goo blog サービス終了のお知らせ 

ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

2023年8月にテーマ・タイトルを変更(旧は外国語関連)
2015年4月にテーマ・タイトルを変更(旧は健康関連)

はじめに・・・

 gooのサービス終了に伴い移行を迫られているところ、推奨移行先の一つの "Hatena Blog" に本年8月の間に移行中です。移行先のアドレスは:
https://site2508epsilon.hatenablog.com/ となります。(2025年8月記)

 動物の生活様式の本質は遺伝因子に刻まれており、ヒトにおいても難しいことをせずにそのような生活様式を取り入れてみることが健康への第一歩と思います。なぜなら、生物の進化を眺めると、生息環境内で成り立ち得るある種の特徴を持った生態系があり、そこに依存する姿・形が想定する生活様式に倣うことが最も簡単と考えるからです(姿・形は生物側による長期間にわたる最適な変化の蓄積の賜物。例:チンパンジーはツル植物に覆われた密林での果実食に適応し、そのために手及び口の形や移動方法もこれに対応)。
 動物であれば何を食べて生きていくのかということが課題で、生活様式を変えようとすると、野生動物の場合は形質形態を変えるべく遺伝因子の変化を伴います。ヒトはいつの頃からか文化を持つようになり道具・技術を進展させてきましたが、これまでの生活様式を反映した遺伝子による自動制御を活用しないのは勿体ないと思います。(2024年9月記)


 外国語テーマも長く続かずなので、従来の健康ブログに戻してみようかと思いまして・・・ 備忘録的に残しておくと旧タイトルは「タイ語、漢字を使って覚えるの?」でした。(2023.8月記)


 従来の健康ブログ時に記事を書いていて、何故か、そろそろ外国語でも勉強した方がより良いかなーと思いつきまして、以来ちょこちょこと続けてきましたが、なんとなく、ある事を覚えると別の事を忘れてしまうモードに入ってしまったようで、知識量が停滞しつつあるような感じになりました。
 そこで、本ブログを外国語学習ブログに変更して、自分の備忘録的にまとめておこうかなと思いまして・・・。
 しかしながら、少し飽きたのか内容を増やしすぎたのか、書くのに手間がかかるようになり、時間がとれない時は、別ブログ「単語帳の素材?」にてライトな記事を書くことにしました。(この別ブログも徐々にライトでなくなり、記事を500本ほど書いたところで滞り中・・・)
 なお、健康ブログ時代の記事は、コチラの 入り口 からどうぞ。(2015.4月記)
 最近の健康系記事はカテゴリー「タイ語以外(健康2019)」からどうぞ。

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (7-1)

2012年08月22日 |  関連(生物学医学)

 今回も前回記事の続きだけど、その前に、このシリーズのタイトルの変更についてお知らせ。

 従来「コルチゾール過剰症」としていたけど、いろいろ症状があるようなので、「コルチゾール過剰症候群」に変更した。これは、なんとなく気分の問題といえる。

 あと、タイトルの付番の仕方を変更した。これは、夏バテもあり(節電バテ?)、まとめて長い記事を書くのが億劫になってきたので(涼しくならないと書く気が起きない、ではいかんし)、1つの項目を分割して記事をかいても後で検索しやすいようにという趣旨のもの(簡潔に書けばよいのに「ついでに」とか言って長々と趣味の領域を書くからだという意見もあろうが・・・)。

 お知らせは以上で、ステロイド剤(ステロイド系抗炎症剤)の副作用の項目別に、問題の症状へのコルチゾールの関与の仕方、関連する疑わしい症例をあげていこう。

(7) 易感染性

 易感染性へのコルチゾールの関与については、以前の記事(ココ)で触れたように、コルチゾールの基本的な作用には免疫抑制作用があり、このためコルチゾールの過剰は過度の免疫力の低下を招くことが関係している。この点を少し詳しくみると、ラジオNIKKEIの番組サイト「アボット感染症アワー」から、

ステロイド薬長期投与における重症感染症
2010年7月9日放送
http://radio848.rsjp.net/abbott/html/20100709.html (リンクはココ

ステロイド薬の免疫抑制作用
 ステロイド投与により感染症を起こす機序として重要なのは白血球に対する作用です。白血球分画は顆粒球と単核球に大きく分かれ,顆粒球には好中球・好酸球・好塩基球が,単核球には単球とリンパ球があり,リンパ球のなかには,液性免疫に関与するBリンパ球,細胞性免疫に関与するTリンパ球があります。通常は好中球がおおよそ6~7割を占め,リンパ球は2~3割です。

 ステロイド投与によりリンパ球の絶対数が低下します。特にCD4陽性のTリンパ球が減少することが問題となります。その結果、Tリンパ球由来のサイトカイン産生が低下します。例えばIL-1,IL-2,IL-3,IL-6,IL-8など,さらに腫瘍壊死因子(TNF)やインターフェロン-γなども低下します。
 また,これらにより,Bリンパ球の産生低下も来しますので,免疫グロブリンなど抗体の産生が低下します。

 実際にはステロイド投与により,末梢血中の白血球数、特に好中球数が著しく増加します。この作用機序として,好中球が骨髄貯蔵プールから末梢血へ動員されることが要因といわれています。一見するとこれは感染防御に働くように思われます。好中球が感染の炎症部位において働いていれば,問題はないのですが,炎症部位への好中球の遊走能はむしろ抑制されることが指摘されていますので,感染症の遷延化を招くことになります。また単球やマクロファージの機能も抑制されます。

 採血結果を見た時に免疫力の指標として,好中球が増加しているから免疫力が保たれていると思われがちですが,油断してはいけません。白血球分画においてリンパ球の占める割合が減少していることに注意すべきです。

 この内容を簡単に表にまとめると、

表1 白血球に対するコルチゾールの作用
 白血球の種類        コルチゾールの作用
  リンパ球            絶対数の減少(特にCD4陽性のTリンパ球)
  顆粒球             好中球の数の増加、好中球の遊走能の抑制
  単球・マクロファージ     機能の抑制
出典)上記記事。


 また、以前の記事(ココ)で使った表を再掲しておくと、

表2 白血球の役割、種類とその進化(4つの階層)
    役   割      免疫系の区分       白血球の種類
 4 外来の小さい異物を処理  獲得免疫(液性)  進化したリンパ球(胸腺由来T細胞、B細胞) 
 3 自己の異常な細胞を処理  獲得免疫(細胞性) 古いリンパ球(NK細胞、胸腺外分化T細胞) 
 2 外来の細菌を処理      自然免疫      顆粒球(このうち好中球が9割以上) 
 1 基礎的な防衛・司令塔    自然免疫      単球/マクロファージ(単細胞時代の名残り)
出典)安保 徹「免疫革命」(主に第5章)。


 リンパ球については、コルチゾールの作用によりリンパ球数が減少するとされ、液性免疫と細胞性免疫の両方の機能が低下することとなる。細胞性免疫の機能が低下するということは、この記事では触れられていないが、易発がん性も意味することとなる。

 単球・マクロファージについては、その機能が抑制されるとされるが、マクロファージは司令塔の役割を持っており、指令される方のリンパ球数が減るので、ある意味、整合性がとれていると言えるだろう。

 顆粒球については、その大部分を占める好中球は機能の抑制を受けるものの、代わりにその数が増加するとされている(なお、この記事では触れられていないが、好酸球及び好塩基球については、ともにその数が減少するとされている)。好中球全体として機能がどうなるかは定量的に議論しないとわからないが、横ばいか、あるいは増強と推測できるのではないだろうか。

 なぜなら、縄文人が実際に闘争・逃避反応を実行に移す状況では、擦り傷や切り傷が絶えないはずで(逃避にしても、舗装道路上を移動するはずもなく、獣道のようなところを走るわけだろうし)、そうすると傷口から侵入する外来の細菌への防御は、低下させたくないという事情があるからだ。


 ついでに、冒頭リンク先の記事には感染症の内容を説明したくだりがあるので、同記事からその部分を引用しておくと、
 
ステロイド投与中にみられる感染症
 ステロイド投与中に発症または重症化する感染症として代表的なものは,呼吸器感染症と尿路感染症です。代表的な細菌は黄色ブドウ球菌や大腸菌,緑膿菌などが挙げられます。

 細菌以外で注意しなければならない病原微生物は,ニューモシスチス・イロベチです。これは以前はニューモシスチス・カリニといわれ原虫に分類されていましたが、近年は名前が変わり、分類も真菌の一種とされています。カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスなどの真菌や,サイトメガロウイルスやヘルペスウイルスなども重要です。ウイルスに関しては,潜伏感染していたものが免疫力低下により再活性化して感染症を引き起こすと言われています。 

 ステロイドによる易感染宿主における肺炎は特に重要で,ニューモシスチスやウイルス,真菌による日和見感染由来の肺炎は急速に重症化しやすいことから, 早期発見・早期治療が望まれます。たとえば,患者がかぜをひいたと思って,近隣のクリニックを受診した場合,実はステロイドを服用中である事を把握できなかったことで,予後不良の転帰をとることがあります。初診患者などで感染症が考えられる場合は,問診において既往歴、ステロイド服用の有無,用量,服用期間などを聞くことが重要です。

 また,プライマリケアで遭遇することが多い帯状疱疹にも注意しなければいけません。ステロイド投与によるウイルスの再活性化を常に念頭に置き、水泡が悪化する前に治療を開始すべきです。

 この内容を簡単にまとめておくと、

(A) 代表的な感染症は、呼吸器感染症、尿路感染症。
(B) 代表的な細菌は、黄色ブドウ球菌大腸菌緑膿菌など。
(C) 代表的な真菌は、ニューモシスチス・イロベチカンジダアスペルギルスクリプトコッカスなど。
(D) 代表的なウイルスは、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスなど。

 (A)の「呼吸器感染症」については、普通の風邪、インフルエンザあるいは結核などが関連し、ここで解説されている肺炎のほか、喉の痛み、咳、気管支炎、喘息なども出やすくなるのであろう。また、「尿路感染症」については、病原菌との接触のし易さを考えれば、やはり膀胱炎であろうか。

 (B)の3つの細菌、(C)の4つの真菌については関連しそうなwikiのリンクを貼っておいたので、興味があればどうぞ。後者については、いわゆる日和見感染の原因として多くみられるものである。

 (D)については、挙げられているのは要はヒトヘルペス・ウイルスのことだけど、この点については、書き始めると長くなるので、次回へ。


(つづく)

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ストレス反応と副腎機能 (3/3) ステロイド・ホルモン

2012年08月07日 |  関連(生物学医学)

 今回は、人によって言い回しか少しずつ違うので、用語関係を整理しておこう。多分、後で役立つかもしれない(最近忘れぽっいので・・・)。

 中身はそれほどないので、少し脱線。前回の記事で縄文人の話に言及しているけど、その趣旨を紹介しておこう。ブログ「武田邦彦 (中部大学)」から、

幻想の衣食住 その5 宇宙人の体
http://takedanet.com/2007/04/post_4d4e.html (リンクはココ

 DNAは親から子供に伝達されますが、一つの世代の経験はほんの僅かしかDNAの情報には入りません。長い長い人類の歴史から学び取った教訓を、たった一世代の経験で修正するのはあまり適当ではないからです。

 DNAが少しでも、環境にあわせて書き換えられるのには約一万年ほどかかると言われています。ということは、現在のわたしたちのDNAはちょうど、メソポタミアやエジプトの時代の環境の中で作られたと言えるのです。

 環境に合わせてDNAが書き換えられるのに約1万年程かかるらしい。この説が正しとすれば、現代人のDNAは、縄文人を取り巻いた環境がベースになっていると考えられる(縄文時代は12.5千年前~2千年前位)。

 ストレスを受けたときに生体としてどう反応するかはDNAに刻み込まれているわけで、我々現代人のストレス反応は、縄文人が抱えていた種類のストレスを処理するには非常に効率よくできていると考えられる。縄文人の暮らしをまねてみると、身体のキレがよくなったりするかもしれない。玉川学園・玉川大学のサイトから、

縄文人のくらし
http://www.tamagawa.ac.jp/SISETU/kyouken/jomon/index.html (リンクはココ)

 竪穴式住居をまねる必要は全くないだろうが、早寝早起きの生活パターンとか、食物とかは参考になるかもしれないし、ならないかもしれない。

 ただ、ここで問題となり得るのは、現代人が抱えるストレスは、縄文人の抱えていたストレスと同じ種類のものなのか、という点であろう(多分全く種類が違うのではないだろうか。だから、いろいろと現代病が出でくるのであろう。引用した武田氏の記事では、冷房病を現代病の一つと指摘している。いずれにせよ、縄文人は自然放射線しか浴びていなかったことは確かであろう)。

 さて、本題に戻ると、副腎皮質ホルモンは、以前の記事でも触れたけど、次の3種類がある:

(a) 糖質コルチコイド(あるいはグルココルチコイド。代表的なものがコルチゾール)、
(b) 電解質コルチコイド(あるいは鉱質コルチコイド。代表的なものがアルドステロン)、
(c) アンドロゲン(あるいは副腎アンドロゲン。性ホルモンの一種)。

これらは、その化学構造にステロイド骨格をもつものであり、「ステロイド・ホルモン」とも呼ばれている。ステロイド自体の定義は、日本薬学会の薬学用語解説サイトから、

ステロイド (steroid)
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89 (リンクはココ

 ステロイドは、ステロイド骨格と呼ばれる構造をもった化合物の総称で、生体内ステロイドには種々のステロイドホルモンや、胆汁酸、細胞膜の構成に重要な脂質であるコレステロールなどがある。ステロイドホルモンは、その機能から、性ホルモン、糖質コルチコイド(グルココルチコイド)、鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)などに分類される・・・病気の治療に用いられる「ステロイド」は、ステロイドホルモンを配合した薬品(ステロイド剤)のことであり、多くの場合は糖質コルチコイドである。スポーツなどでドーピング問題として取り上げられることがある「ステロイド」は、合成されたタンパク同化ホルモンのことが多い。

 ちなみに、ステロイド・ホルモンに分類される性ホルモンには、次のようなものがある。

(A) アンドロゲン(男性ホルモンとも呼ばれる。代表的なものがテストステロン)
(B) エストロゲン(卵胞ホルモン又は女性ホルモンとも呼ばれる)
(C) プロゲステロン(黄体ホルモンとも呼ばれる)

  以上をまとめておくと、「ステロイド・ホルモン」に分類されるものには、次のようなものがあることとなる。

(1) 糖質コルチコイド
(2) 電解質コルチコイド
(3) アンドロゲン
(4) エストロゲン
(5) プロゲステロン


 ステロイド・ホルモン(あるいは単に「ステロイド」)といって最も有名なのは、上に引用の解説にもあるように、薬剤としてのステロイド系抗炎症剤(SAID。steroidal anti-inflammatory drug。あるいは単に「ステロイド剤」)であろう。これは、糖質コルチコイドを各種の病気の治療薬として利用するものである。サイト「脂質と血栓の医学」の記事から(なお、この記事のタイトルは「ステロイドホルモン」となっているけど、その趣旨は「副腎皮質ホルモン」のようだ)、

ステロイドホルモン
http://hobab.fc2web.com/sub4-Steroid.htm (リンクはココ

5.ステロイド剤
 天然のコルチゾール(ハイドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン)は、糖質コルチコイドとして、強い抗炎症作用を有するが、同時に、電解質コルチコイド活性を有している為、多量に投与すると、体内にナトリウム(Na+)貯留させてしまう。
 コルチゾール(cortisol)の電解質コルチコイド活性を減少させた、合成の糖質コルチコイドが開発され、副腎皮質ステロイドホルモン(ステロイド剤)として、アレルギー疾患などの治療に、使用されるようになった。

 
 ステロイド・ホルモンといてその次に有名なのが、筋肉増強剤としてのアナボリック・ステロイド(anabolic steroid)であろう。その多くは、テストステロン類似物(テストステロンはアンドロゲンの一種)のようである。例えば、日本語wikiから、

アナボリックステロイド (リンクはココ

 アナボリック・ステロイド(anabolic steroid)は、生体の化学反応によって外界より摂取した物質から蛋白質を作り出す作用―すなわち蛋白同化作用を有するステロイドホルモンの総称。
 [中略]

 アナボリックステロイドは筋肉増強剤として使用されることが主で、ドーピング薬物として知られる[2]。短期間での劇的な筋肉増強を実現するとともに、常態で得ることのできる水準を遥かに超えた筋肉成長を促す作用[3]から、運動選手らの間で長年にわたり使用されてきた[4]。
 [中略]

効果と適応
 そもそも生体から分泌される男性ホルモンの代表であるテストステロンの効力を改善するために合成されたことから[8]、そのテストステロンに類似した物質であり[3]、・・・蛋白同化作用を強める働きを持つ。蛋白同化とはすなわち、摂取したタンパクを細胞内組織に変える働き(主に筋肉において)のことである。・・・

 前回の記事でコルチゾールの作用を解説したけど、コルチゾールは、糖分を作るためタンパク質を分解する作用を持つものなので、タンパク異化作用を持つステロイド・ホルモン(カタボリック・ステロイド)であり、アナボリック・ステロイドとは正反対の作用を持っていることとなる。


〔関連記事〕
ストレス反応と副腎機能 (2) 抗ストレス・ホルモン  2012/8/5
ストレス反応と副腎機能 (1) セリエ説  2012/7/31 

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ストレス反応と副腎機能 (2/3) 抗ストレス・ホルモン

2012年08月05日 |  関連(生物学医学)

 先ずは、前回記事のおさらい。副腎ホルモンに関し、細かいことは忘れて要点だけ抜き出し模式的に書くと、
                               
ストレス(刺激)
  ↓        〔SAM系〕     〔闘争・逃走反応向け〕
大脳辺縁系 →視床下部 ──→交感神経節 ─→ ノルアドレナリン
        │         └─→副腎髄質 ──→ アドレナリン、ノルアドレナリン
        │
        │
        ↓                      〔フリージング(すくみ)反応向け〕
       下垂体 ───→副腎皮質 ──→ コルチゾールなど(糖質コルチコイド)
      〔HPA系〕
                                
 外界からストレスを受けると、2つの経路から副腎ホルモンが分泌される。1つは自律神経系に働きかけるもので、視床下部からの指令に基づき交感神経節及び副腎髄質からノルアドレナリン又はアドレナリンが分泌される経路(SAM系)。

 もう1つは内分泌系に働きかけるもので、視床下部からの下垂体を通じた指令に基づき副腎皮質からコルチゾールなどの糖質コルチコイドが分泌される経路(HPA系)。なお以下では、「糖質コルチコイド」については、特段の問題のない限り代表的なものであるコルチゾールと記載することにしよう。

 これらノルアドレナリン、アドレナリン、コルチゾールなどの副腎ホルモンは、ストレスにさらされると分泌されるものなので、「抗ストレス・ホルモン」とも呼ばれている。

8/7追記: ググッてみたところ、「抗ストレス・ホルモン」と呼ばれるより、「ストレス・ホルモン」(ストレスを受けたときに分泌されるとの趣旨だろう)と呼ばれることの方が多いようだが、そのままでいこう。

 

 以前の記事でも触れたけど、SAM系は闘争・逃走反応に、HPA系はフリージング(すくみ)反応に関係している。これらの点について補足しておくと、滋賀医科大学のサイト「痛みと鎮痛の基礎知識」のから(以前紹介したのとは別の頁)、

闘争・逃走反応 (fight or flight response)
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/react-emotion.html#fight-flight (リンクはココ

・「闘争−逃走反応」とは、動物が外敵に遭遇する時には、みずからの生命を守るための原始的な自己防衛本能
・身を守るために。敵が弱そうであれば闘争し、敵が強そうであれば逃走する。
 [中略]
・交感神経緊張が増加し、心拍数が増加し、血圧を上昇し、呼吸を促進し、瞳孔が散瞳する。

フリージング(すくみ)反応 (freezing behavior)
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/react-emotion.html#freezing (リンクはココ

・ストレス刺激により、じっと動かなくなり、外部に対して反応しなくなる。
・血圧も心拍も低下する。

 闘争・逃走反応は、差し迫った危険を回避するための緊急の行動であり、フリージング反応は、危険が接近しているので緊急の行動に備えての待機的な行動と言えるだろう。つまり、これらの反応の目的は、危険に際して生命を守るための防衛行動にある。かつて狩猟採集生活をしていた縄文人あたりがこのような行動を身につけ、その結果他者との生存競争を勝ち残ることができたので、それが遺伝子にしっかりと刻み込まれているのであろう。

 より具体的な場面を想定すれば、野生動物(熊、野犬など)に襲われそうな差し迫った危機的な状況にあるときは闘争・逃走反応が必要とされ、ノルアドレナリンやアドレナリンが分泌されこととなり、野生動物に囲まれた状態のため隠れており今にも危機的になり得る状況にあるときは息を潜めて危険に備える必要があり、コルチゾールなどが分泌されることになる、と考えられる。

 あるいは運動会の100m競争において、スタートめラインに並んで心臓がドキドキしているときが闘争・逃走反応が必要とされる状態に、トラックに出る前に待機している間が息を潜めて来るべき闘争・逃走反応に備えフリージング反応が必要とそれる状態にあたるだろう。

 再度、抗ストレス・ホルモンの働きを以前より詳しい資料で確認しておこう。 ノルアドレナリンやアドレナリンについては(どちらもカテコールアミンの一種であり、まとめて「カテコールアミン」と呼ばれることも多い)、サイト「人体のしくみと働き」(http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/。7. 内分泌系のしくみと働き http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/endcrinetxt.pdf)から引用すると、

                  図表1 アドレナリン・ノルアドレナリンの作用

 ノルアドレナリンやアドレナリンは、体内では通常短時間で分解されていまうので(図1の最下段にあるように体内での半減期は1~3分程度)、長期的に分泌されることで問題が大きいのは、コルチゾールの方であろう。

 続いて、コルチゾールの作用をみていこう。「内科・小児科マリヤ・クリニック」のサイトの記事を参考にすると(ホルモンの働き2・副腎皮質ホルモン http://www.mariyaclinic.jp/b_exsamination/b_r01mcn/mcn/mcn2005/b_r01news0501.htm。リンクはココ)、

   図表2 コルチゾールの作用
      (1) 糖新生・血糖値の上昇
      (2) 脂肪分解促進
      (3) 抗ストレス作用
      (4) 抗炎症作用
      (5) 免疫抑制作用

 コルチゾールの基本的な作用は、3番目の抗ストレス作用と考えられる。野生動物に囲まれ隠れているような危機的な待機状況だと、中には長時間に及ぶこともあるので、普通はお腹がすいてくる。だけれども、お腹がすいて動けないようでは生命の危機なので、お腹がすいても大丈夫なメカニズムになっている。それが、1番目と2番目の作用と解される。
 
 1番目の「糖新生・血糖値の上昇」については、上記サイトから引用すると、

① 糖新生・血糖値の上昇
 筋肉(タン白質)────────→ 肝臓でクリコーゲン合成───────→ 血液中・全身へ
          アミノ酸へ分解              ブドウ糖へ合成

 糖新生は筋肉中のタン白質をアミノ酸に分解して肝臓に運び、グリコーゲンに変えた後、ブドウ糖に合成する働きがあります。コルチゾールが分泌され続けると徐々に筋肉が分解され、筋肉が細くなり筋肉不足を引き起こします。同時に他の臓器でブドウ糖の利用を抑制するので血糖値が上昇します。

 空腹時の血糖値の維持では、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンを分解してグルコースを作る経路がよく知られているけど、グリコーゲンも無尽蔵にあるわけでもない(グリコーゲンの貯蔵量は、一説だと半日程度の活動分程度)。また、脳はエネルギー源として糖分しか利用できないので(他の臓器は脂肪からエネルギーがとれる)、脳にエネルギーを供給するためには血液中の血糖値を維持しておく必要がある。この二つが糖新生が必要とされる理由であろう。

 2番目の「脂肪分解促進」については、上記サイトから引用すると、

② 脂肪分解促進
 グリコーゲン→ブドウ糖でのエネルギーの補給が間に合わない場合、脂肪組織から脂肪を分解して(遊離脂肪酸の状態)、エネルギーに利用します。低血糖症状がおこり遊離脂肪酸値が高くなるのはこのためです。

 この趣旨は、上述のとおり、脳以外の臓器は脂肪分解によりエネルギーが利用できることにある。また、糖新生は主に肝臓でおこなわれるが、糖新生自体にも原材料(主に筋肉)ほかエネルギーが必要であって、貯蔵されたグリコーゲンによるエネルギーが足りなければ脂肪分解によりエネルギーを生産することとなる。更に、分解された脂肪の一部(グリセロール)も糖新生の原材料になり得ることとなる。

 上記の2つの経路の生化学反応については、サイト「脂質と血栓の医学」の次の記事が詳しい。ポイントだけ引用しておくと、

糖新生の経路
http://hobab.fc2web.com/sub4-gluconeogenesis.htm (リンクはココ

【ポイント】
 肝臓は、絶食時等に、糖新生により、アミノ酸等から、ブドウ糖を作り出して、血液中に供給する。絶食時には、アミノ酸(アラニン、アスパラギン酸等)、乳酸、グリセロールが、糖新生の炭素源になる。
 糖新生(細胞質内)するのに必要なエネルギー(NADH2+等)は、脂肪酸をβ-酸化(ミトコンドリア内)すること等によって、生成(供給)される。脂肪酸は、体内では、糖に変換出来ないが、脂肪酸のエネルギーは、糖新生に利用される。・・・
 糖新生の経路が肝臓に存在することにより、肝臓で、脂肪酸をβ-酸化して得られたエネルギーを、グルコースとして蓄積し、他の組織で、利用することが出来る。

 コルチゾールの作用の4番目と5番目は、野生動物に囲まれ隠れているような危機的な待機状況では、即座に生死にかかわらないような活動は、その水準を低下させてエネルギーを節約しようという趣旨だと解される。

 4番目の「抗炎症作用」については、炎症反応の目的は何らかの理由でできた傷を修復することなのだけど、傷を修復するといっても2~3日程度要するわけで、筋肉を分解しているようなエネルギー欠乏時には多少手抜きをした方が進化の過程で有利であったということを意味するものと考えられる。

 5番目の「免疫抑制作用」についても同様で、細胞分裂の異常を見逃してもがんになるのは早くて数年後なので、これも筋肉を分解しているようなエネルギー欠乏時には手抜きをして、危機が去り十分休養している時にまとめて異常分裂した細胞を処理した方が進化の過程で有利であったということを意味するものと考えられる。

 この際、免疫抑制を受けるのは、新しい免疫系(液性免疫)や古い免疫系(細胞障害性免疫)であり、細菌などの外来の異物処理担当の顆粒球(自然免疫)はあまり抑制の影響を受けないものと考えられる(明治大学のサイト「運動と免疫」の記事「ホルモンの影響」 http://www.isc.meiji.ac.jp/~suzui/immunology/hormone.htmlを参照。リンクはココ)。


 前置き(おさらい)の途中のような気もするけど、眠たいのでつづく。

 

============

注) 8/7 追記。

コメント

ストレス反応と副腎機能 (1/3) セリエ説

2012年07月31日 |  関連(生物学医学)

 前回の記事では副腎関係の疾患を取り扱ったけど、多分あれだけだと分かり難かったのではないかと思うので、ストレスと副腎機能との関係をみていくことにより、●の影響下における副腎機能の重要性をみていこう。今回は、広義のストレスに関するハンス・セリエの学説。

 少し手抜きで、先ずは、某掲示板から発掘しておくと、放射能板から、

137 : 名無しに影響はない(中国地方) : 2012/05/02(水) 16:20:01.30 ID:8bCdASiw [1/1回発言]
  なんでもかんでもストレスで片付けられる。
  ストレスと言っときゃいいみたいな。
  そうじゃなくて、みんな根本から身体が弱ってるんだと思う。


139 : 名無しに影響はない(北海道) : 2012/05/02(水) 16:39:03.29 ID:qEyrmbjp [1/2回発言]
  [中略]
  >>137
  ストレスは、万病の元。

  放射線被曝もストレス(身体的なストレスの一種)で、これを「精神的なストレス」と思い込ませるような報道が続くと思うので(>>130もその一つ)、騙されないように注意した方がよいだろう。


141 : 139(北海道) : 2012/05/02(水) 18:02:33.76 ID:qEyrmbjp [2/2回発言]
  ストレス・セリエ説に関する個人的メモ

  ストレス‐せつ 【ストレス説】
  ttp://kotobank.jp/word/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E8%AA%AC  [リンクはココ。朝日新聞のサイト「KOTOBANK」から]

  >セリエが体系づけた学説。ストレッサーとよぶ生体に有害な影響を及ぼす要因にさらされたとき、
  >副腎皮質ホルモンの分泌が増加し(警告反応)、次いで全身の防衛反応が起こり抵抗力の増大した
  >状態が維持され(抵抗期)、しかし後にはこの状態が失われ(疲憊(ひはい)期)、病気になるという説。

  〈ストレス〉 ストレスの仕組み-生物、心理、社会的に見た場合-
  ttp://www.pref.kyoto.jp/health/health/health09_b.html [リンクはココ。京都府精神保健福祉総合センターのサイト]

  >急なストレス反応説 セリエの全身適応反応症候群

  >ストレスという言葉をはじめて用いたカナダのセリエは、生体が外部から寒冷、外傷、疾病、あるいは怒り
  >や不安などの精神的緊張(ストレッサー)を受けたとき、これらの刺激に適応しようとして生体に一定の
  >反応が起こることを発見しました。

  >・・・大きく以下の3期に分けることができます。・・・

  >疲はい期[第3の期]では、適応エネルギーの消耗からストレッサーと抵抗力のバランスが崩れ、再び
  >ショック相に似た兆候を示すことになります。体温の下降、胸腺・リンパ節の萎縮、副腎皮質の機能低下
  >などが起こり・・・


  >慢性のストレス反応説 ホメオスタシスの三角形

  >ストレス刺激は、脳の視床下部というところに伝えられます。視床下部は、交感神経と副交感神経を
  >あわせた自律神経系と内分泌(ホルモン)系を統合し、生体のバランスを維持しています。また、
  >免疫系には、生体に異物が侵入すると、それを攻撃する働きがあります。自律神経系と内分泌系に

  >免疫系が加わり、心身のバランスを保つ機構(ホメオスタシス)が維持されていると考えられますが、過剰
  >なストレスが長期にわたってかかることにより、このホメオスタシスが崩れて病気になることがあります。


  ストレスの3つの段階(2)セリエ説
  2009-08-07
  ttp://ameblo.jp/suponta/entry-10315277905.html
  (内容は上のリンクより落ちるけど、行間があいて見やすいバージョン)


 ストレッサーとは、外部から生体に影響を及ぼす刺激のことであり、ストレスとは、その刺激に適応しようとして生体内で一定の反応がおこって歪んだ状態のことである、といえるだろう。

 セリエの学説によれば、このような適応の反応は「全身適応症候群」と名づけられ、

(1) 警告反応期(ショック相と抗ショック相に分けられ、ショック相はショックに対して適応できていない段階、抗ショック相はショックによる生体防衛反応が高度に現れる段階)
(2) 抵抗期(持続するストレッサーと抵抗力とが一定のバランスをとり、生体防衛反応が完成される時期)、
(3) 疲憊(ひはい)期(適応エネルギーの消耗からストレッサーと抵抗力のバランスが崩れ、再びショック相に似た兆候を示す)、

の3期に分けられている。

 この説によれば、警告反応期には副腎肥大、胸腺リンパ組織の萎縮などが起こり、疲憊期に至ってしまうと、体温の下降、胸腺・リンパ節の萎縮、副腎皮質の機能低下などが起こるとされている。これについては、副腎は、警告反応期にはその機能の活性化がおこるものの、疲憊期に至ると疲弊・消耗してその機能の低下がおこるものと解される。

 もう少し詳しく知るために別のサイトを探すと、滋賀医科大学のサイト「痛みと鎮痛の基礎知識」の次の記事がよくまとまっていると思われる。

ストレス stress
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/react-stress.html (リンクはココ

 ストレスの学説に関し経緯が簡単にまとめられていて、用語の定義のあと、セリエの「汎(全身)適応症候群」、ストレスに反応する生体システム、ストレスに対する自己防衛行動などについて解説がなされている。

 上記リンクの「ストレスに反応する生体システム」部分の要旨を書き出しておくと、
 
 ストレスに反応する生体システム

・ストレス刺激は末梢から感覚神経を介して脳に送られ、情報処理が行われた後、内分泌系、自律神経系、運動系を通してストレス反応が表出される。
(中略)
・ストレス刺激に関する情報は大脳辺縁系で処理された後、神経伝達物質等を介して視床下部へと伝えられる。

視床下部室傍核はストレス応答の司令塔であり、SAM系とHPA系の2つのシステムで担われてる。

SAM axis (視床下部~交感神経~副腎髄質系。sympathetic-adrenal-medullary axis)
副腎髄質や交感神経末端からアドレナリンとノルアドレナリンが分泌される。
・ストレス反応での心拍数の増加、血圧上昇、発汗、血糖上昇、覚醒、闘争反応等の基礎反応の原因となる。

HPA axis (視床下部~下垂体~副腎皮質系。hypothalamic-pituitary-adrenal axis)   
副腎皮質からグルココルチコイド[糖質コルチコイドのこと。主としてコルチゾール]が分泌される。
・グルココルチコイドの作用は血圧上昇、血糖上昇(糖新生の増加)、心収縮力の上昇、心拍出量の上昇、さらにはカテコールアミンの作用に対しては補助作用を示すなど多方面にわたっています。
・ストレス状態におかれた個体にとってグルココルチコイドはカテコールアミン[アドレナリン、ノルアドレナリンの総称]とともに重要な生体防御ホルモンである。

 上記リンクの「ストレスに対する自己防衛行動」部分の要旨を書き出しておくと、

ストレスに対する自己防衛行動

・ストレス反応に対処する戦術に2つの選択肢がある。

(1) SAM系による行動制御→攻撃または闘争・逃走反応

(2) HPA系による行動制御→フリージング

 ・ストレスが強すぎたり、長く続く場合、あるいは、個体がストレスに対処できない場合には、受動的ストレス反応が現れる。闘わずにじっと動かなくなり(フリージング)、行動意欲も減退する。
 ・この時、HPA系が活性化されて、いわゆるセリエの3徴候が出現する。
 ・このタイプのストレス反応では、不安や抑うつなど心理的にはネガティブな面が現れ、さまざまのストレス性疾患が発生する。


 ストレス反応において、副腎が重要な役割を果たしていることがわかるだろう。

============

注)・8/1 誤字脱字修正。

コメント

放射性セシウム137の体内濃縮と関連する疾患

2012年07月28日 |  関連(生物学医学)

 前回の記事ではユーリ・バンダジェフスキー氏のリンゴ・ペクチン論文を紹介したけど、この論文のなかには、放射性セシウム137の体内濃縮の状況について言及がなされている。

Relationship between caesium (137Cs) load, cardiovascular symptoms, and source of food in 'Chernobyl' children -- preliminary observations after intake of oral apple pectin.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=15635491 (要旨)
http://www.smw.ch/dfe/set_archiv.asp?target=2004/49/smw-10219 (全文pdf)

   137Cs mainly concentrates in endocrine glands, pancreas, thymus, and heart.  In these organs,
levels 10 to 100 times higher than those in other organs are found in children [1]. (Introductionの第2パラ)

 放射性セシウム137は、主に内分泌腺、すい臓、胸腺及び心臓で濃縮する。これらの臓器において、子供では、他の臓器に比し10-100倍高い水準で濃縮がみつかっている [1]。


ここで引用されている文献 [1] もバンダジェフスキー氏の論文の一つ。
 
Chronic Cs-137 incorporation in children's organs
Bandazhevsky YI.
Swiss Med Wkly. 2003 Sep 6;133(35-36):488-90.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14652805 (リンクはココ。要旨のみ)
http://www.smw.ch/dfe/set_archiv.asp?target=2003/35/smw-10226 (全文pdf)

その結論を要旨から引用すると、

   We measured the Cs-137 levels in organs examined at autopsy. The highest accumulation of Cs-137 was found in the endocrine glands, in particular the thyroid, the adrenals and the pancreas. High levels were also found in the heart, the thymus and the spleen.

 我々は、死体解剖で調査された臓器での放射性セシウム137の水準を計測した。最も高い放射性セシウム137の蓄積は、内分泌腺、特に甲状腺、副腎、すい臓でみつかった。高い水準は、心臓、胸腺及び脾臓でもみつかった。 


 これらの蓄積しやすい臓器での関連する疾患について、某掲示板での指摘を発掘しておくと、緊急自然災害板から、

272 : 地震雷火事名無し(東京都) : 2012/02/25(土) 16:33:08.72 ID:z+B8QSw/0 [1/1回発言]
 [中略]

  Bandazhevskaya, et al.(2004)によるセシウムが溜まりやすい組織:
  > 137Cs mainly concentrates in endocrine glands, pancreas, thymus, and heart.

  関係しそうな病気は、

  ・内分泌腺(具体的にはこのあたりらしい):
     甲状腺 → 甲状腺機能亢進(バセドー病) or 低下(橋本病)
     副 腎 → 副腎機能亢進         or 低下(アジソン病)
  ・すい臓   → 糖尿病

  ・胸 腺   → 免疫系の変調
  ・心 臓   → 心筋機能低下、[電導]障害、心血管系の障害


 だいたいどこか聞いたことがあるものが並んでいる。少しおさらいをしておこう。

 甲状腺については、初期被ばくでの放射性ヨウ素131による影響が有名だが、長期的には放射性セシウム137による影響が上乗せされることとなる可能性が高いこととなるだろう。なお、甲状腺疾患の詳細については、以前の記事を参照(甲状腺の異常 〔YNNチェルノブイリ報告から〕)。

 副腎は最後に回すことにして、すい臓について代表的な疾患はやはり糖尿病で、これについても詳細は以前の記事を参照してほしい(福島の子供の糖尿病の原因は? (1/2)(2/2))。後の記事に追記した、いわゆるセシウム原因説については、その根拠はこのバンダジェフスキー論文の指摘にあると思われる。

 胸腺については、これも以前の記事で少しとり扱ったけど(交感神経の緊張と自己免疫疾患(膠原病))、進化したリンパ球のうち、T細胞の一部(これらの細胞の生まれは骨髄)が胸腺で成熟することになっており、胸腺が影響を受けるとT細胞の機能にも影響が出て、一番進化した免疫系(外来の小さい異物を処理)の機能にも異常をきたすものと考えられる。免疫力の低下か、あるいは自己免疫疾患と関係することになるだろう。

 心臓については、まだこのブログでは余りまとめていないような気がするけど、ここでは、問題の種類は3つあることだけ指摘しておこう。3つとは、心筋の収縮機能上の障害、心筋(特殊心筋細胞といわれる部分)のペースメーカー機能上の障害、これらの心筋に栄養・酸素を供給する血管系の障害。要は、心臓が止まると大問題なのだけど、その元々の原因として、収縮障害(心筋症)、電導障害(不整脈ほか)、血流障害という3つを概念としては区別しておく必要があるだろう(1番目の障害は次の記事の終わりの部分で少し触れたかも:宮城での心不全、急性冠症候群、脳卒中の増加 2011.3-4月)。

 最後にというか、今回メインの副腎について。先ず、副腎ホルモンの種類については、サイト「役に立つ薬の情報~専門薬学」から、

内分泌系(ホルモン)
http://kusuri-jouhou.com/pharmacology/internal-secretion.html (リンクはココ

副腎
 副腎は腎臓の上にある内分泌腺である。副腎の表層の部分を皮質、内部を髄質という。

・副腎皮質
 副腎皮質から分泌されるホルモンには電解質コルチコイド、糖質コルチコイド、副腎アンドロゲンの三つがある。ただし、副腎アンドロゲンは男性ホルモンの一種なので副腎皮質特有のホルモンということはできない。つまり電解質コルチコイドと糖質コルチコイドを副腎皮質ホルモンという。
   [中略]

 副腎皮質から分泌されるホルモンのバランスが崩れると次の病気を引き起こす。
 アルドステロン症 ・・・
 クッシング病   ・・・
 アジソン病    ・・・

・副腎髄質
 副腎髄質からはアドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の二つのホルモンが分泌されている。・・・

 通常、電解質コルチコイドの代表的なものがアルドステロン、糖質コルチコイドのはコルチゾールとされている。また、副腎髄質から出る2つのホルモンは、まとめてカテコールアミン(略してカテコラミン)とも呼ばれることもある。

 副腎機能関係の病気のうち、アルドステロン症とクッシング病(通常はより広い病態の用語「クッシング症候群」を使うことが多い)は副腎皮質機能の亢進の、アジソン病は副腎皮質機能の低下の問題である。

 放射性セシウム137が蓄積されるとする副腎以外の他の臓器では、いろいろ疑わしい例が報告されているので、副腎だけ特別に何も起こらないと考える理由は少ないように思われる。情報量が少ないので上記の引用では詳細を省いたけど、これらに補足していこう。gooヘルスケアから、

原発性アルドステロン症 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10L30200.html (リンクはココ

原発性アルドステロン症とはどんな病気か
 副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイドホルモンのひとつ、アルドステロンの分泌が過剰になるために起こる病気です。アルドステロンは腎臓に作用し、体のなかにナトリウムと水分を蓄えるために高血圧になります。また、尿のなかにカリウムを排泄する作用をもつため、このホルモンが過剰になると血液中のカリウムが減り、筋力が低下したりします。
 もともとまれな病気と思われていましたが、最近、検査法の進歩に伴い、高血圧症の患者さんの5~10%がこの疾患といわれています。

原因は何か
 副腎皮質の腫瘍(しゅよう)、または過形成(かけいせい)(全体がはれて大きくなること)が原因です。・・・

症状の現れ方
 主な症状は、高血圧と低カリウム血症に起因するものです。高血圧はしばしば臓器障害(血管、心臓、脳、腎臓の障害など)を引き起こします。・・・


前回の記事で栃木の中学生の高血圧の報道を紹介したけど(ココ)、これらの例がこの病気と関連するのかもしれないが、決め手にかくところ(ここまでくると、検査データをみないとよくわからん感じ)。

 

クッシング症候群 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10L30100.html (リンクはココ

クッシング症候群とはどんな病気か
 副腎皮質(ふくじんひしつ)でつくられる副腎皮質ステロイドホルモンのひとつ、コルチゾールが増えすぎるために起こる病気です特徴的な身体所見があり、また高血圧、糖尿病、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、感染症など、さまざまな病気を引き起こします。

原因は何か
 脳の下にある下垂体(かすいたい)に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に出てくるために副腎皮質が刺激されてコルチゾールが増える場合と、副腎皮質に腫瘍ができて、そこからコルチゾールが多く出てくる場合があります。
 まれに異所性(いしょせい)ACTH症候群といって、肺がんや膵臓(すいぞう)がんからACTHが分泌される結果生じる場合もあります。とくに下垂体の腫瘍が原因の場合をクッシング病と呼び、区別されています。

この病気の関連だと、千葉に住む女性からの、少し思い入れのある報告をあげておこう。サイト「みんなのカルテ保管庫」から、

443・444 3/11からの記録
http://sos311karte.blogspot.jp/2012/03/443444-311.html (リンクはココ。カルテ番号が443-444)

写真付きで詳細に報告されていて引用のしようもないので、リンク先でみてほしい。最終的に、クッシング症候群(このうちクッシング病(下垂体腺腫))と判明した模様。


アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症) http://health.goo.ne.jp/medical/search/10L30300.html (リンクはココ

アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)とはどんな病気か
 副腎皮質ホルモンは生命の維持に必要なホルモンで、健康な人では体の状態に合わせて適切に分泌されています。このホルモンが、何らかの原因で体が必要とする量を分泌できなくなった状態を、副腎皮質機能低下症といいます。

原因は何か
 副腎は両側の腎臓の上、左右に2つありますが、両側の副腎が90%以上損なわれるとアジソン病になります。原因として最も多いのは、結核(けっかく)(副腎結核)と自己免疫によるものです。まれにがんの副腎への転移によるもの、先天性のものなどがあります。

症状の現れ方
 副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、男性ホルモンがあります。アジソン病では、主に糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの欠損症状が現れます。現れる症状はさまざまですが、主なものとして、(1)色黒、(2)倦怠感(けんたいかん)、脱力感、(3)体重減少、(4)胃腸症状(食欲不振、便秘、下痢)、(5)低血圧、(6)低血糖などがあげられます。また精神症状(不安、集中力の低下など)や腋毛(えきもう)、恥毛(ちもう)の脱落などもしばしば認められる症状です。
 自己免疫が関係する特発性(とくはつせい)アジソン病の場合、甲状腺疾患や糖尿病、貧血、真菌症などを合併することが多く、これらの症状が現れることもあります。

この病気の症状は、甲状腺機能低下症と重なるものがあるし、更に「自覚症状もはっきりしたものではなく、気がつかないことがほとんどです。」とされ、また、合併症として甲状腺腫もあるので、現状だと、甲状腺異常ぽっい人の中にまぎれているのかもしれないという印象を持っている。そういう中で、区別しやすそうな印象なのは、アルドステロン分泌欠乏での高カリウム血症がからむ例だろうかと思っている。例えば、某掲示板の緊急自然災害板でみかけたものを発掘しておくと、
 
210 : 地震雷火事名無し(北海道) : 2012/02/23(木) 17:38:12.13 ID:T14pn2Ge0 [3/4回発言]
  >447 :地震雷火事名無し(神奈川県):2012/02/23(木) 17:33:31.89 ID:iivfSAh80
  >置換といえば、セシウムとカリウムは体内で同じものとみなされるとケースが有ると聞いたたが、非常に気になる事が・・・
  >自分の回りで、血液検査の結果、「カリウムが高い」と注意された人間が、3人いる
  >「バナナ、キウイ、トマトなんかばかり食べてると、高カリウム血症になりやすいから、気を付けて」と、医者はお決まりの指導
  >(3人とも、それらを殆ど食べない人)思ったのは、昨今の異常なトマトブームの煽り
  >チェルノさんの時は、高カリウム血症はどうだったんだろうか?
  >もしかしたら、これから高カリウム血症類似の人が激増する事を予測しての、伏線なのかもってのは考え過ぎ?
  >「ブームだからって、トマト食べ過ぎたんでしょ?気をつけて下さ」で終わりだもんな
  >一応、このスレに記録として書いておくよ

261 : 地震雷火事名無し(関東・甲信越) : 2012/02/25(土) 12:29:29.24 ID:VfD60hA2O [1/1回発言]
  >>210
  私去年体調悪くて病院で血液検査とホルモン検査したんだけど、カリウム値が基準より少し越えてた…
  アジソン病っていうのもあるから更に詳しくホルモン検査したけどやっぱり高かった…

  ついでにその時血圧測ってるときに不整脈も出てた…
  自覚症状もあったからやっぱり不整脈でてたんだって感じでその場で心電図撮ったけどその時は出なくてわからないままだった。医者曰くこの不整脈の仕方からすると命に関わる不整脈ではないといわれたけど…
  今年になって健康診断での心電図でうまく撮れたみたいで洞性不整脈と診断があったけど、これだけじゃないのかな?
  高カリウムと不整脈が関連してるなんて…


 副腎関係の疾患についても、甲状腺と同様に出てきている可能性がある。ただ、検査でみつけるのは甲状腺関係より難しいと思われるので、各人で留意した方がよいのかもしれない。

 

8/7追記:

 引用したサイトに載っていた副腎皮質関係の疾患を3つ紹介したけど、引用したサイトには載っていなかったが副腎髄質関係の疾患にも一つわりと知られているものがあるので、触れておこう。これは、腫瘍ができて、ノルアドレナリン又はアドレナリンが過剰に分泌されるために起こるものである。gooヘルスケアから、

褐色細胞腫 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10L30500.html (リンクはココ

症状の現れ方
 代表的な症状はカテコールアミンが多く分泌されることによる高血圧、頭痛、発汗過多、代謝亢進(こうしん)、血糖の上昇です。そのほか、動悸(どうき)、やせ、便秘、胸痛、視力障害などもしばしば起こります。
 高血圧などの症状が常にある患者さんもいますが、半数以上の人はこれらの症状が発作的に現れます。・・・

 

〔その他参考のサイト〕

厚生省研究班のサイトから、
副腎ホルモン産生異常症の推定患者数概要
 http://www.pediatric-world.com/asahikawa/fukujin/p05.html
副腎ホルモン産生異常をきたす代表的疾患 - I.アジソン病 
 http://www.pediatric-world.com/asahikawa/fukujin/p06.html

gooヘルスケアから、
高カリウム血症 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10L30800.html
低カリウム血症 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10L30700.html

 

〔その他のサイト〕

「内科・小児科マリヤ・クリニック」のサイトから、
ホルモンの働き2・副腎皮質ホルモン
http://www.mariyaclinic.jp/b_exsamination/b_r01mcn/mcn/mcn2005/b_r01news0501.htm
ホルモンの働き3・副腎髄質ホルモン
http://www.mariyaclinic.jp/b_exsamination/b_r01mcn/mcn/mcn2005/b_r01news0502.htm

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注) 8/7 追記・その他のサイト追加。

コメント

放射線療法の副作用との類似性 (5) 腸失禁 (bowel incontinence)

2012年07月24日 |  関連(生物学医学)

 以前にも別の例を見かけたのだけど、見失ってしまったので、記録しておこう。某掲示板の緊急自然災害板から、

597 : 地震雷火事名無し(家) : 2012/06/23(土) 04:00:33.39 ID:FQvZQfCZ0 [1/1回発言]
  やっぱり影響来てるね
>60 名前:番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です[] 投稿日:2012/06/23(土) 03:59:08.30 ID:1GWGHTxq0
>去年、当時36歳でウンコ漏らしたからな…まさかこの歳でと思ったわ

601 : 地震雷火事名無し(関東・甲信越) : 2012/06/23(土) 07:16:29.81 ID:I4eGrgVfO [1/1回発言]
  >>597
  俺も昨年似たような事があった。風呂場で湯舟の中でオナラしたら、その拍子にウンコまで出た(笑)


 これについては、以前の記事(ココ)で紹介した、英国の政府系の国民健康サービス(National Health Service、NHS)のサイトで解説されている次の事項と関連する可能性があるだろう。

Radiotherapy - Long-term side effects 放射線療法 - 長期的な副作用
http://www.nhs.uk/Conditions/Radiotherapy/Pages/Side-effects2.aspx (リンクはココ

Bowel incontinence 腸失禁

Bowel incontinence, sometimes known as faecal incontinence, is a rare side effect of radiotherapy to the pelvis. It is the inability to control your bowel movements which can result in faeces (stools) leaking from your rectum (back passage).

腸失禁(ときには便失禁としても知られる)は、放射線療法による骨盤への稀な副作用の一つである。それは、腸運動を制御することの不能であり、糞便が直腸から漏れてくるようになることがある。


 腸失禁でググルと、株式会社エスアールエル(東京の臨床検査会社)のサイト「症状百科」が出てくるので、そこから一部引用すると、

腸失禁
http://www.syojo.jp/HouseCall/encyc/1/55/60_0_0_0.html (リンクはココ

定義
腸管の調節ができなくなること(非意図的な排便)。尿失禁も参照してください。腸失禁はガスの排出にともなう大便の漏れから、完全な腸管の調節障害までの範囲におよびます。

(中略)

一般的原因
- 慢性の便秘や直腸内で固化した便から、下痢が生じ固化した便の周囲からの失禁が起こる(糞便失禁も参照)
- 激しい下痢により、便のコントロール能力を越える
- 未知の環境のストレス
- 腸の膨満感に対する知覚の鈍麻
- 神経または筋肉の損傷(卒中、外傷、腫瘍、放射線照射による)
- 情緒的傷害(心理学的)
- 産婦人科、前立腺、直腸の手術
- 重い痔疾または直腸脱
- 結腸切除術または腸管切除術
- 慢性の下剤乱用 (強調は引用者)


一応、日本語ウェッブでも、腸失禁が放射線照射による副作用に含まれることが確認できるようだ。

 滅多にあるとは思わないが、漏らしたくない人は、対策を続けた方がよいのかもしれない。冒頭で触れた最初にみかけた例では、本人はその後落ち込んで寝込んでしまったと報告されていたと記憶している。


〔関連記事〕
放射線療法の副作用との類似性 (4) 症状のまとめ  2012/6/11 (既出)

コメント

放射線療法の副作用との類似性 (4) 症状のまとめ

2012年06月11日 |  関連(生物学医学)

 ●の影響は、酸化ストレスによる障害が主体であるとされているが、一般にはよくわからないとされている。このため、この障害の傾向をあぶり出すため、ここ数回の記事では、酸化ストレス障害が副作用を招いている治療法、特に放射線療法に、先ず焦点をあててみてきた。

 具体例を二つみたので、今回は、放射線療法の副作用を広く浅くまとめておこう。何かを探すときに役立つと良いかな、と考え個人的にまとめるものなので、多分読み物としては面白くないだろうから、先に断っておこう。 

 先ずは国内のサイト。国立がん研究センターのサイト「がん情報サービス」の以前に紹介した記事から、副作用の症状だけを項目的に列挙してみると、

放射線療法総論
更新日:2006年09月14日
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/radiotherapy.html#prg8_1 (リンクはココ

8.副作用
1)急性期の副作用

    (1)全身的な副作用
     ・疲れやすい
     ・食欲がなくなる
   ・貧血、白血球減少、血小板減少
   ・皮膚の変化

  (2)治療している部位におこる可能性のある副作用

・頭部 (頭痛、耳痛、めまい、脱毛、頭皮の発赤、吐き気、嘔吐などの症状)
・口腔、頸部 (口腔、咽頭、喉頭の粘膜炎による飲み込みにくさ、飲み込む時の痛み、声がかれるといった症状。その他に口の乾燥、味覚変化)
・肺、縦隔 (食道炎による飲み込みにくさ、飲み込む時の痛みや、放射線肺臓炎による咳、発熱、息切れ)
・乳房、胸壁 (食道炎による飲み込みにくさ、飲み込む時の痛みや、放射線肺臓炎による咳、発熱、息切れ)
・腹部、骨盤 (吐き気、嘔吐、腹痛、下痢といった症状。膀胱炎症状である頻尿、排尿困難)

2)晩期の副作用

(1)  頭部(難聴、顔面神経麻痺、脳障害、下垂体機能低下など。白内障、網膜症など)
(2)  口腔、頸部(皮膚に潰瘍、皮下がかたくなる。唾液腺の機能が低下して口が渇く。味覚の異常。軟骨や下顎骨に炎症。躯幹・四肢の麻痺やしびれる脊髄症。甲状腺機能低下)
(3)  肺、縦隔(肺が線維化し機能が低下。食道が細くなり、食事の通りが悪くなる。心臓の周りに液体がたまる心外膜炎。脊髄症)
(4)  乳房、胸壁(乳房がかたくなる。肺の線維化。腕がむくむ。上腕神経に障害をおこして、腕、手がしびれたり、力が入らなくなる。肋骨の骨折)
(5)  腹部、骨盤(直腸・結腸の内腔が狭くなり、潰瘍、出血。膀胱壁がかたくなり、容量が小さくなる。血尿。リンパの流れや血液の流れが悪くなり、下肢がむくむ。不妊。肝臓や腎臓の機能が低下)

3)二次がんの発生

 

 同サイト内の別の記事からも、副作用の症状を項目的に引用すると、

放射線療法を受ける方へ
更新日:2006年10月01日
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/attention/radiotherapy.html (リンクはココ

2.副作用・合併症

1)皮膚炎(皮膚の乾燥やかゆみ、ヒリヒリ感、熱感、色調の変化(発赤(ほっせき)、色素沈着、色素脱失)、むくみ、表皮剥離(はくり)など)
2)脱毛
3)口内炎、口内乾燥(口の中が荒れたり、むくんだり、乾燥したりする)
4)咽頭・食道炎(粘膜炎により、食事の際に違和感や痛み)
5)嘔気・嘔吐(消化機能が低下し、吐き気や嘔吐)
 (参考)放射線宿酔(しゅくすい)(照射開始後の数日間に食欲低下や嘔気・嘔吐)
6)下痢
7)倦怠感(体がだるくなったり、疲れやすくなる)

 

 ついでに、前回の記事で触れた「国立病院機構 大阪医療センター」のサイトの関係記事のアドレスも置いておこう。

6. 放射線治療の有害事象
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/housyar.html#housyar_06 (リンクはココ

 

 項目を列挙しただけでは少し分かりにくいので、簡潔に表形式でまとめたものを探してみると、民間系のサイト「ガン患者の集い」から(「放射線療法 - 癌治療(がん治療)の三大療法について」 http://www.gan-joho.com/chiryou/chiryou03.html リンクはココ)、


                    図  放射線による副作用(放射線障害)


 ちょっと毛色は違うけど分かりやすくしようと図を掲載している、株式会社エビデンスのサイト「がんサポート情報センター」の次の記事も情報量が多くはないけど、役に立つかもしれない。

放射線治療による副作用とその対策  2005年10月号
http://www.gsic.jp/measure/me_04/23/index.html (リンクはココ


 ついでに、gooヘルスケアから、放射線関連の項目のアドレスを置いておこう。

放射線皮膚炎 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10O50600.html (リンクはココ
放射線肺炎  http://health.goo.ne.jp/medical/search/10760300.html (リンクはココ
放射線腸炎  http://health.goo.ne.jp/medical/search/10G30200.html (リンクはココ


 次に、海外のサイト。先ずは米国の政府系からで、国立がん研究所(National Cancer Institute、NCI)の冊子

Radiation Therapy Side Effects [放射線療法とあなた]
http://www.cancer.gov/cancertopics/coping/radiation-therapy-and-you/page6/AllPages (リンクはココ

この冊子は別のサイトにて和訳が提供されている。サイト「海外癌医療情報リファレンス」から、

放射線治療とあなた
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_pamphlet/index.php/09radiation_therapy/page01.html (リンクはココ。関連するのは第6章~第9章で、章のタイトルをクリックすると該当頁へ飛べる。なお、感情の変化は、ここでは副作用とは明記せず第5章に)

ちょっとした解説が付いている項目を列挙しておくと、

第8章 放射線治療の副作用とその対処法 (リンクはココ
    * 下痢
    * 倦怠感
    * 脱毛
    * 口内の変化
    * 嘔気・嘔吐
    * 生殖能の変化
    * 皮膚の変化
    * 嚥下障害
    * 尿と膀胱の変化
第9章 放射線治療の晩期副作用 (リンクはココ
    * 脳の変化
    * 不妊症
    * 関節の変化
    * リンパ浮腫
    * 口内の変化
    * 二次癌


 米国の民間系のサイトからだと、以前にも言及したアメリカ癌協会(American Cancer Society)の作成した冊子

Understanding Radiation Therapy [放射線療法を理解するために]
http://www.cancer.org/Treatment/TreatmentsandSideEffects/TreatmentTypes/Radiation/UnderstandingRadiationTherapyAGuideforPatientsandFamilies/index (英文のみ。リンクはココ

共通する副作用と照射部位別の副作用とに分類し、それぞれちょっとした解説がついている。共通する副作用は6項目あり、それらは、

疲労(fatigue。一部を以前の記事で扱った)、
皮膚の問題(skin problems)、
脱毛(hair loss)、
血球数の変化(blood count changes)、
摂食障害(eating problems)、
感情の変化(How will I feel emotionally?)

 

 ついでに、英国の政府系からだと、国民健康サービス(National Health Service、NHS)のサイトから、

Radiotherapy - Common side effects - NHS Choices
http://www.nhs.uk/Conditions/Radiotherapy/Pages/Side-effects.aspx (英文。リンクはココココ

解説が付いているので、参考までに項目のみ列挙すると、

Common side effects (共通する副作用)
    * sore skin (潰瘍のある・ただれた皮膚)
    * tiredness (倦怠感)
    * feeling sick (嘔気)
    * dry mouth (乾燥した口)
    * loss of appetite (食欲低下)
    * diarrhoea (下痢)
    * hair loss (脱毛)
    * discomfort on swallowing (飲み込み時の不快感)
    * a lack of interest in sex (性欲減退)
    * stiff joints and muscles (痛い・こわばる関節・筋肉)
Long-term side effects (長期的な副作用)
    * effects on fertility (生殖能力への影響)
    * cosmetic changes to the skin (皮膚の表面的な変化)
    * tiny cracks in your pelvic bones (pelvic insufficiency fractures) (骨盤骨の微小なひび (骨盤不全骨折))
    * an inability to control your bowel (bowel incontinence) (腸の制御の不能(腸失禁))
    * swelling in your arms or legs (lymphoedema) (腕や足の腫れ(リンパ浮腫))


 最後に英国の民間系からだと、以前の記事でも言及した「Cancer Research UK」のサイト「CancerHelp UK」から、

Radiotherapy side effects
http://cancerhelp.cancerresearchuk.org/about-cancer/treatment/radiotherapy/side-effects/ (リンクはココ

ここも、共通する副作用と照射部位別の副作用とに分類し、それぞれちょっとした解説がついている。

 とりあえずこれぐらいにしておこう。


《その他参考サイト》

英国のサイト「Macmillan Cancer Support」から
General side effects of external radiotherapy
http://www.macmillan.org.uk/Cancerinformation/Cancertreatment/Treatmenttypes/Radiotherapy/Sideeffects/General.aspx


〔関係記事〕
放射線療法の副作用との類似性 (1) 序  2102/6/5

=================

注)7/24 一部訳追加、リンク追加。

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放射線療法の副作用との類似性 (3) 感情の変化(症状)

2012年06月09日 |  関連(生物学医学)

 天気がよくなかったので、放射線療法の副作用との関係について、もう一つ具体例を挙げておこう。メンタルな症状(あるいは病的でなければ、感情の変化)をみておこう。

 その前に脱線して、余り関係がないかもしれないけど、不思議な記事なので紹介しておこう。日経新聞の記事から、


精神疾患治療、訪問で後押し 医師ら、未受診者など対象 重症化防止へ診療促す
2012/6/7付
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO42290170X00C12A6NNSP01/ (リンクはココ

 精神疾患の治療を中断した人や、その疑いがあるのに受診しない人のもとを医療チームが訪問する「アウトリーチ」の取り組みが広がっている。外来治療につないで重症化を防ぎ、地域で生活できる状態にすることが狙いだ。厚生労働省は昨年度、全国でモデル事業を開始。東日本大震災で被災した人たちの心のケアにも取り入れられている。

 [中略]
 アウトリーチは東日本大震災の被災地でも取り入れられている。

 福島県では、東京電力福島第1原発事故の影響で、30キロ圏内の5病院、計900床の精神病床が閉鎖。その大半は今も使用できない状態が続いている。

 福島県立医大は震災直後から、原発以北の相双地域でボランティアとともに被災者の心のケアにあたった。同大学教授らは継続的な活動を目指して特定非営利活動法人(NPO法人)を設立。今年1月、「相双広域こころのケアセンターなごみ」を開設し、相馬市や南相馬市、新地町でアウトリーチを始めた。

 センター長の米倉一磨看護師(38)によると、これまでに、震災の影響で新たに精神症状が表れた人や、通院できなくなった患者など約20人を訪問したという。

 センターは福島県の「心のケアセンター」の委託を受け、仮設住宅の入居者や自治体職員の心のケアにも取り組む。NPO法人副理事長の大川貴子・県立医大准教授は「家は無事でも帰れる見通しが立たなかったり、仕事を失いアルコールに頼ったりするなど、今後深刻化が予想される問題は多い。長期的な対応が必要だ」と話している。 (強調は引用者)

 個人的にこの記事が不思議だと思う点は、二つある。一つは、この記事で取り上げられた「アウトリーチ(訪問支援)」は、本来は自殺・うつ病対策の側面があるのだけど(厚労省サイトの「自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて」 http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2010/07/03.html を参照。リンクはココ)、その点に全く言及がない点である。何か自殺・うつ病を前面に出したくない理由でもあるのか、とも考えてしまう。

 もう一つは、住民に対しSPEEDI情報を隠蔽した福島県の下部機関(福島県立医大)が、3.11直後から取り組みを開始し、長期的活動を見こして今年の1月にはNPO法人まで設立している点である。かなりスピーディ。何故だろうか。それに、対象地域も何故か原発の北側のみ。

 余り考えすぎるのもよくないので、本題に戻ろう。

 先ずは一般的な質問から。がんを患うことにより、患者にメンタルな症状は起こり得るのか?

 この答えは当然「Yes」である。なぜなら、がんの告知を受けたことによる精神的ショックや、がんの病状が続いていることに伴う精神的影響があり得るからである。このようなため、我が国では、かつて、患者のためを思ってがんの告知しないという考え方が主流だったこともあった。

 では、次の質問。がんを治療するための放射線療法の副作用としては、メンタルな症状はあり得るのか?

 仮にあったとしても、前回の記事を読んだ方なら、国立がん研究センターのサイトを探してもないだろう、と気づくはずだ。倦怠感を「毎日外来通院してくる疲れ」かもしれないとするなど、副作用を小さくみせるような解説がなされる雰囲気の中で、あえて言及される可能性はほとんどないだろう。なぜなら、黙っていれば、がんを患うことに伴うメンタルな症状と混同されて、区別がつかない可能性があるからだ。

 実際、メンタルな症状は放射線療法の副作用として位置付けしないとの合意でもあるかのように、日本語ウェッブを調べても、なかなか見つからない。

 では、見つからないというのは、ないということなのだろうか。

 いや、残念ながらそうではない。調べる角度を変えると、不完全ながらも、断片情報が出てくる。治療推進側の視点から書かれたものではなく、患者本人やその家族をいたわる視点で書かれたものを探す必要があるのだ。「国立病院機構 大阪医療センター」のサイト内にある、がんサポートチーム作成の患者・家族向け冊子から、


4. 精神的に不安になったり落ち着かなくなったとき
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/support/main.html#4 (リンクはココ

 がんの治療を受けておられる方に精神的な面で悩まれることもたびたびあります。

急に落ち着かなくなった、不安がっている、言っていることが変だ

 がんの治療を受けておられる方の3割から8割の方に、突然まわりの様子や時間、今いる場所が分からなくなり混乱されることがあります。夜なのに朝だといったり、誰もいないのに人が入ってきたように感じられたり、ご家族の顔が分からなくなったりします。不安も強くなり、点滴に毒が入っていると思い、点滴を抜いたり、ベットから落ちて怪我をすることもあります。このように意識や注意、知覚、思考が乱れる症状が急激に起こる状態をせん妄といいます。せん妄は炎症や感染で熱が出たり、脱水や塩分のバランスが崩れたり、肝臓、腎臓の機能が落ちたり、薬が体に合わなくなったりしたときに起こります。体が原因で起こる一時的な精神症状であり、認知症(痴呆)とは異なり、適切な治療により回復します。・・・

ゆううつになる、やる気がしない、眠れない、寝てもすぐに目が覚めてしまう、そわそわする

 がんの治療を受けておられる中で、無気力になったり、ゆううつな気分が続いたり、眠れなくなる、寝てもすぐに目が覚めてしまう、体がだるくて仕方がないことはしばしばあります。気分が落ち込むことはよくあることです。しかし、いつまでたっても気分が沈んだままで普段の生活ができなくなったり、治療が進められない場合、うつ病が原因となっているときがあります。がんの治療を受けておられる方の4人に1人がうつ病になるともいわれています。・・・ (強調は引用者)

 なるほど。せん妄のほか、無気力、ゆううつ、不眠、体のだるさ、気分の落込み、うつ病。

 但し、この文章には、ちょっと注意が必要である。治療法が、放射線療法なのか、化学療法なのか、あるいは別の他の療法なのか、明確でないからである。やはり、海外サイトの情報に頼る必要があるようだ。

 海外サイトをみてみよう。前回の記事で紹介したアメリカ癌協会(American Cancer Society)のサイトからだと、

Common side effects - How will I feel emotionally?共通する副作用 - 感情的にはどのように感じますか?
http://www.cancer.org/Treatment/TreatmentsandSideEffects/TreatmentTypes/Radiation/UnderstandingRadiationTherapyAGuideforPatientsandFamilies/understanding-radiation-therapy-emotions (リンクはココ

Many patients feel tired due to the radiation therapy, and this can affect emotions. You also might feel depressed, afraid, angry, frustrated, alone, or helpless.

 多くの患者は放射線療法のために疲労を感じます。これは感情に影響を与えることができます。また、抑うつ、恐れ、怒り、不満、孤独、または無力感を覚えるかもしれません。 (訳は引用者)


いろいろ出てきた。抑うつ、恐れ、怒り、不満、孤独、無力感。また、放射線療法→副作用としての倦怠感→感情の変化という経路もありそうだ。

 もう少し詳しい内容がないかを調べてみると、英国の「Cancer Research UK」のサイト「CancerHelp UK」から、

Emotional effects of radiotherapy [放射線療法の感情への影響
http://cancerhelp.cancerresearchuk.org/about-cancer/treatment/radiotherapy/side-effects/general/emotional-effects-of-radiotherapy (リンクはココ

Feelings and emotions you may have

"During my radiotherapy I became very emotional. I'd start crying for no reason." This is how one woman reacted.

Other people say they feel low or depressed a couple of weeks after their treatment has finished. It is very common to feel anxious and depressed during treatment. Many people having radiotherapy share these feelings. You may have a whole range of feelings - from anxiety, fear, hopelessness, anger to depression. These feelings are all common during treatment for cancer. Radiotherapy can make you tired and this can make it feel even harder to cope.
 
あなたが持つかもしれない感覚と感情

 「放射線治療の間、私は非常に感情的になりました。理由もなく泣き始めました。」 これはとある女性の回答です。

 他の人々は、治療が終了した後数週間、気分の低下あるいは抑うつを感じると言っています。治療中に不安と抑うつを感じることは、非常に一般的です。放射線治療を受けた多くの人々は、これらの感情を共有しています。あなたは、次の感情を全て感じるかもしれません - 不安から、恐怖、絶望、怒り、うつ病まで。これらの感情は、がんの治療中によくみられます。放射線治療では倦怠感が起こることもあり、その場合は対処することが一層難しくなり得ます。 (訳は引用者)


以上の解説をみれば、放射線療法の副作用として、感情の変化(あるいは病的なものであればメンタル症状)があることは明らかではないだろうか。


 仮に読者の方が健康・公衆衛生関係の公務員だとして、何らかの理由により、地域の住民の間でうつ病がはやる可能性があると想定される場合、何をしなければならない、と考えるだろうか。

 自分がその立場であれば、人材を確保できるなら地域の精神科医を増やす方法がよいのかもしれない、あるいは医療関係者を院外に飛び出させ住民の中に入っていって活動をさせる方法がよいのかもしれない、とかを考えるだろう。

 いろいろ考えてみると、冒頭の記事との繋がりがみえたような気がするが、単なる思い過ごしであろうか。


〔関連記事〕
ぜんそく、胃潰瘍、PTSDなど精神的疾患は関連するのか・・・  2012/5/27
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放射線療法の副作用との類似性 (2) 倦怠感

2012年06月07日 |  関連(生物学医学)

 時間がないので少し手抜きで、放射線療法の副作用との関係について、一つ具体例を挙げておこう。

とりあえず、倦怠感との関係をみてみよう。疲労や疲れやすさ(易疲労性)とかは、同じカテゴリーとみてよいだろう。

 先ずは、我が国の国立がん研究センターのサイト「がん情報サービス」から引用すると、

放射線療法総論
更新日:2006年09月14日
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/radiotherapy.html#prg8_1 (リンクはココ

8.副作用
 1)急性期の副作用
 (1)全身的な副作用
  ・疲れやすい

 個人差がかなりあり、全く感じない人もいれば、非常に疲れを感じる人もいます。放射線治療中の疲れは、放射線による直接の影響ばかりでなく、身体の中にがんがあることによりエネルギーをたくさん消費していることや、毎日外来通院してくる疲れなどが加わっておこるものです。疲れを感じたら休息するのが一番で、治療中は過度な運動は避け、体調に合わせた生活を心がけることが大事です。治療中に感じた疲れは、治療が終了して数週のうちには感じなくなります。

かなり軽く触れられいる。果たして本当だろうか。

 こんな時は、海外ソースにあててみると何か分かるかもしれない。特に、訴訟が頻繁に起こされる国だと、余り隠し事をするのは危険だろう。ということで、American Cancer Society(アメリカ癌協会)のサイトの資料「Understanding Radiation Therapy: A Guide for Patients and Families」(放射線療法を理解する - 患者及びその家族のためのガイド)から、

Preventing and managing side effects - Fatigue
http://www.cancer.org/Treatment/TreatmentsandSideEffects/TreatmentTypes/Radiation/UnderstandingRadiationTherapyAGuideforPatientsandFamilies/understanding-radiation-therapy-fatigue (リンクはココ

Fatigue is the feeling of being tired physically, mentally, and emotionally. It is very common with cancer and its treatment, and often happens with radiation therapy. Managing fatigue is an important part of care for you and your loved ones.

Fatigue means having less energy to do the things you normally do or want to do. It can last a long time and can get in the way of your usual activities. It is different from the fatigue of everyday life, which is usually short term and relieved by rest. Cancer-related fatigue is worse, and it’s more distressing. It may not get better with rest. Cancer-related fatigue can:

    * Differ from one day to the next in how bad it is and how much it bothers you
    * Be overwhelming and make it hard for you to feel good
    * Make it hard to be with your friends and family
    * Make you less able to keep up your normal activities, including going to work
    * Make it hard to follow your cancer treatment plan
    * Last different lengths of time, which makes it hard to guess how long you will have it

Only you know if you have fatigue and how bad it is. No lab tests or x-rays can diagnose or describe your level of fatigue. ...

けっこう重そうで、なんか少し違う気がしてくる。ちなみに、その和訳は、面倒なので機械翻訳をベースにすると、

 疲労は、精神的、物理的又は感情的に疲れていることの感覚です。それは、がんとその治療において非常に一般的であり、しばしば放射線療法で起こります。疲労を管理するには、あなたとあなたの愛する人のためのケアの重要な部分です。

 疲労は、普段している事ややりたい事をするためにより少ないエネルギーを有することを意味します。それは長い時間続くことができ、あなたの通常の活動の邪魔になることができます。それは日常生活の疲労とは異なり、これは通常短期的であり、休息で取り除かれます。癌に伴う倦怠感はより悪質で、より苦しいものです。それは休息により回復しないかもしれません。癌に伴う倦怠感は、

・それがどのように悪いか、どれだけあなたを悩ますかは、一日一日が異なります。
・圧倒的なもので、あなたが快適に感じることを困難にします。
・友達やご家族と一緒にいることを困難にします。
・仕事に行くなど、通常の活動を維持することを困難にします。
・あなたのがんの治療計画に従うことを困難にします。
・ 時間の長さが異なって継続するので、あなたがどのくらい続くかを推測することを困難にします。

あなたが知りうることは、あなたが疲労を持っているかどうか、それがいかに悪いか、ということのみです。どんな臨床試験やX線検査でも疲労の水準を診断したり記述することができません。・・・


 この病態は、誰かが語っていたアレに似ているような・・・


〔関連記事〕
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放射線療法の副作用との類似性 (1) 序  2012/6/5

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放射線療法の副作用との類似性 (1) 序

2012年06月05日 |  関連(生物学医学)

 酸化ストレスによる障害について生体のバランス論の観点から眺めるという、免疫学に関する安保説の話は、前回の記事で一旦終わりにして、ちょっと別の観点から、●の健康影響を眺めてみよう。

 以前の記事で、放射線被曝は、電離による直接損傷と酸化ストレスによる障害を招き、その影響は主として後者のものであるということをみた(詳細は、電離の直接障害と酸化ストレス障害)。酸化ストレスは、主に活性酸素によるものであった。一般に、●の健康影響はよく分からないとされているので、このブログの目的の一つは、ある症例が何故起きているのかということを眺めることにあるのだけど、この観点からすると、この酸化ストレス障害の話をキーワードにして、何か理解を広げていけないだろうか、ということが思いつく。

 このような考え方に基づく見解を、某掲示板の緊急自然災害板から発掘すると、

933 : 914(東京都) : 2011/11/23(水) 00:57:12.14 ID:oF70UWLN [1/2回発言]
  [中略]

  怪しい症状が出てきた際、それが放射線の被爆の影響かどうかを判断する際に参考にする情報は、
  自分の場合、まず、
  (1) 過去の経験から学ぶ、次に、
  (2) 栄養分の欠乏症を探してみる、あとは

  (3) 放射線治療の副作用をあたる、暇なら
  (4) がん化学療法(抗がん剤)の副作用をあたる、という感じだろうか。

  (1)は当然の話で、原爆被爆者、スリーマイル、チェルノブリとある訳だし。
  チェルノブイリ関係では、やはりヤコブロフ・ネステレンコ報告が充実しているだろう。
  ただ、同報告も、人の生き死に繋がりにくいものについては情報が少ない(例えば、鼻血)、また、
  皮膚症状については、余り病名が出てこないので具体的によくわからんというものもある。

  (2)については、対策が簡単かもしれないので、押さえておいた方がよいだろうという趣旨。
  栄養分の不足がおきる理由は、>>815参照。不足しやすいのは、ビタミン類、ミネラル類あたりだろうか。

   ビタミンが足りないと大変!     ttp://www.health.ne.jp/library/5000/w5000123.html
   もっと知りたい!ミネラルの役割  ttp://www.health.ne.jp/library/3000/w3000809.html

  (3)については、医療行為とはいえ、放射線被爆な訳だから、関係があるかもしれない。
  かなりの高線量の場合なので注意が必要だけど、大規模集団での低線量被爆の場合(感受性の幅が広い)、
  低線量だが内部被爆ありの場合に、似たようなことが起きるかどうかは分かっていない訳で、参考にはなろう。

  (4)については、酸化ストレス繋がりによるもので、関係があるかもしれない。
  抗がん剤の副作用については、抗がん剤やそれが生体内で分解される際にできる物質(代謝生産物)が
  活性酸素を産生し、生体内で酸化ストレスが増大することが原因の1つといわれている。

   がん治療時の副作用緩和に健康食品が役立つメカニズム 2006年2月 4日
   ttp://www.de-pain.net/?p=417 [リンクはココ。小松靖弘氏(医学博士)の公式サイトの記事から]
   >「抗がん剤を投与したり放射線を照射したりすると、患者さんの体の中には大量の活性酸素が発生します。
   >この活性酸素が体内のさまざまな場所で悪さをすることが、副作用の一因にもなっているのでは
   >と考えられます」

   >「特に、抗がん剤が体内で代謝されるときには大量の活性酸素が発生すると考えられますし、
   >放射線治療などによる細胞破壊で炎症反応が起こった部位でも、活性酸素が大量に発生します。
   >また、抗がん剤治療によってがん細胞が壊れると、細胞の中の酵素が外に出て、まわりの正常な組織を
   >攻撃して、それを修復するために体内の白血球が集まって炎症反応が起こるので、ここでも大量の

   >活性酸素が発生します。これが、体のあちこちに障害を起こす原因の一つとなると考えられるのです。」
   (なお、放射線治療や化学療法の際に、抗酸化物質の摂取が良いか悪いかは、決着が付いてない
   ようなので、念のため)

  上記の記事で「シスプラチン」という制がん剤の例が出てくるけど、これも活性酸素を生成し、
  そのことが制がん作用の主体だろうとも考えられている。

   制癌・発癌と活性酸素 ttp://www.e-clinician.net/vol37/no388/pdf/living-body_388.pdf (pdfファイル) [エーザイ(製薬会社)のサイト内の資料から]
   >金属キレート構造を介して活性酸素を出すものにブレコマイシンやシスプラチンがあり、・・・
   >この中には制癌作用は必ずしも活性酸素と結びついていないといわれる化合物も含まれるが、
   >総じてその制癌作用の主体は、放射線の場合と同じく、ヒドロキシル・ラジカルによるDNA障害にある
   >と考えられる。(5ページ目上段)


上記の引用中、 「(1)過去の経験から学ぶ」は、今更言うまでもなく多くの人がしているだろうが、「(3)放射線治療の副作用をあたる」と「(4)がん化学療法(抗がん剤)の副作用をあたる」の部分が上述の思いつきを具体化したものにあたると思われる。(なお、「(2)栄養分の欠乏症を探してみる」は、ちょっと今回の記事とは関係がないだろう。)

 以上の話を更に一般化すれば、

(A)生体内の酸化ストレスを増加させ障害を招き得るもので、かつ、
(B)多くの科学的知見が蓄積されているもの

があれば、●の影響を理解する上で役立つかもしれない、ということが考えつくだろう。

 結局、このような二つの条件に合致するものとしては、上述の医療上の副作用(放射線療法のもの、化学療法のもの)、酸化ストレス障害が主体の疾患、あるいは酸化ストレス障害が主体の化学物質(何らかの毒物など)などが思いあたる。

 以上の一般論の枠組みを踏まえ、先ずは放射線療法の副作用との関係について、次回以降ちょっと眺めてみよう。

(つづく)


〔関係記事〕
電離の直接障害と酸化ストレス障害  2012/5/9 (既出)
酸化ストレス(活性酸素)による生体の障害  2012/5/11

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交感神経の緊張と自己免疫疾患(膠原病)

2012年06月03日 |  関連(生物学医学)

 酸化ストレスによる障害について生体のバランス論の観点から眺めるということで、免疫学に関する安保 徹氏(新潟大教授)の説を解説するとしていたはずなので(直前の記事は「交感神経の緊張と発がん」、ココ)、今回は、交感神経の緊張と自己免疫疾患(膠原病)との関係をみておこう。

 前回の記事では甲状腺の異常をみたけど(リンクはココ)、甲状腺の異常といえば「橋本病」だろう(理由は特にないけど日本人の名前が付いてるし・・・)。この疾患は、自己免疫疾患とか、膠原病とかの一種であり、最近は耳にする機会も多いのではないだろうか。

 とはいえ、自己免疫疾患といっても馴染みがない方もいると思うので、先ずは橋本病のおさらい。伊藤病院(東京渋谷区の甲状腺疾患専門)のサイトから、

橋本病とは
http://www.ito-hospital.jp/02_thyroid_disease/02_5_1about_hashimoto.html (リンクはココ

・・・橋本病は「慢性甲状腺炎」ともいいますが、この名はこの病気の成り立ちに由来するものであり、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気という意味で、このように呼ばれることもあります。
甲状腺の病気は、どれも女性の方がかかりやすいのですが、橋本病は甲状腺の病気のなかでもとくに女性に多く、男女比は約1対20~30近くにもなります。また年齢では20歳代後半以降、とくに30、40歳代が多く、幼児や学童は大変まれです。

 橋本病は、甲状腺に炎症が起きている病気ですが、細菌が入り込んで化膿するといった炎症ではなく、「自己免疫」の異常が原因で起きる炎症です。自己免疫で起こる病気はいくつかありますが、何がきっかけでこのようなことが起こるのか、いまだにはっきりしていません。橋本病はある種のリンパ球が甲状腺組織を攻撃して起こるらしいといわれています。

いつも甲状腺が腫れているという病気で、特に女性に多いらしい。その原因は、自己免疫の異常とされている。次に、症状もみておくと、明確な甲状腺機能の低下症を示す人は、橋本病患者の約3割とされているようだ(逆に言えば約7割は機能は正常)。

橋本病-症状
http://www.ito-hospital.jp/02_thyroid_disease/02_5_2symptom_hashimoto.html (リンクはココ

□甲状腺機能低下による症状
 甲状腺機能低下症とは、血液中の甲状腺ホルモンが不足した状態をいいます。
 明らかな甲状腺機能低下症がある人は橋本病の約10%ほどで、さらに20%ほどの患者様では、血液検査をして初めて甲状腺ホルモンの不足があることがわかります。つまり、橋本病の人の約30%には、多かれ少なかれ機能低下があることになります。残りの70%は、甲状腺機能が正常です。


 本題に戻ると、安保氏によれば、発がんと同様に、自己免疫疾患も免疫抑制でおこるとされている。ここでいう「免疫」は、獲得免疫(あるいは後天性免疫)の趣旨である。これを模式的に書くと、
  
  過剰なストレス
     ↓
  交感神経の緊張
     ↓
  顆粒球増多 ───→ 獲得免疫の一部の抑制(進化したリンパ球)
     │            ↓
     │           易感染性
     ↓            ↓
  粘膜・組織破壊    感染(又は再活性化)による組織破壊
     └─────┬──────┘
             ↓
  獲得免疫の別の一部の活性化(古いリンパ球)→ 破壊組織の修復・感染防御
                                      ↓
                             炎症などの自己免疫疾患の症状


似たような図が何度か出てきているので、詳しい説明は省略しよう。ここでのポイントは、一部のリンパ球(進化したリンパ球)が抑制され、代わりに別の種類のリンパ球(古いリンパ球。後述する自己免疫応答性リンパ球のこと)が活性化し、何とか生体を防衛しようとするという点であろう。発がんの構図(詳細はココ。既出)との違いでいえば、発がんはこの古いリンパ球も抑制されてしまう免疫状態で起こるということだろう。

 関係部分を安保氏の著作「免疫革命」(講談社、2003.7月)から引用すると、

 難病といわれる膠原病でさえ、[交感神経の緊張が顆粒球増多をもたらして、組織破壊を行うとの説]で説明ができます。膠原病は、たいへんに症状に種類が多い病気です。五十を軽く越える種類があります。たとえば慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、橋本氏病、甲状腺機能亢進症、シェーグレン病、ベーチェット病、紫斑病、自己免疫性肝炎など、いろいろな名前がついていますが、これらの病気がどうして起こっているかというと、ストレスで免疫が低下し、内在性のウイルスが活性化して、組織破壊が起こっているのです。組織破壊が起こるから修復しようとして血流がおしかけて炎症が起きているからぐあいが悪くなるのです。じっさい、膠原病の患者さんとじっくり話してみると、必ずストレスが聞きだせます。それに、発病のきっかけが風邪の症状、つまり発熱である場合が多いのです。つまり、ストレスによる極端な免疫力低下の事態が発病のきっかけになっといるのです。 (同書66頁。強調は引用者)

ここでは、自己免疫疾患の症状は、破壊されあるいは異常となった細胞を排除し、組織を修復するために起こっていると考えられているようだ。


 ここで、白血球の役割、種類とその進化について、簡単にまとめておこう。白血球は、安保氏によれば、進化によって4階層に機能分化してきたとされており、以下その解説をしていこう。内容を表でまとめておくと(予備知識のない方は、先に白血球のwikiでも眺めてからどうぞ)、

表 白血球の役割、種類とその進化(4つの階層)
    役   割      免疫系の区分       白血球の種類
 4 外来の小さい異物を処理  獲得免疫(液性)  進化したリンパ球(胸腺由来T細胞、B細胞) 
 3 自己の異常な細胞を処理  獲得免疫(細胞性) 古いリンパ球(NK細胞、胸腺外分化T細胞) 
 2 外来の細菌を処理      自然免疫      顆粒球(このうち好中球が9割以上) 
 1 基礎的な防衛・司令塔    自然免疫      単球/マクロファージ(単細胞時代の名残り)
出典)安保 徹「免疫革命」(主に第5章)。

 白血球は、大きくわけると単球/マクロファージ、顆粒球、リンパ球の3種類がある。進化上もっとも古いとされるのは、単球/マクロファージであり、ここから顆粒球、リンパ球が進化してきた。

 単球/マクロファージは、骨髄で生まれ、血管中を単球の状態で各組織へ移動し、血管外に出てマクロファージに分化する。マクロファージは、単細胞生物であるアメーバのように、生体に侵入してきた異物をのみ込み、除去する役割を担っている。

 マクロファージは、存在する組織によって形を変えるため、グリア細胞(脳)、肺胞マクロファージ、クッパー細胞(肝臓)などさまざまな名前で呼ばれている。また、赤血球などの血球細胞や血管を形成する血管内皮細胞も、マクロファージから進化したものである。

 白血球の機能において、マクロファージの貪食能(異物をのみ込み処理する機能)に特化して進化した白血球のサブ集団が、顆粒球であり、マクロファージの貪食能を退化させて獲得免疫(後天性免疫)をつかさどるようにした白血球のサブ集団がリンパ球である。血液中の白血球の割合を調べると、体質による個人差や採血時の体調などで変動しうるが、目安としては単球/マクロファージが約5%、顆粒球が約60%、リンパ球が約35%の比率となっている。

 顆粒球は、進化上マクロファージの次に現れたようだ。水中で単細胞から多細胞へと進化した後に細菌の侵入に悩まされたことから、外来の細菌侵入に対抗する防御体制として、マクロファージの貪食能をさらに高めた形で進化してきたのだろう。

 顆粒球は、マクロファージより一回り小さく(12~15μm。ちなみにマクロファージは20~30μm)、異物を丸ごとのみ込んで消化酵素と活性酸素を使って分解する形で処理している。細菌のような粒子の大きい異物(1~5μm程度。ちなみに大腸菌で2μm)を処理するのに適している(小さい異物は、例えばインフルエンザ・ウイルスは100nmと顆粒球の約100の1以下の大きさなので、効率的には処理が難しい)。

 顆粒球が細菌を処理している場所は、化膿性の炎症として現れる。膿は、顆粒球が侵入してきた細菌などを処理をした残骸である。白血球のうち顆粒球が最も多いということは、それだけ細菌の侵入の機会が多いことを示している。病的なものかどうかはさておき、顆粒球が炎症の6割を処理していると考えることもできる。

 顆粒球の働きの特徴は、進化上の古い形態なので、攻撃相手(抗原)を識別する仕組みが未発達という点である。主にDNAに記載された遺伝情報(記憶)に基づいて活動するのだろうが、細かいことは気にしない性格なのである。つまり、何らかの理由で顆粒球が過剰に集まった場合には、その場所に攻撃相手である細菌がいなければ、自己の組織の細胞であっても攻撃してしまい、破壊を引き起こしうることとなる。

 顆粒球に識別機能がない点を別の角度からみれば、顆粒球由来の病気は何度でも起こり得るということである。この点については、例えば、食中毒をみてみればわかるだろう。何らかの菌に汚染された食物を食べれば、食中毒を起こす。何度でも。

 リンパ球は、進化上マクロファージ・顆粒球の次に現れたようだ。リンパ球の働きの特徴は、マクロファージの貪食能を退化させて、接着分子(抗体)で異物(抗原)を捕らえるという新たな機能を発達させた点にある。

 古いリンパ球が先ず現れたようだ。その役割は、外来の侵入物への対処というより、多細胞生物として生体の内部での異常を監視することに主眼か置かれている点である。つまり、がん細胞などの異常な細胞への対策である。多細胞生物として複雑化していくと、全体の制御の下でそれぞれの機能に応じ各臓器が効率的に分散処理をしているので、統制されない異常な細胞は足手まといになるし、場合によっては生命の危険をもたらしかねないことになる。

 異常細胞の除去を顆粒球で対処すると、顆粒球は攻撃相手を識別しないので異常細胞と正常細胞の両方を攻撃・処理する形態となってしまい、これがはなはだ効率が悪かったのだろう。このため、別の仕組みでの対応が進化上必要とされ、それを発達させることに成功した種が最終的に繁栄したのであろう。

 古いリンパ球は、自己の異常細胞を効率的に処理・排除する目的のため、攻撃相手を識別する仕組みを持っている。この場合は、それ程複雑な仕組みではなく、攻撃相手が自己かどうかの識別のみである(自己応答性。自己に該当しなければ、非自己)。古いリンパ球は、非自己と認識された内部の細胞を処理・除去していくこととなる(このため「自己免疫応答性リンパ球」とも呼ばれる)。がん細胞や何らかの理由(老朽化、感染など)で正常に機能しなくなった細胞などを非自己と認識する仕組みになっているのだろう。つまり、身体の中で起こった異常を察知し、自己抗体を産生・活性化して、異常な部分を除去していくわけだ。

 最後に現れたのが、進化したリンパ球である。生物が水中で生活していた間は、マクロファージ、顆粒球、古いリンパ球で生体内部の防衛体制を構築していたらしい。しかし、生物が陸に上がると、水中と違い空気中だとやたらとウイルスの類い(小さい異物)が多くなったため、より効率的な防衛体制をとる必要に迫られたようだ。

 生物の進化をみると、生物が水棲から陸棲になり、T細胞やB細胞といった進化したリンパ球を育てる胸腺や骨髄という器官ができたとされている。進化したリンパ球を育てる胸腺ができて、攻撃相手を識別する複雑な仕組みができるとともに、感染した経験を免疫情報として記憶する仕組みも次第にできあがっていったのである。

 進化したリンパ球の働きの特徴は、小さな異物を処理するという役割を果たすため、接着分子で異物を捕らえるという新たな仕組みにある。つまり、進化したリンパ球(B細胞)は体液中に接着分子(抗体)を放出し、抗体が体液中を流れて異物(抗原)に接着し反応することとなる。これは、古いリンパ球による細胞ごと反応する細胞性免疫と区別して、液性免疫と呼ばれている。

 以上が、白血球の役割、種類とその進化について、安保説に関し自分が理解したところの簡単なまとめなのだけど、詳しく知りたい方は、参考とした安保氏の「免疫革命」を各自で読んでみてほしい。


 進化したリンパ球を育てる胸腺は、その機能を縮退させることがあるといわれている。身近なものでは、(1)老化したとき(加齢)、(2)ストレスを受けたとき、(3)妊娠したときであ。進化したリンパ球の活動が弱まると、代わりに古いリンパ球の出番となり、生体の防衛機構を維持しているようだ。
 
 老化による胸腺の縮退については、分かり易いだろう。加齢とともに活動力が落ち、生傷ができて細菌感染する機会も減る一方で、劣化した細胞も増え老廃物がたまりやすくなり、若いときと比較し細胞分裂の異常も起きやすくなるのだろう。従って、加齢とともに胸腺が縮退し、新しいリンパ球から古いリンパ球へ免疫の主役が移ることは、はなはだ合理的にできている仕組みといえるだろう。

 ストレスによる胸腺の縮退ついては、「免疫革命」から引用すると、

 新しい免疫系から古い免疫系へ、免疫の主役がうつるという状況は、ストレスがかかった緊急事態でも起こります。私たちはストレスがかかると顆粒球が増えて、組織が破壊されたり、組織の細胞の異常が起こったり、あるいは老廃物の分泌が抑制されたりします。ストレスがかかった状態がずっと続くと私たちはやつれてきます。これは、組織破壊、組織異常、老廃物の分泌の抑制が全身で起こっているからです。そういう状態では、問題は外来抗原ではなく体内の異常ですから、異常細胞、老廃物を古い免疫系で処理しなくてはいけないのです。

 また、ストレスが続いた果てには、ウイルス感染が起こります。ウイルスというのは、体の外から入ってくるだけではなくて、身体の中に潜伏しているものがたくさんあります。よく知られている例に、ヘルペスがあります。ヘルペスは、ヘルペスウイルスが体内に潜伏してていて、ストレスが続いて新しい免疫系の力がおちたとき、ふだんは活動できなかった内在性のウイルスが暴れだし、組織を破壊し、炎症を起こすのです。そういうときにできる異常細胞に対して戦うのも、古い免疫系です。 (同書256頁)

 ここまでくると、本題の最初で模式的に示した、交感神経の緊張と自己免疫疾患との関わりがみえてきたのではないだろうか。そう言えば、●の影響下にあると、何とかストレスというのが増加するとあったような・・・

 ついでに、妊娠による胸腺の縮退については、女性が妊娠すると、胎児に栄養補給するため母体のエネルギー消費が激しくなることから交感神経の緊張状態に傾き、胸腺が縮退するようである。もう長くなったので詳しく書かないけど、この交感神経の緊張状態では、胎児の細胞が胎盤を通じて母体にやってきて悪さをすることがないよう、古いリンパ球が主役となって胎盤で活動し、これを防いでいるようだ。女性は妊娠機能に付随したこのような免疫系のスイッチを持っているため、多分自己免疫疾患になりやすい傾向があるのだと思われる。
 

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