実家に帰省してふと読み始めた。箱入りの豪華な作り。
いつ買ったのか覚えてない。
古本屋の値札を剥がした跡がある。
第一章の文房具の狂人の話はつまらないので流し読みで飛ばす。
現代人はうわべを取り繕ってまともな普通人に見えていても心の奥底は皆狂っている、みたいな昔の俗物図鑑という作品の焼き直しというか、二番煎じというかで新味はない。
あと、やはり文房具が意思を持ち自ら動きまわる事にSF作家として理由をつけて欲しかった。
冷艦カマキリ号は面白いアイデアだと思ったが。
第二章の鼬族十種がやはり面白い。
世界史を換骨奪胎して語り直していて楽しい。
地図もついていて、これが味がある。ファンタジー作品に良くある欧米の古地図的な詳細なものではなく、わりと大雑把に見えるが作中に現れる地名はほぼ網羅されている(と思う)し小説を読み進めつつ地図を見るのも楽しい。描いたのは東逸子さんも言う方。
ストーリーは後半、大日本帝国や戦後日本を小馬鹿にして狂信者、あるいはカネの亡者扱いしていた記憶があり、その部分は薄っぺらくて、そのくせ作者が大歴史家ぶっていて鼻についたのだが、今はまだそこまで進んでなくて面白い。
一つ難点としてイタチ属を人間に置き換えたのは目の付け所が凄いのだが、グリソンという馴染のない種を最初に持ってきたのはうまくないと思う。
グリソンというのがどういう生き物か分からずイメージできないので、ここで物語に入れなくなる。
wikipediaで調べても大型のイタチ属らしいが今ひとつどういう種なのか分からない。
指の間に水かきがある、という描写があるので、作者はカワウソのつもりだったのかな、とも思う。
追記 P183に少数民族としてカワウソ、ラッコ、アナグマ、フェレット、ケナガイタチが記述されているのでグリソンはカワウソでは無かった。
ミンク、テン、オコジョ、イズナ、クズリ、ラテル等類似した種類が多いこと、後足で立つので擬人化しやすいこと、肛門腺があって放屁っぽく悪臭を放つ等、イタチ属を選んだのは凄いと思うのだが。
あと鼬という文字の読みがながわからないのでレータ鼬神教という単語には読みがなをつけてほしかった。ちなみに鼬は「ゆう」とよむようだ。
また皓歯族という言葉が貴族、という意味で使われるがこれは「明眸皓歯」からの造語だと思うがちょっとした解説をつけてほしかった。
「明眸皓歯」とは中国唐代の美女、楊貴妃の容貌が目がパッチリ、歯が白かったことから美人を指す言葉として用いられる。
男性向けだと思っていたが間違っていた。男性向けは「眉目秀麗」と言うことだった。