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人間の脳では、79歳になっても新しい細胞が生成されている可能性があるとする研究結果を5日、米研究チームが発表した。先月にはこれと相反する別の研究結果が示されており、人間の知的能力は伸び続けるのか、成長が止まるとしたらそれはいつなのかをめぐって科学界に新たな議論が巻き起こっている。
焦点となっているのは、人間の脳内で学習や記憶をつかさどる「海馬」という部位。先月、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文では、13歳以上の海馬では新たな神経細胞が生成された証拠が発見できなかったとの研究結果が示されていた。
今回、米ニューヨーク・コロンビア大学(Columbia University)の研究チームが米科学誌セル・ステムセル(Cell Stem Cell)に発表した研究結果は、これと真っ向から対立するものだ。高齢化が進む世界の中で、認知症を回避するカギを求める科学者たちから注目が集まっている。
コロンビア大チームは、急死した14歳~79歳の28人の脳の検死解剖サンプルについて、「死亡直後に海馬全体で新たに作られた脳神経細胞と血管の状態」を調べた。
論文の主要執筆者であるマウラ・ボルドリーニ(Maura Boldrini)准教授(神経生物学)によると、「若い人と同様に、高齢の人にも多数の新しい海馬神経細胞を前駆細胞から生成する能力があることが分かった」という。また、「年齢に関係なく海馬の量は等しいことも発見した」としている。
この結果は、高齢者の多くが認知能力や感情能力をこれまで考えられてきたよりも長く保持することができる可能性を示している。ただ、ボルドリーニ氏は高齢者の脳では血管が老化しているため、新しい脳神経細胞同士の連携がうまくいかない可能性があると注意を促している