先日、NHKで83歳の中村芝翫さんが、出演していた。
東京の新歌舞伎座が建て替えのため休場となるので、「さよなら公演・実録先代萩」
に出演している話や「歌舞伎座とともに歩んだ80年の歴史」などを振り返って語って
いた。
中村芝翫さんは「父・五代目中村福助は私が5歳の時に亡くなり、その後は祖父の
五代目中村歌右衛門の手元で育てられたが、その祖父も12歳の時に没した。後ろ
盾のなくなった私に親代わりとなって」芸を教えてくれたのが昭和の名優、六代目尾
上菊五郎であった。」(21日日経朝刊より)
祖父が亡くなった時にはずいぶん苦労されたようだ。
それまでは「坊ちゃま」と読んでくれていた人が、祖父が亡くなった後は「小僧お
茶を持ってこい」というようになったとのことだ。
芝翫さんは「今になると、そう言ってくれた人がありがたく思う」と話していた。
「苦労は買ってでも・・・」という諺があるが、これほど実践的な教育はない。
今の時代は、そういう厳しいことを言ってくれる人が少なくなった。
最も中村芝翫さんは謙虚で、学ぶ意欲が中途半端ではないからこそ、「厳しく言って
くれた人に感謝する」と言えたのだと思うが、それにしても「厭なことを言ってくれる人
が少なくなった」のも確かだ。
世の中が昔と違って複雑になってきているので、単純に「大人はもっと厳しくなろう」と
言うつもりはないが、少なくとも大人は「自分の子供だけでなく、世間の子供
達を育てる」という気持ちを持ち続けたいものだ。