
小田急の世田谷代田を下車して、北へまっすぐ歩くと、幹線道路沿いのところに新寿湯がある。建物は一見すると自宅兼事務所みたいな建物だが、とても古くて綺麗な銭湯だった。
【新寿湯】をザックリいうと
◎浴槽はひとつだけ
・昔ながらのシンプルな銭湯
・常連客同士が仲良しでにぎやか
・おかみさんの献身ぶりが凄い
・とにかく磨かれた浴室

▲小田急の世田谷代田駅

▲改札口をでて右

▲目の前は拡張工事中


▲ローソン手前の小道に入る

▲あとはまっすぐ進むだけ





▲突き当たりを左

▲もうみえてくる



▲到着

▲下足箱
開店前にたどり着くと、ベンチには高齢の女性がひとり座っていた。それから高齢男性もやってきて、車いすの人とすれ違ったら、車いすの男性も銭湯の敷地内に入っていく。
足が悪くて銭湯に入れるのだろうか?
最後は、長髪の若い男性も列の後方に並んだ。
開店時間10分前ぐらいにガラガラと音を立ててシャッターが開くと、開けたのは60代ぐらいの男性。
先ほどの若い男性が「ドライヤー使えますか?」と女性客に聞いており、女性客は理解出来なかったらしく、
「コインランドリーならこっちにあるわよ」と述べ、若い男性は改めて店主に聞くと、店主は怪訝そうな顔をしながら「使えますよ」とこたえた。
以下、その後のやり取り。
女性「銭湯に入るのよね?」
若い男性「そうです」
みんな「ははは(苦笑い)」
銭湯に入らずドライヤーを使わせて下さいと言ってるのかと思っていたようだ。そう思われたのもムリはなくて、ちょっとそんな感じの雰囲気を放っていた。
それを裏付けるように、そのあとでトンでもない行動を起こしていた。
さて、小さなスペースの下足箱に靴を預け、開きっぱなしの扉を抜けると、左に番台。形はまさに昔のまんまの番台である。そこに先ほどの男性店主が座っていた。
男湯の脱衣場には女性が堂々とソファに座っている。
常連客ばかりだから、みんな気心が知れてなんでもありなのかと思ったが、後で女性がここの店主と分かった。
脱衣場は、シンプルで右壁にロッカーが並び、それと真ん中にあるのみ。
販売してる洗剤やアメニティグッズが後ろにあり、近くにソファ。
ロッカーの端っこには、さりげなく洗濯機が置いてあった。
あと間仕切りには鏡。その下にドライヤーが置いてある。奥左に古いアナログの体重計と、その体重計の横に備え付けのシャンプーが置いてあった。中に持ち運んで使うものである。
開店したばかりのためか、浴室扉は完全に開けっ放し。
脱衣場の中は、常連客同士と女性とで世間話に盛り上がっていた。
一番最初に入って扉を閉めようとすると、女性店主から、
「おじさんが入るから開けといて!」
と言われて、
(えぇ~?!)と思いながらシャワーを浴びようとすると、
「ここにシャンプーがあるから使って!」
と言われた。
そう言われて使わないわけにはいかないので「ありがとうございますッ!」と言って中に持ち運んだ。
そもそも、なぜシャンプーを出入り口に置いておくのか意味が分からない。ただ、こうした古い銭湯で備え付けがあるのは珍しいだろう。
浴室に入ると、本当にシンプル。直球すぎる作りだ。あまりのシンプルさに言及する要素がほとんどないぐらいである。
左手前に立ちシャワーが一つ。
それと真ん中に島カランがあるが、こちらはシャワーが付いていない。
左右壁にカランが並び、奥に浴槽。浴槽は、白湯が一つだけ。唯一、ジェットバスが一つだけあったが、だいたいそれぐらいだろう。
本当に昔ながらのシンプルイズベストという感じだった。

