ロシア国営テレビ 職員が「反戦」訴え 事前投稿のSNS全文も 2022年3月15日 15時44分
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を巡り、プーチン政権の意向に沿った報道を続けているロシア国営テレビで、ニュース番組の放送中に突然、職員の女性がスタジオで反戦を訴えました。
言論統制が強まる中、国営メディアから政権批判の声があがった形で、反響が広がっています。
言論統制が強まる中、国営メディアから政権批判の声があがった形で、反響が広がっています。
ロシア国営の「第1チャンネル」で14日、午後9時の看板ニュース番組「ブレーミャ」で、キャスターが、欧米による経済制裁についてのニュースを伝えていたところ、手書きの文字が書かれた紙を持った女性が突然スタジオに入ってきました。
紙には「戦争反対」という英語とともにロシア語で「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。あなたはだまされている」と書かれていました。
女性が「戦争をやめて」と繰り返し叫んでいたところ、放送は突然、別の映像に切り替わりました。
ロシアのメディアによりますと、女性はこのテレビ局で編集担当者として働くマリーナ・オフシャンニコワさんで、このあと警察に拘束され、公共の場で軍事行動の中止を呼びかけることなどを禁止した法律に違反した疑いで取り調べを受けているということです。
紙には「戦争反対」という英語とともにロシア語で「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。あなたはだまされている」と書かれていました。
女性が「戦争をやめて」と繰り返し叫んでいたところ、放送は突然、別の映像に切り替わりました。
ロシアのメディアによりますと、女性はこのテレビ局で編集担当者として働くマリーナ・オフシャンニコワさんで、このあと警察に拘束され、公共の場で軍事行動の中止を呼びかけることなどを禁止した法律に違反した疑いで取り調べを受けているということです。
オフシャンニコワさんは、事前に収録していたビデオメッセージをSNSに投稿していて、父親がウクライナ人、母親がロシア人だと明かしながら、「今、ウクライナで起きていることは犯罪だ」と述べ、プーチン大統領を非難しました。
プーチン政権は、軍事侵攻に反対する声がロシア国内で高まっていることに神経をとがらせ、法律を改正するなどして言論統制を強めています。
こうした中で政権の意向に沿った国営テレビの放送の最中に図らずも反戦を訴えるメッセージが伝えられたことに対して、SNS上ではロシア国内からも賛同したり応援したりするメッセージが相次ぐなど、反響が広がっています。
【全文】SNS事前投稿メッセージ
1分10秒ほどのビデオメッセージの全文です。
「いまウクライナで起きていることは犯罪だ。そしてロシアは侵略者だ。侵略の責任は、ただ1人の道義的な部分にかかっていてそれはプーチン大統領だ。私の父はウクライナ人、母はロシア人で、敵対したことは1度もない。私の首にかかるネックレスはロシアがこの同胞を殺し合う戦争を直ちに止めなければならないという象徴だ。兄弟国である私たちはまだ和解できるはずだ。残念ながら私は過去何年もの間、『第1チャンネル』でクレムリンのプロパガンダを広め、今はそれをとても恥じている。テレビ画面を通してうそを伝えることを許してきた自分を恥じている。ロシアの国民がだまされるのを許してきたことを恥じている。すべてが始まった2014年、クレムリンがナワリヌイ氏を毒殺しかけたとき、私たちは抗議集会に行かず、この非人間的な政権をただ黙って見ていた。そして今、世界中が私たちに背を向けている。今後10世代にわたる子孫はこの同胞による戦争の恥を洗い流すことはできまい。私たちは思考力があり、賢いロシア人だ。この暴挙を止めるには、私たちの力しかない。抗議集会に加わってほしい。当局は全員を拘束することなどできず、何も怖がることはない」
オフシャンニコワさんはこのように訴えています。
ロシアでは情報統制の強化につながる改正法が成立 懲役や罰金も
