」を吹いてみたい。楽しみがまた一つできた。
毎日、笛を“拭いて”いるが、今後は毎日、笛を“吹く”ことにしよう。
江東区・木場公園内の「東京都現代美術館」に着く。
武田州左先生からいただいた招待券で、「新収蔵作品展」と「特別公開:岡本太郎《明日の神話》」を観る。
「新収蔵作品展」は、昨年度新たに収蔵した「賛美小舎」上田コレクションの紹介である。
「賛美小舎」上田コレクションは、長年、教鞭をとっておられた上田國昭・克子ご夫妻が、およそ20年にわたり収集した現代美術作品のコレクションである。
今回は、ご夫妻から寄贈を受けた49点の、特別展示ということだ。
「賛美小舎」には、自らが美しいと信じるものを大切に守り育てるため、一つひとつの作品を収集してきたご夫妻の理念も込められているという。
ご夫妻の収集の目的には、単に作品を購入するというだけではなく、若い作家の活動を賞賛し、支援しようとする思いも込められているそうだ。
さらにスゴイのは、美術館に寄贈する目的で収集されていることだ。
美術館に寄贈することが、自らのコレクションを後の世代に伝える方途のひとつであると考え、作品が公開される機会をつくることが、支援してきた作家たちの今後の制作への励みになって欲しいと、ご夫妻は願っているとのこと。
上田氏が、明確に現代美術の収集へと焦点を定めた出発点となった作品は、川崎麻児《Untitled》(1987年)だという。
若々しい感性で、日本画に新風を吹き込む作家たちが、上田コレクションの中核となっている。
川崎麻児をはじめ、河嶋淳司、岡村桂三郎、斉藤典彦、尾長良範、武田州左、日高理恵子、間島秀徳、山本直彰、マコトフジムラといった作家は、上田コレクションとして収集されたというだけではなく、1980年代半ば以降、広く注目を集めた作家たちだ。
岩絵具という日本画の素材を用いながら、己の感性や自らが生きる時代の息吹を直接画面に表現する手法は、日本画という一つのジャンルにとどまらず、新たな絵画の動向として認められていくことになる。
はにかみ王子 十薬の月夜かな 季 己
この立葵は桃色であるが、他に白・紅・紫などの色があり、美しい花を下から咲かせてゆく。
梅雨入りに咲きはじめ、頂上まで咲きのぼると梅雨が明ける、といわれている。
まだ五つ六つ蕾があるので、梅雨明けはまだまだ先のことであろう。
福原百之助の「笛」をiPodで聴きながら、墨堤を歩く。福原百之助は、現在の人間国宝・寶 山左衛門師の若き頃のお名前である。したがって、いまから20数年前の録音を聴いているわけだ。
「月~花見おどり~京の夜」、「竹の踊~竹のうた」、「山桜の歌」、「飛天」などを聴く。すべて福原師の作曲によるものだが、最も胸にひびいたのは「京の夜」。
「京の夜」は、昭和45年の、変人の大嫌いなNHKの大河ドラマの挿入曲として作曲されたもので、伊達藩家老・原田甲斐が思案にふけりながら、ひとり、京の宿で笛を吹く場面を想定したものという。
原田甲斐が、激情をぐっと押さえて吹く笛……、京の夜が静かに更けてゆくさまが、実によく表現されている。
先日の篠笛教室で、「竹のうた」の譜面をいただき、いま練習中であるが、一日も早く「京の夜」を吹いてみたい。楽しみがまた一つできた。
毎日、笛を“拭いて”いるが、今後は毎日、笛を“吹く”ことにしよう。
江東区・木場公園内の「東京都現代美術館」に着く。
武田州左先生からいただいた招待券で、「新収蔵作品展」と「特別公開:岡本太郎《明日の神話》」を観る。
「新収蔵作品展」は、昨年度新たに収蔵した「賛美小舎」上田コレクションの紹介である。
「賛美小舎」上田コレクションは、長年、教鞭をとっておられた上田國昭・克子ご夫妻が、およそ20年にわたり収集した現代美術作品のコレクションである。
今回は、ご夫妻から寄贈を受けた49点の、特別展示ということだ。
「賛美小舎」には、自らが美しいと信じるものを大切に守り育てるため、一つひとつの作品を収集してきたご夫妻の理念も込められているという。
ご夫妻の収集の目的には、単に作品を購入するというだけではなく、若い作家の活動を賞賛し、支援しようとする思いも込められているそうだ。
さらにスゴイのは、美術館に寄贈する目的で収集されていることだ。
美術館に寄贈することが、自らのコレクションを後の世代に伝える方途のひとつであると考え、作品が公開される機会をつくることが、支援してきた作家たちの今後の制作への励みになって欲しいと、ご夫妻は願っているとのこと。
上田氏が、明確に現代美術の収集へと焦点を定めた出発点となった作品は、川崎麻児《Untitled》(1987年)だという。
若々しい感性で、日本画に新風を吹き込む作家たちが、上田コレクションの中核となっている。
川崎麻児をはじめ、河嶋淳司、岡村桂三郎、斉藤典彦、尾長良範、武田州左、日高理恵子、間島秀徳、山本直彰、マコトフジムラといった作家は、上田コレクションとして収集されたというだけではなく、1980年代半ば以降、広く注目を集めた作家たちだ。
岩絵具という日本画の素材を用いながら、己の感性や自らが生きる時代の息吹を直接画面に表現する手法は、日本画という一つのジャンルにとどまらず、新たな絵画の動向として認められていくことになる。
はにかみ王子 十薬の月夜かな 季 己