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その8 未破裂脳動脈瘤があるのですが、妊娠・出産は問題ないですか?

2025年05月19日 | 動脈瘤

みなさんこんにちは!

今回も脳動脈瘤のある患者さんからのご質問についてお答えしたいと思います。

「脳動脈瘤があると、妊娠や出産で血圧が上がったり、いきむと破裂するのでは…?」というご質問をいただきました。
たしかに、脳ドックなどで未破裂脳動脈瘤が見つかって経過観察中の方にはこのようなご不安を抱える方も少なくありません。

そこで今回は脳動脈瘤と妊娠・出産に関する過去の報告を調べてみました。

 

結論から言うと...

  • 全米の膨大な入院データでは、妊娠・出産中の破裂は稀でした(それぞれ1.4%, 0.05%)。
  • ただし、動脈瘤が大きい、増大している、など想定破裂リスクが高い場合には、専門医と相談して下さい。

🔍 医学的根拠:このご相談に関しては、あまり報告が多くないので、最も関連するものを1つ紹介します。

📚 1. Kim YW et al., Neurosurgery, 2013

妊娠、出産のための入院中、脳動脈瘤破裂のリスクがどの程度あるかを調べた研究で、全米の入院データを用いて解析されました。

対象となった入院数(1988〜2009年):

  • 妊娠中の入院:約3,400万人
  • 分娩のための入院:約1億500万人

🔍 このうち脳動脈瘤が破裂したのは:

  • 妊娠中の入院:714例 → 妊娠中の入院における破裂リスク:1.4%
  • 分娩のための入院:172例→ 分娩のための入院における破裂リスク:0.05%

そして、この研究では以下のような推定のもとに解析が行われました。

妊娠年齢の全女性における未破裂動脈瘤の有病率を1.8%と仮定して、妊娠で入院した女性48,873人および分娩で入院した女性312,128人が未破裂動脈瘤を有していたと推定された。これをもとに妊娠中の入院および分娩中の入院中の破裂リスクを計算したところ、それぞれ1.4%および0.05%であった、ということです。

実際に対象となった患者さんたちに脳動脈瘤があったかどうかは検査されていませんので注意が必要です。ただし、「妊娠による入院中の破裂」、「出産中の破裂」、という捉え方としては、症例数が多いため信頼性の高い値です。

一方、未破裂脳動脈瘤をもつ女性のうち、7割以上が帝王切開で出産していたこともわかりました。これは通常よりも多いので、安全のために帝王切開が選ばれた可能性がありますが、今回のデータでは通常の自然分娩(経腟分娩)でも破裂率は同程度でしたので、本当に必要かどうかは明らかではありません

論文中にも、脳動脈瘤が小さく安定している(増大していない)場合であれば、通常の自然分娩(経腟分娩)でも問題ない可能性が示唆された。とありました。

まとめ

  • 未破裂脳動脈瘤があるだけで、妊娠や出産を諦める必要はありません。
  • 今回紹介した研究で、妊娠・分娩のための入院中破裂リスクは低いと報告されているためです。
  • 一方で、動脈瘤が大きい、増大している、など想定破裂リスクが高い場合には、個別的な対応が必要と考えます。
  • また、妊娠高血圧は理論的に破裂を高める因子になり得るので注意しましょう。

 

ご質問について分かる範囲でお答えしました。妊娠・出産を予定されている方は、ぜひ担当の専門医と相談されることをお勧めします。


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