桑炭会 島根県伝統の炭焼き 

松江市八雲町で伝統的な八名窯を継承し炭焼き、販売をしています。
メインテーマは自然環境保全。

黒炭の診断10

2020年08月10日 08時00分20秒 | 活動報告

結     び

 製炭において最も苦心することは、未炭化、収炭率、樹皮付着、縦横割れ、緊(し

ま)り等の問題である。これ等のことを解決していくには先ず木炭がどうしてでき

るのか、その訳を知っておくことが必要である。

 第一に炭窯内部の温度は、天井部と窯底部とでは大変な違いがある。炭窯の内部

で炭材は第1図のような経過をとって木炭になる。即ち排煙温度が約80℃になる

と、窯の内部は枝木部が約450℃になって枝木が炭化し、立炭材は頭部が約300℃に

なって上部が僅かに炭化し始めかけ、自発炭化に移る。しかし立炭材は下方にいく

に従って温度が低く、下部は約50℃しかなくて排煙温度よりも低いものである。そ

して排煙温度が250℃くらいになると下部に約2~3%のみ炭化物を残して炭化が終

わりに近づき、約300℃になってほぼ炭化を終わり、収炭率は約20%余りとなるがま

だ揮発物の多いものである。この時期ごろから精錬を行うと、排煙温度は350~

400℃となり、立炭材の上部付近は700~800℃に昇って木炭の純度が高まり、収炭

率は18%程度となって硬度も上がり家庭用として適当なものになるが、立炭材の下

部の温度は極めて低く、炭化の後期排煙温度が上昇するころようやく昇り始めてこ

れを追抜き500℃内外で消火となる。

 このように炭窯においては、窯底部の温度は天井部に比べて極めて低く、しかも

下方の部分は高温に保たれている時間も極めて短いので、できた木炭の頭部は精錬

も充分で硬度もあるが、下部は精錬の不充分な軟らかい木炭になりがちである。こ

のことをよく知れば、窯底の湿気を除き、熱を平均に循環させて上下の温度差を少

なくすればよいということが分かるはずで、これがよい炭を作るもとである。

 第二に急炭化すれば収炭率を少なくする。炭化の速さは通風排煙の調節操作によ

って違ってくるもので、初めから高い温度を与えて最後まで続けると、炭化が速や

かに行われて発熱反応による分解は激しくなり、生成した生産物は高温部に触れて

第二次分解を起こし、木ガスの発生が多くなって木炭、木酢液、酢酸、木精、木タ

ール等の収得量を少なくする。これに反して徐々に炭化を行ったときには、木ガス

の量を減じ木炭その他の生産物は多くなってくる。このように急炭化したときと

徐々に炭化したときとを比べると、生産物に著しい差ができる。特に収炭率におい

ては約7%も差ができ、収量にすると約20%以上も損になることが分かる。そして炭

質も緊りがなく割れ目が入って悪くなるので、炭化はできるだけ徐々に行うこと

が必要である。(第2図)

 第三に炭化温度が高くなるに従って炭質を向上される。一般に炭化温度が昇るに

連れて、木炭に含まれている酸素及び水素の量が少なくなって炭素の量が多くなっ

てくる。特に400℃~500℃になると著しく酸素、水素の含有量を減少し収炭率が少

なくなる。これは温度が500℃内外になると未炭化分がなくなって、いわゆる木炭

らしくなりその後、酸素、水素を徐々に揮散して僅かに収量を減じつつ炭素に富む

ものとなって品質が向上されるが800℃以上になるとその差は極めて少なくなる。

(第3図)

 これ等のことをよく理解すれば、どうして炭窯をつくり操作をしたらよいかとい

うことが分かり、次の製炭法改良の十二則が如何に必要なことであるかが分かろう。

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