※せたがや銭湯ガイドホームページ引用
▲こちらが女湯で

※せたがや銭湯ガイドホームページ引用
▲こっちが男湯

※せたがや銭湯ガイドホームページ引用
▲壁には富士山の絵
そして今回は開店直後に入ったということで、いつものように一番風呂をめざした。
急いで全身を洗うと、「今日の一番乗りだ!ラッキー」と思った矢先、なんと後ろから急追してくる姿が。
振り返ると、驚くべきことに先ほどの車いすに乗っていた男性が迫ってくるではないか。
しかも車いすの男性だけではない。あの女性店主が男性を抱えており、二人三脚のように迫っていた。
本当に車椅子が必要だったのか?というぐらいの早さだったが、こちらも負けじとなんとか振り切り、久しぶりに一番風呂を達成。
そんなやり取りの後に続々と常連客たちが入ってきた。
「今日は、入りやすいな」と常連客が言っていたので、その日はたまたま低めだったのかもしれない。体感的には43℃ほど。おそらく熱いときは45℃ぐらいあるのだろう。
しかしここで特筆したいのは、一番風呂に勝ったことではなく、女性店主の献身ぶりである。
先ほどの「おじさんが入るから扉を閉めないで!」と言ったのは、車いすの男性を介抱するためだったのだ。
その車いすの男性だが、湯船に浸からせてもらうと、丁寧に体の各所をお湯で掛けてもらい、湯船から出ると体をくまなく洗ってもらい、ひげ剃りをしてもらい、まさに介護そのまんまである。本当になにからなにまでやってもらっていた。
女性店主はというと、そんな介助をしながら常連客と冗談を交わし、その話しぶりはとても気さく。
自分は結局、30分ほどで退出したのだが、それでもまだ洗ってあげていたのだからビックリである。一体、いつまで手伝っていたのか分からないが、その姿には胸を打たれるものがあった。
こんなに人情に厚く、客思いの銭湯がほかにあるだろうか?
それともう一つ言及したいのが、先ほどの長髪の若い男性。
色々と考えさせられたのだが、簡単に述べるとどうも銭湯未経験者らしく、まずはタオルを持っていなかった…。
女性店主から「タオルは?」と聞かれて「ないです」とこたえると、男性店主に「タオルがないんだってぇ!」と言って持ってきてもらっていた。本当にサービスのいい銭湯。というか夫婦そろって人がいい。
だが、若い入浴客がその男性店主から怒られる場面があった。それは怒られて当然だったのだが、湯船に足だけ入れていると、何をしてるのかと思えばスマートフォンをいじっていた。
まさかのスマートフォン。
それに気が付いた男性店主が「お客さん、お客さん、ダメだよ!」と怒っていたが、さすがに怒られるだろう。
当然だけど、あらためて未経験者というのは何も分からないものなのだと思った。
「常識ない奴だな!」と言うのは簡単だけど、やっぱり何も知らないというのは、トコトンなにも知らないのである。
このあたりは自分も自戒しなければと思った。
こんな感じで、銭湯に浸かるというよりも人間観察が主になってしまったが、設備自体は地味でも、とにかく清潔で気持ちいいところだった。
シンプルに銭湯を楽しみたい人にとって、ここはオススメである。それに人情味に触れるという点でも、ここほど素晴らしいところはないだろう。
【評価チェック箇所】
▼アクセス
最寄り駅 世田谷代田
経路 環七沿いに北へまっすぐ
周辺の環境 商店
●空間演出
建物外観 古い銭湯
壁画・眺望 モザイク掛かったようなタイル絵と右壁に富士山の絵
統一感 あり
置物 なし
照明 ふつう
★設備
休憩所 脱衣場兼
脱衣所 昔ながらで綺麗
シャワーの出 ふつう
浴槽の種類 白湯
サウナ なし
温度 43℃
棚 なし
男女入れ替え なし
■サービス
接客 人情味がある
清潔さ 素晴らしい
貸しタオル あり(0円)
備え付け あり
◆人
受付 60代半ばの男性
客層 高齢者メイン
【案内】
住所
〒155-0033
世田谷区代田5−11−7
電話番号
03-3414-7872
アクセス
小田急線「世田谷代田」駅下車、徒歩3分
休日
月曜
祝日の場合は営業営業時間
15:30−24:00
※東京銭湯ホームページ転載
1つだけの浴槽がちょっと熱めなのがまた良いですね。サウナ、露天、炭酸泉など設備が充実してる銭湯が増え、客の求めているハードルも上がっているので、一般受けするタイプの銭湯ではないと思うのですが、色々な銭湯に行ってる人間とっては、こういったシンプルな浴室の銭湯に無性に行きたくなる時があるんですよね。
車椅子の方はたぶんご近所さんですよね。浴槽に入れてもらい、体も洗ってもらう、確かに介護ですね。ここまでしてくれるなんて、店主の方の、人のよさが滲み出てます。そんな光景を見たら、長く続いて欲しいと、応援したくなる銭湯ですね。
銭湯初体験の客は、ちょっと笑いました。田舎だと幼少期から頻繁に銭湯に連れていかれる為、私の回りには銭湯未経験者が居ないのですが、まさかそんな事になるなんてw
車いすの人は本当にビックリしましたね。
最初どうやって入るんだろう??と思ったのですが、店主の献身的なサポートがあればこそ可能なんですよね。
青森は幼少期からみんな連れて行かれるんですね。それだけ銭湯文化が根付いている証でしょうね。
関東だと話を聞くと、大人でも銭湯に行ったことがない人が少なくないですから!
東京だと一部豪華な施設の銭湯はありますが、廃業する数をみると文化としては衰退してるかなという気がします。