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魔の「18分間」頭から離れず-ニッケル市場大混乱、存続懸かる各社 Jack Farchy、Alfred Cang、Mark Burton 2022年3月15日 11:51 JST ブルームバーグ

2022-03-15 17:52:40 | 日記
魔の「18分間」頭から離れず-ニッケル市場大混乱、存続懸かる各社
Jack Farchy、Alfred Cang、Mark Burton  2022年3月15日 11:51 JST  ブルームバーグ

         
3月8日に起きたロンドンのニッケル市場崩壊は現地時間午前5時42分(日本時間午後2時42分)だった。普段なら出勤途中のトレーダーが相場をちらりとチェックする程度だが、この日ばかりは電子市場の価格スクリーンに目がくぎ付けになった。
  ニッケル価格は通常なら1営業日でトン当たり数百ドルの変動だ。過去10年間の相場はほとんど1万ドルから2万ドルの間での推移だった。7日に始まった高騰は、8日午前5時42分までに史上最高値を更新していたが、さらにわずか数分で3万ドル急騰。午前6時過ぎ、ニッケルは10万ドルを突破した。
  商品取引所の参加者にとって、価格の上昇は必ずしも朗報ではない。鉱山会社やトレーダー、メーカーは相場下落時に利益を確保するため信用取引でショートポジション(売り持ち)を組むが、実際の相場が逆方向に大きく動くとマージンコール(追加証拠金請求、追い証)が生じる。
            


                    

                    
  ロンドンのある金属ブローカー責任者は、値動きを見て気分が悪くなったと振り返る。価格高騰が自分の会社と市場、そして世界の金属業界にとって何を意味するのか理解したからだ。「この18分間が頭から離れない」と公に話すことが認められていないして、匿名を条件に打ち明けた。
  わずか24時間余りでのニッケル250%急騰は、業界を混乱に陥れ、逆方向に賭けていたトレーダーに巨額の損失をもたらした。ロンドン金属取引所(LME)は約30年ぶりにニッケル取引停止を強いられた。
  価格急騰の主因は記録的なショートスクイーズ(踏み上げ)だ。中国のニッケル生産会社、青山控股集団を通じ創業者の項光達氏はショートを大きく積み上げていたが、激しいショートスクイーズに見舞われた。
  個人投資家を昨年魅了した米ゲームストップなどミーム株の取引でもショートスクイーズは発生したが、今回は世界経済全体に影響が及ぶ資源が標的となった。ニッケルはステンレススチールの重要な材料であり、電気自動車(EV)電池を製造する上で最も重要な原材料の1つだ。
  英商社コンコード・リソーシズのマーク・ハンセン最高経営責任者(CEO)は「自分のキャリアの中で目にした最も無秩序な金属価格の動きだ。7、8両日に加速した投機に熱狂したが、これが重要な実物の商品であり、ビデオゲームの小売会社ではないことを人々は失念していた」と語った。


  ロシアのウクライナ侵略で何もかも一変。ロシアは世界3位のニッケル産出国で、LMEで取引されるタイプの精錬ニッケル最大の輸出国だ。ロシアのニッケル輸出に制裁は科せられていないが、米欧の買い手はロシア産以外のニッケル確保に走った。
            
  1958年生まれの項氏は中国商品業界の「大物」だ。単なる金融トレーダーではない。項氏のポジションのうち、どの程度が純粋な価格ヘッジあるいは投機と同氏が考えていたのかは分からない。ドイツのメタルゲゼルシャフトにしろ住友商事にしろ、ヘッジと投機の境目は曖昧で、巨額の損失を出したという話は商品市場の歴史の中でいくらでもある。
        

    
    ニッケル相場は8日、1トン=10万ドルを突破したSource: Bloomberg
  ブルームバーグは関係者数十人に話を聞いたが、多くは非公開情報だとして匿名を条件にニッケル市場で何が起きたかについて教えてくれた。
  それによれば、昨年の売上高が3520億元(約6兆5200億円)だった青山は、今年2月下旬から3月初めまで追い証を遅滞なく支払っていた。だが3月7日、ニッケル価格は3万ドルから5万ドル余りに高騰。LMEのブローカーとその顧客は追い証に次ぐ追い証への対応に追われた。幾つかの大手ブローカーでは各10億ドル近い追い証が生じた。青山の追い証はさらに大きく30億ドル(約3550億円)程度だ。同社の売り持ち合計を基にブルームバーグが算出した。
  青山の取引銀行・ブローカーはJPモルガン・チェースやBNPパリバ、スタンダードチャータードなどで、これらの金融機関は厳しい状況に置かれた。追い証の支払いを受けずに青山との取引を相殺するポジションを取ったが、一部がニッケル買い戻しを急ぎ始め、ニッケル急騰がさらに進み、古典的なショートスクイーズになったという。
  青山だけが追い証に苦しんでいるニッケル会社ではない。最大手というだけだ。多くの生産会社やトレーダー、ユーザーがLMEでショートポジションを持っており、準備資金の何倍ものマージンコールに直面している。ブローカーのバンズ・ファイナンシャルの創業パートナーで元LME取締役のジョン・ブラウニング氏は「相場が10万ドルに向かっているときダメージを実感していた各社は、存続を懸けた闘いだと分かっていた」と話した。 
   LMEは8日午前に行われた取引を全て取り消すという異例の措置を決定。ブルームバーグの計算によれば、39億ドル相当だ。ニッケル価格8万ドルに基づく追い証支払いの必要がなくなることを意味し、市場を事実上7日の終値4万8078ドルの時点に巻き戻すことになる。この決定については批判が噴出しており、LMEの存在意義について疑念の声が高まっている。LMEはニッケル取引を16日に再開すると発表した。
  • LME、16日にニッケル取引再開-項光達氏が銀行団と合意
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  • ニッケル急騰後の混乱で金属トレーダー動揺、LMEの暗黒時代を想起
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原題:The 18 Minutes of Trading Chaos That Broke the Nickel Market (2)(抜粋)
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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