那須太社 錦輔 の日記

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飢餓海峡 水上勉(2)

2015-06-10 21:11:46 | 読書感想文

読了。

やはり、傑作だった。

あとがきに女主人公の八重を「罪と罰」のソーニャに模した、書いてあったが、日本のドストエフスキーではないだろうか。

惜しむらくは、水上勉さんがあとがきで、つじつまあわせをする推理小説は嫌になった、とか言ってらして本作、「飢餓海峡」のような系統の作品を何作も書いておられるわけではないみたい。

あとで、ネットで調べてみたい。そもそも、「みなかみつとむ」さんと思ってたら、「みずかみつとむ」さんなのである。

ネットで地図を見ながら読んでいたのだが、物語の発端となる事件発生現場の岩幌という地名は架空の地名で、モデルとなったのは実は岩内という所だったのだという。岩幌交通という名前が札幌の近く岩見沢のあたりにあるので、てっきりそのあたりが舞台だと思って読み勧めていたが、そうではなく、岩内だったのである。たしかに他の土地との位置関係とか海との距離とか違和感があったのだが、地図で岩内を見ると、なるほどここかと納得。

また樽見京一郎の妻となる森村敏子が一人で住んでいたという、浦和市白幡町はどのあたりかと検索してみたら、市町村合併はあったものの、さいたま市浦和区に白幡小学校があって、ああ、このあたりか、と大体の場所がわかってうれしかった。

前回の途中レビューで、付け焼刃ではなくしっかりと取材しているらしきところが現代作家と違う、とかいたが実は現場にはほとんど行っておられず、5万分の1の地図を見ながら小説を書いた、とあとがきには書いてあった。

 

登場人物は警察関係者が多いが、皆人情家である。やや過剰なほど貧者や恵まれない者への思いやりを見せる。この辺は作者のキャラが出ているのかと思われた。そして悪への怒り、悪い人はほとんど出てこない。

いい本だった。

追記 ひとつ瑕疵というか惜しいなと思ったのは、なぜ犯人は青酸カリを持っていたのか、という謎解き・理由の説明がなかった点。 

厳重に管理されている薬品だと思うのだが、そこがちょっと残念なところ。

 

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