日々のつれづれ(5代目)

旅行レポート以外の、細々としたこと。
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【本】刈屋大輔著 「ルポ トラックドライバー」(朝日新書)

2023-03-10 20:00:00 | 本・映画・展覧会
 covid-19でヒトやモノの流れが大きく変わったことから、トラックドライバーの労働環境についての記事が増えた。多くは低賃金長時間労働と言う論調だ。本書はそのタイミングで書かれたもの。統計に見る待遇、トラック業界の歴史、ドライバー取材による実態調査と、データと現場の両面からの検証をコンパクトにまとめてある。取材したドライバーは軽貨物の宅配、長距離便、超大型の海上コンテナドライバーと、異なるジャンルをカバーしているのが良い。

 低賃金問題については、荷主に転換してゆくのが最大の対応策になろう。ドライバー或いは物流事業者側でのコスト削減には限度があり、無理なコスト削減は事故につながりかねない。ただい、削減したコストは賃金に反映させるべきであり、決して受注金額引き下げに回してはならない。「代わりの業者など幾らでもいる」とうそぶく荷主側担当者が少なくないようだが、近い将来そうは言えなくなり「代わりの荷主なら幾らでもいるんですよ?」と物流業者から「逆襲」される日が来ないとも限らない。いや、来るべきか。

 一方、トラックドライバーに限らないが、「生活のため長時間労働し、もっとカネを稼ぎたい」と言う人は必ず存在する(自分が働いていた会社にも居た)。残業しなければ生活が成り立たないのでは論外だが、残業なしの賃金で生活できるにもかかわらず、カネを稼ぎたい人間にはどう対処すべきか、そういった労務施策まで本書は踏み込んでいない。

 同様に、低価格で発注したり、長時間労働や環境破壊の元凶となる路上待機を余儀なくさせる荷主への対応についても、本書では書かれていない。ドライバーの待遇改善って、トラック業界よりむしろ荷主側の発注、納品ルールを改めることで実現される部分が多いと思うのだが。

 真の問題解決の提案はなされていないが、その端緒は本書で明かされている気がした。

 2023年2月24日 自宅にて読了
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【本】宮内泰介著 [人びとの自然再生-歩く、見る、聞く-」(岩波新書)

2023-03-10 06:00:00 | 本・映画・展覧会
 通り一遍の環境保護よりもう少し現実的、だけど実践には手間のかかる手法が書かれていた。レジティマシー(社会的正当性)と言う言葉は、説明されれば解るが用語としては初めて知った気がする。

 自然再生~環境保護に限らず、社会的問題は異なる立場の異なる「正義」があり、最終的な正解が一つであっても、そこには至らないケースの方が多いように思われる。そこで「折り合いをつける」対処が出てくる。妥協と言うと聞こえが悪い。知恵を絞った、現実的な解と理解。

 コモンズ、日本でいう入会権の話は理解できるものの、それが現実的正解なのか、まだ考える余地があるのか、判断ができない。例えば山菜とり、例えば潮干狩りやワカメ採り。国有林や、天然物を一般の人が採って何が悪い。でも野放図にしていると資源枯渇に繋がる。誰が、何の権限があって規制する、取り締まる。何が正しいか、読んでいるうちに判らなくなってきた。良い本だ。

 2023年2月23日 自宅にて読了
 
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