SUPER FLAT 2

非ファルス的にもっこりするものを肯定せよ!(神の性的不器用あるいはその性的悪戯に由来するもの達について)

グーグルの書籍検索サービスとパラダイムシフト

2006年05月14日 | Weblog
 佐伯剛氏(『風の旅人』誌編集長)のブログはいつ読んでも批評的に最悪だが、しかしそう言って済ますことのできない場合もある。たとえば「グーグルの書籍検索サービスとパラダイムシフト」(2006-05-13)と題されたエントリーで佐伯氏は、日本でも年内に開始されるとアナウンスされたグーグルの書籍検索サービスについて、「大歓迎である」とコメントしている。確かに「質」で勝負しようとする中小の出版社にとっては朗報だろうし、また読むべき本を探している消費者や研究者にとっても有益なシステムである。しかしだからといって諸手を挙げて「大歓迎」してしまってよいのだろうか。それによる「パラダイムシフト」が、果たして出版界の現状改革に止まらず、書物の「質」を規定する条件(つまりディシプリン)にまで及ぶということはないのだろうか。出版社がグーグルこの申し出を受ける(グーグルのシステムの中に入る)ということは、今後、出版社はその検索エンジンのシステムに合わせた内容(テクスト)の書籍を刊行せざるを得ない、ということでもある。いまやどんなネットビジネスも、グーグルのウェブ検索エンジンの攻略なくしてはありえない。それと同じことが、これから出版される本の内部でおこる。そこに記されたすべてのテクストは、グーグルの書籍検索エンジンによる「査定」を受け、キーワードごとにランキングされ、そしてデータベース化される。著者はそのことを意識せねばならない。その新しい「基準」に基づいて「思考」されたテクストでなければ、もはや存在価値はないからだ。佐伯氏のように古臭い人間主義を貫いているだけでは、この恐るべきパラダイムシフトに抵抗することなどできはしないだろう。