
私の外来でよく聞かれる質問の一つが、脳動脈瘤と遺伝に関することです。
これについてお答えしたいと思います。
Q1: 脳動脈瘤は遺伝しますか?
A1:はい、一部の人では遺伝する可能性があります。特に、家族(親・兄弟姉妹・子ども)にくも膜下出血や脳動脈瘤を持つ人が複数いる場合は、動脈瘤ができやすいことが研究でわかっています。このような家族をもつ場合、「家族性脳動脈瘤」と呼ばれます。
参考:Broderick JP, et al. NEJM. 1994
(同一家系内に複数の脳動脈瘤患者のいる家族では、有病率が3〜4倍以上になる)
Q2:家族に1人だけ脳動脈瘤の人がいても注意したほうがいいのでしょうか?
A2.家族に1人だけ脳動脈瘤(またはくも膜下出血)を起こした人がいる場合、その家族(特に一親等:親・兄弟・子ども)の脳動脈瘤のリスクは、一般の人よりも2倍程度高いことが報告されています。
1:家族に1人だけ未破裂脳動脈瘤患者がいる場合
- 未破裂脳動脈瘤の有病率(一親等):約 4~7%(一般の1.5~3倍)
- 参考: Wermer SF, et al., Lancet Neurology, 2007
(未破裂脳動脈瘤患者の家族におけるスクリーニング研究)
2:家族に1人だけくも膜下出血患者がいる場合
- 未破裂脳動脈瘤の有病率(一親等):約 8~11%(一般の約2〜3倍)
- 参考:Bor AS, et al., Stroke, 2008
(一般集団とくも膜下出血患者の一親等を比較した研究)。
以上を考えると、家族に未破裂脳動脈瘤やくも膜下出血を起こした人がいる場合には、一度はMRIなどで検査しておく方が良いかもしれません。
ただし、これはあくまで統計的な平均リスクであり、実際には他の要因(高血圧、喫煙、年齢など)と組み合わさるかどうかでリスクが上下します。
Q3:遺伝以外の原因もあるのでしょうか?
A3: はい。脳動脈瘤ができる原因には、遺伝だけでなく生活習慣も大きく関係します。特にリスクを高めるのは次のような要因です:
- 高血圧(血管に負担がかかりやすくなる)
- 喫煙(たばこ)(血管の壁がもろくなる)
- 過度の飲酒(血圧上昇や動脈硬化を引き起こす)
また、加齢(特に40代以降)でも動脈の壁が弱くなり、瘤ができやすくなります。動脈瘤を含め、血管の病気にならないようにするには、日ごろの生活習慣がとても大切です。
Q4. 自分に脳動脈瘤があるどうかを知るにはどうしたらいいのでしょうか?
A4.
MRIを受ければ、脳動脈瘤の有無を確認することができます。
特に以下のような方は、一度検査を受けておくと安心です:
- 家族にくも膜下出血や脳動脈瘤を持つ人が複数いる
- 健康診断で高血圧などの異常が指摘された
- 喫煙歴がある
MRI検査は体への負担も少なく、外来で受けられます。ただし、1.5から3テスラの高画質MRIで検査を受けるようにしてください。これは画質が悪いと見逃されてしまう可能性があるためです。
早期の診断は予防治療の大きなチャンスになります。一方踏み出して、積極的な予防に取り組みましょう!