会津八一 山光集・芝草(六首) 昭和十八年十月
芝 草 「序にあるように教え子・長島勝彬が入隊の挨拶に来た時の歌6首
である。死を覚悟した彼との悲しい惜別の歌と言える。
昭和18年、学生の“徴兵猶予の停止・学徒出陣”となり、10月15日
には明治神宮外苑球場で大々的な壮行会が行われた。すでにミッド
ウェー海戦、ガダルカナルの激闘、アッツ島の玉砕等で日本は敗戦
へと向かっていた。それへの対処が学生30万人の動員である」
1 芝草(第1首)
十月二十四日ひさしく懈(おこた)りて伸びつくしたる門前の土塀の芝草を
刈りて日もやや暮れなむとするに訪ね寄れる若き海軍少尉ありと見れば
昨秋我が校を去りて土浦の飛行隊に入りし長島勝彬なり明朝つとめて遠
方に向はんとするよしいへば迎へ入るしばししめやかに物語して去れり物
ごし静かなるうちにも毅然たる決意の色蔽ふべからずこの夜これを思うて
眠成らず暁にいたりてこの六首を成せり
たまたまに しばくさ かりし わが かど に
あす は ゆかむ と ひと の とひ くる
2 芝草(第2首)
みんなみ に あす は ゆかむ と ひとり きて
しづかに たてり ゆふづき の もと に
3 芝草(第3首)
ひととせ の ひさし からぬ を かく の ごと
よき つはもの と たてる きみ かも
4 芝草(第4首)
ことあげ せず いで たつ こころ ひたぶるに
わが おほきみ に しなむ と す らむ
5 芝草(第5首)
わが ふみ を たづさへ ゆきて たたかひ の
ひま に よむ とふ あらき はまべ に
6 芝草(第6首)
くりやべ は こよひ も ともし ひとつ なる
りんご を さきて きみ と わかれむ
芝 草 「序にあるように教え子・長島勝彬が入隊の挨拶に来た時の歌6首
である。死を覚悟した彼との悲しい惜別の歌と言える。
昭和18年、学生の“徴兵猶予の停止・学徒出陣”となり、10月15日
には明治神宮外苑球場で大々的な壮行会が行われた。すでにミッド
ウェー海戦、ガダルカナルの激闘、アッツ島の玉砕等で日本は敗戦
へと向かっていた。それへの対処が学生30万人の動員である」
1 芝草(第1首)
十月二十四日ひさしく懈(おこた)りて伸びつくしたる門前の土塀の芝草を
刈りて日もやや暮れなむとするに訪ね寄れる若き海軍少尉ありと見れば
昨秋我が校を去りて土浦の飛行隊に入りし長島勝彬なり明朝つとめて遠
方に向はんとするよしいへば迎へ入るしばししめやかに物語して去れり物
ごし静かなるうちにも毅然たる決意の色蔽ふべからずこの夜これを思うて
眠成らず暁にいたりてこの六首を成せり
たまたまに しばくさ かりし わが かど に
あす は ゆかむ と ひと の とひ くる
2 芝草(第2首)
みんなみ に あす は ゆかむ と ひとり きて
しづかに たてり ゆふづき の もと に
3 芝草(第3首)
ひととせ の ひさし からぬ を かく の ごと
よき つはもの と たてる きみ かも
4 芝草(第4首)
ことあげ せず いで たつ こころ ひたぶるに
わが おほきみ に しなむ と す らむ
5 芝草(第5首)
わが ふみ を たづさへ ゆきて たたかひ の
ひま に よむ とふ あらき はまべ に
6 芝草(第6首)
くりやべ は こよひ も ともし ひとつ なる
りんご を さきて きみ と わかれむ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます