SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

哀しく愛しき哉

2007年07月04日 00時00分00秒 | ROCK・POPS
★キー・オブ・ライフ
                  (演奏:スティービー・ワンダー)
《DISC1》                《DISC2》
1.ある愛の伝説            1.可愛いアイシャ  
2.神とお話               2.涙のかたすみで 
3.ビレッジ・ゲットー・ランド      3.ブラック・マン
4.負傷(コンチュージョン)       4.歌を唄えば
5.愛するデューク            5.イフ・イッツ・マジック
6.回想                  6.永遠の誓い
7.孤独という名の恋人        7.アナザー・スター
8.楽園の彼方へ            8.嘘と偽りの日々
9.今はひとりぼっち          9.イージー・ゴーイン・イブニング
10.出逢いと別れの間に
11.土星
12.エボニー・アイズ
                  (1976年)

スティーヴィー・ワンダーは天才でした。

いきなり過去形で書いてしまいましたが、どうしても彼が20代のころにあれだけ交信できていたある世界とは、今はコネクトできなくなってしまっているように思われてなりません。
それでもなお、他の追随を許さない独自の世界を持っているとんでもなく懐の深いアーティストであることにかわりはありませんし、当時の曲を演奏するときの彼は旨みも渋みも加えてさらに円熟したパフォーマンスを見せることができるのでしょうから、私も私淑すると共に音楽界の宝だと心底思ってますですよ。

スーパー・ウーマンが入っていた“心の詩”あたりから、“ホッター・ザン・ジュライ”までの一連のアルバムはマジで神様がこの世に授けてくださったものだと思います。

私は“ホッター・ザン・ジュライ”からリアルタイムで聴いているのですが、今にして思えば“レイトリー”は名曲だけどスティーヴィーの匂いが消えかかっていると感じます。
“マーティン・ルーサー・キング牧師”を讃える“HAPPY BIRTHDAY"もコンセプトはそれまでのスティーヴィーそのものであっても、表現の仕方がそれまでとはぜんぜん違ってきていますよね。
“ロケット・ラヴ”とか“マスター・ブラスター”はスティーヴィー節全開で素晴らしいんですけどねぇ~。

この“ワン・モア・ビフォア・30”と呼ばれるアルバムになるはずだった一枚で望ましくない変化の一端を示したものの、ベスト盤“ミュージック・エイリアム”で発表した4曲の新曲はスティーヴィーのスピリットを顕した曲だったんですが・・・その後は元の世界に帰る事ができなくなってしまったようですね。。。(^^;)

やっぱり“心の愛”はまだしも“パート・タイム・ラヴァー”はチョッとね。。。
“オーヴァージョイド”や“ステイ・ゴールド”のように微かにその余韻が聞かれるものもあるにはあるんですが。。。

録音がアナログからデジタルに変化し、クリアに物事を捉えなければならなくなってしまったために、哀しいかな余りにも鋭敏なスティーヴィーの耳はミクロの世界まで誘われてしまったのではないでしょうか?
すぐそこにあった世界、木を見て森を見ずではないですが、音の行方を追いかけて行ったら神の国全体の風景が視界に入りきらなくなってしまったように。

でも、彼が神通力を失ったからといって悲しがることはありません。
スティーヴィーが残してくれた記録には、聖書やコーランのごとく何度噛みしめても新しい発見がある小宇宙が閉じこまれていますから。。。(^^)/

最高傑作と称されるこの“キー・オブ・ライフ”一作をとっても、どれだけの宝物が詰め込まれていることか!

全米No,1は“愛するデューク”と“回想”の2曲。
このノリはこの頃のスティーヴィーの専売特許だったと思います。このグルーヴィーなノリに身を任せるだけで心地よい。
現代音楽のミニマル・ミュージックにも“回想”のようなリフのものがあったようにも思うのですが、音楽の魅力、パフォーマンスともにスティーヴィーの足元にも及ばない。。。
当のスティーヴィーは、バークレーかどっかで逆にクラシック音楽を学んでいたと思いますが。

当時生まれたばかりの子供のことを歌った“可愛いアイシャ”もいろんなCMで使われてみんなが知っているラヴリーな曲だし、とくにこの曲の場合にはエンディングの延々と続くスティーヴィーのハーモニカの泣き笑いをなんと形容していいのでしょうか?
アルバム全編に黒人の人の生活の音がふんだんに入っているのですが、とりわけここでの赤ちゃんの声の罪のなさが愛おしいと思えます。

“イフ・イッツ・マジック”もハープをバックに味わい深い曲。ジャズ・シンガーなどがカヴァーしていますよね。
何故か“永遠の誓い”と邦題が付けられている“As”も名曲だと思います。これも、カヴァー盤には事欠かない。

しかし、私がこのアルバムの白眉だと思っているのは冒頭の“ある愛の伝説”です。
これも邦訳が曲の真意のジャマをしていますけどね・・・。(^^;)
というのは、この曲は「世界中が危機に瀕している」という警鐘を鳴らしている詩なんだけど・・・。
伝説じゃ困るんだよなぁ~。。。
この曲は現代の社会情勢にもそのままピッタリ当てはまります。いえ、スティーヴィーがこのアルバムを発表してからこのかた、ずっと当てはまっているような気さえします。
いつかこの世界の緊張の情勢こそが伝説となり、ジョンのイマジンみたいな世界ができたら・・・そんなことも感じますね。(^^)v


今回、記事で取り上げた経緯は、テレビを見ていたとき車のCMで“Isn't she lovely?”を聞いたから。
この曲の邦題は“可愛いアイシャ”なんですが、“可愛い愛車”とかますつもりで久しぶりに聴き始めたらハマってしまいました。
暑くなってくるとポップス系の昔のディスクの録音の甘さが、気候がかぁ~っとなってるために意識がボーっとなるので気にならなくなるため、このジャンルの音楽も結構聴くようになります。

そして感じたことはといえば、冒頭の一言に尽きます。
スティーヴィーの名前のの表記がスティービーであり、必要以上に曲名が邦訳されていたりしていたころの方が彼は輝いていた・・・これは事実といわざるを得ません。
やっぱり、黒人の地位向上とかを遮二無二目指していたときと比較して、自身のおかれた環境がどんどん豊かになったことが使命感を失わせたのでしょうか?

いずれにせよ、他のスティーヴィーのディスクもまたご紹介することになるでしょう。
今回チョッと辛口の話になってしまったので、そこでは収録されている名曲の、いいところだけを拾った記事にしたいと思います。(^^)/


スティーヴィーの作風、現況、世界情勢・・・すべてが「哀しく愛しき哉」・・・そんな気持ちでこの記事を書いてみました。
アメリカの独立記念日ですもんね。(^^;)


※ink.
                  (演奏:リヴィングストン・テイラー)

                  (1997年)

録音の優秀さでその名を馳せるチェスキー・レコードから出ているこのディスクは、オーディオ好きであればご存知の方も多いかと思います。
そんなわけ(どんなわけかは聞かないこと)で曲名の紹介は省きますが、冒頭に“Isn’t she lovely?(可愛いアイシャ)”がカヴァーされています。

口笛から始まり、歌の出だしの気配・子音のキツさ加減、ギターの音色の潤い・温度感、間奏における2台のギターの音色の違い感や響の絡み具合などなどオーディオ・チェックするのに都合がいい仕掛けがギュー詰めになっているトラックなのですが、何にも増して純粋に歌としての出来映えが素晴らしいのでご紹介しようと思った次第です。

スティーヴィーは生まれたばかりの赤ちゃんを抱きしめいとおしんでいますが、リヴィングストン・テイラーはもっと成長した娘を温かい眼差しで見つめています。
もちろん目の中に入れても痛くない・・・んでしょうね。(^^;)

全編アコースティックで、味わい深い演奏と歌が聴かれますよ。(^^)/

ちなみに、この方のお兄さんはかのジェイムズ・テイラーです。

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