- ウクライナの首都キエフの現在の様子
ロシア国営テレビ 職員が「反戦」訴え 事前投稿のSNS全文も 2022年3月15日 15時44分
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を巡り、プーチン政権の意向に沿った報道を続けているロシア国営テレビで、ニュース番組の放送中に突然、職員の女性がスタジオで反戦を訴えました。
言論統制が強まる中、国営メディアから政権批判の声があがった形で、反響が広がっています。
言論統制が強まる中、国営メディアから政権批判の声があがった形で、反響が広がっています。
ロシア国営の「第1チャンネル」で14日、午後9時の看板ニュース番組「ブレーミャ」で、キャスターが、欧米による経済制裁についてのニュースを伝えていたところ、手書きの文字が書かれた紙を持った女性が突然スタジオに入ってきました。
紙には「戦争反対」という英語とともにロシア語で「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。あなたはだまされている」と書かれていました。
女性が「戦争をやめて」と繰り返し叫んでいたところ、放送は突然、別の映像に切り替わりました。
ロシアのメディアによりますと、女性はこのテレビ局で編集担当者として働くマリーナ・オフシャンニコワさんで、このあと警察に拘束され、公共の場で軍事行動の中止を呼びかけることなどを禁止した法律に違反した疑いで取り調べを受けているということです。
紙には「戦争反対」という英語とともにロシア語で「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。あなたはだまされている」と書かれていました。
女性が「戦争をやめて」と繰り返し叫んでいたところ、放送は突然、別の映像に切り替わりました。
ロシアのメディアによりますと、女性はこのテレビ局で編集担当者として働くマリーナ・オフシャンニコワさんで、このあと警察に拘束され、公共の場で軍事行動の中止を呼びかけることなどを禁止した法律に違反した疑いで取り調べを受けているということです。
オフシャンニコワさんは、事前に収録していたビデオメッセージをSNSに投稿していて、父親がウクライナ人、母親がロシア人だと明かしながら、「今、ウクライナで起きていることは犯罪だ」と述べ、プーチン大統領を非難しました。
プーチン政権は、軍事侵攻に反対する声がロシア国内で高まっていることに神経をとがらせ、法律を改正するなどして言論統制を強めています。
こうした中で政権の意向に沿った国営テレビの放送の最中に図らずも反戦を訴えるメッセージが伝えられたことに対して、SNS上ではロシア国内からも賛同したり応援したりするメッセージが相次ぐなど、反響が広がっています。
【全文】SNS事前投稿メッセージ
1分10秒ほどのビデオメッセージの全文です。
「いまウクライナで起きていることは犯罪だ。そしてロシアは侵略者だ。侵略の責任は、ただ1人の道義的な部分にかかっていてそれはプーチン大統領だ。私の父はウクライナ人、母はロシア人で、敵対したことは1度もない。私の首にかかるネックレスはロシアがこの同胞を殺し合う戦争を直ちに止めなければならないという象徴だ。兄弟国である私たちはまだ和解できるはずだ。残念ながら私は過去何年もの間、『第1チャンネル』でクレムリンのプロパガンダを広め、今はそれをとても恥じている。テレビ画面を通してうそを伝えることを許してきた自分を恥じている。ロシアの国民がだまされるのを許してきたことを恥じている。すべてが始まった2014年、クレムリンがナワリヌイ氏を毒殺しかけたとき、私たちは抗議集会に行かず、この非人間的な政権をただ黙って見ていた。そして今、世界中が私たちに背を向けている。今後10世代にわたる子孫はこの同胞による戦争の恥を洗い流すことはできまい。私たちは思考力があり、賢いロシア人だ。この暴挙を止めるには、私たちの力しかない。抗議集会に加わってほしい。当局は全員を拘束することなどできず、何も怖がることはない」
オフシャンニコワさんはこのように訴えています。
