取るに足りない女の話。

かつて、何の為に生きているのかわからないと泣きじゃくったダメな女がいた。女のすべては男にあった。そういうダメな女だった。
男は言った。自分の為に生きてくれ。
女は心に響いた。
事あるごとに聞き、その答えを待っていた。
男を変えも、女はその類いの答えを待っていた。

しかし、ある時出会った男は言った。意固地な男だった。
その答えは、女にとって意表を突くものであった。

答えなどそこにはなくて。
何で生きているのかを考え続ける事こそが、探し続ける事こそが、生きる事だと。

女も男もまだモラトリアムの真っ只中だった。
取るに足りない青臭い話だ。

そして、その物語はそれぞれが予想もしない未来へと進んでいく。
本人らが予想しなくとも、第三者にとってそれはありきたりの話かもしれない。
それでも物語はまだきっと途中なのだ。それが、もしも生きるということならば。