「僕は二十二、三歳くらいに書いたマラルメにはそれほど魅かれない。本当に興味が出たのは、彼がシンタックスをバラバラにしなくちゃならないようなところに行っちゃった、ということだった。だから、詩それ自身より、そのような場所に自分を置いたという芸術家マラルメに興味があったんです。一度シンタックスをバラバラにしちゃった芸術家というのは、自分でもう一度アルファベットをつくり始めるよりしようがないでしょう。それでいて感覚的には目を使い、耳を使い、鼻を使っているようにしなくちゃいけない。この世でどうしても生きなくちゃいけないし、またもう一方、自分の仕事というのは、この世から全く外れたところにある。彼は二つに分かれた世界に入っちゃったんじゃないか。
おそらく彼は、空間とか時間というのはこの世には存在していない、そこから始まったろうと思うんです。時空というのは〈私たち〉によってつくられ、〈私〉によって殺され消されるものだということを、まともに考えたんだろうと思います。〈暗い〉とか〈夜〉とか〈影〉とか、そういう一つ一つのイメージは、この世にいるから仕方なくつくった物語だと。〈仕方ない〉という、それが僕にはあるんです。ほんの少しだけ説明を入れたと。未完成だという意味じゃなくて、あの未完成は完成してたんじゃないか。断片的だと僕たちは言うけど、あれは決して断片的じゃなくて、あのようにしかないと思うんです」(ユリイカ増刊マラルメ総特集号231ページ 荒川修作の発言より抜粋)
おそらく彼は、空間とか時間というのはこの世には存在していない、そこから始まったろうと思うんです。時空というのは〈私たち〉によってつくられ、〈私〉によって殺され消されるものだということを、まともに考えたんだろうと思います。〈暗い〉とか〈夜〉とか〈影〉とか、そういう一つ一つのイメージは、この世にいるから仕方なくつくった物語だと。〈仕方ない〉という、それが僕にはあるんです。ほんの少しだけ説明を入れたと。未完成だという意味じゃなくて、あの未完成は完成してたんじゃないか。断片的だと僕たちは言うけど、あれは決して断片的じゃなくて、あのようにしかないと思うんです」(ユリイカ増刊マラルメ総特集号231ページ 荒川修作の発言より抜粋)