ロシアでは情報統制の強化につながる改正法が成立 懲役や罰金も
ロシアのプーチン政権は、軍事侵攻に反対する声がロシア国内で高まっていることに神経をとがらせていて、3月4日には情報統制の強化につながる改正法を成立させました。
このうち刑法では「ロシアの国民の保護と平和維持のため、ロシア軍の活動について、信頼できる報道を装い、明らかにうその情報を拡散すること」などを新たに刑罰の対象にしています。
最大で500万ルーブル、日本円でおよそ500万円の罰金が科されるほか「社会的に重大な影響を伴う」とみなされた場合は、懲役もしくは禁錮15年が科される可能性もあります。
また、行政法も改正され「公共の場で軍の信用失墜を目指す活動や軍事行動の中止、それに無許可の集会やデモの実施を呼びかける」ことを禁止し、違反した場合は最大で50万ルーブル、日本円でおよそ50万円の罰金を科すとしています。
さらに、ロシアに対する制裁を呼びかけることも禁止され、繰り返し違反した場合は懲役もしくは禁錮3年が科される可能性があります。
【詳しく】安間解説委員による解説
1.放送中に反戦の声 “異例の事態”
これまでにない異例の事態だといえます。
これまでプーチン政権が厳しく統制下に置いてきた国営メディアの内部でも不満が高まり、ほころびが出始めたことの現れです。
この女性は、国営テレビの編集者であるマリーナ・オフシャンコワさんという女性で父親がウクライナ人、母親がロシア人だということで、それだけ身近な問題ということです。
オフシャンコワさんは、このあと警察に拘束され、公共の場で軍事行動の中止を呼びかけることなどを禁止した法律に違反した疑いで取り調べを受けているとのことです。
2.ロシアのテレビ局について
ロシアでは、主要な全国放送は3つあるが、プーチン政権のもとでいずれも国営、政府系となりました。
なかでもこの第1チャンネルは、ソビエト時代からもっとも大きなテレビ局として知られ、午後9時から放送される「ブレーミャ(ロシア語で時という意味)」は、代表的なニュース番組として知られ、親しまれてきました。
そういう有名なニュース番組でこうした行動が取られたということです。
3.一層強まる言論統制 懲役刑も
ロシアのテレビ放送はそもそもプーチン政権のもとで、政府に批判的な見解が放送されることは制限されてきたが、言論統制は、先月、ウクライナへの軍事侵攻が始まってから一層強まっています。
プーチン政権は、今回の軍事侵攻を「特別軍事作戦」としているため、「戦争」や「侵攻」などの表現を使うことは許されていません。
政府見解、国防省など公式の発表以外を伝えることは制限され、当局が正しくないとする情報を伝えた場合、最長で15年の懲役刑も科されるようになりました。
今、ロシアの街角では、市民が白紙の紙を掲げても身柄を拘束されるというナンセンスな事態になっています。
インターネットやSNSの規制も強まり、国営テレビの職員だけでなく、一般市民の間にも言いたいことを言えないという不満が充満しつつあるのではないかと思えます。
そのことをうかがわせるものとなっています。
ゼレンスキー大統領「真実伝えようとするロシアの人たちに感謝」
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、SNSで投稿した動画で「真実を伝えようとし続け、偽の情報と戦うロシアの人たちに感謝します。ロシア国営テレビのスタジオに入った女性には個人的にお礼を言いたい」と述べました。
そのうえで、「抗議することを恐れない人たちに言いたい。あなたの国が世界から完全に閉ざされる前に戦わなければならない。チャンスを失ってはならない」と述べ、ロシアの人たちに真実を伝え続けてほしいと呼びかけました。
林外相「一筋の光明だが報道の自由の制限 強く懸念」
林外務大臣は、参議院の委員会で「勇気ある人がまだロシアにいるのは、一筋の光明ではないかと思っている。報道によると、ロシアの国営放送のスタッフが拘束されており、報道の自由の制限を強く懸念している。われわれとしても何ができるのかしっかりと考えていかなければならない」と述べました。